マグネットボール&マグネットパズルの誤飲が危険!37個を飲み込んで腸管に穴が開いた1歳児も!国民生活センターが注意喚起

ママやパパが買ってあげたり、おじいちゃん、おばあちゃんからプレゼントされたりすることもある「マグネットボール」や「マグネットパズル」。しかし乳幼児が誤って飲み込んでしまうと大きな事故につながることも! マグネットボールやマグネットパズルの危険性について、兵庫県立こども病院 救急科医長 竹井寛和先生に伺いました。竹井先生は、マグネットボールを誤飲した子を何度も診察しています。

19カ月の子は、直径3mmのマグネットボールを37個も誤飲!

国民生活センターが20184月に発表したリリースでは、マグネットボールの誤飲で次のような事故事例が報告されています。

誤飲に注意が必要なマグネットボール
  • 友人の子がマグネットボールで遊んでいたのを見て、19カ月の女の子が欲しがったためマグネットボールを買い与えました。その後、女の子が磁石を口の中に含んでいることがあったため、保護者は手の届かないところに保管しました。ある日、嘔吐を繰り返したので、かかりつけ医を受診すると胃腸炎の疑いで薬を処方されましたが、翌日も嘔吐が続いたため、紹介状を書いてもらい他院を受診。レントゲン検査で腸内に異物が見つかりました。開腹手術を行ったところ、小腸内の3カ所にあった磁石が磁力で引き合い、小腸に結着。圧迫壊死(えし)を起こして穴が開いていました。手術では直径3mmの磁石計37個が摘出されました。
  • 3歳の男の子にクリスマスプレゼントでマグネットボールを購入。マグネットボールを5個誤飲したことに保護者が気づいて受診。レントゲンで消化管内にマグネットボールが5個連なっていることを確認しましたが、経過観察に。翌日、紹介先の病院で内視鏡検査を実施したものの、マグネットボールは移動しておらず、引き続き経過観察をすることに。その翌日も、マグネットボールは移動しておらず手術を実施。腸壁に穴が開いていました。
  • 早期に適切な治療をしなければ腸管に穴が開く危険性が!

  • ネオジム磁石は強力なため、指を挟んでもくっつきます

マグネットボールは、ネオジム磁石という非常に強力な磁石が使われており、2個以上誤飲すると磁石同士が腸管を挟み込んだ状態でくっついてしまい、自然に便で排泄されないこともあります。誤飲したことに気付かないと血流障害が起きて、腸管に穴が開くこともあります。

また、サイズが直径3mm5mmなど小さいので、手の届く場所にあれば、乳幼児は誤飲するリスクが高いです。上記で紹介した事故事例では37個も誤飲していますが、10個ぐらい誤飲してしまう子は多いです。

  • ネオジム磁石は誤飲したら、すぐに医療機関へ

  • マグネットボールは、もし誤飲しても家庭で吐き出させることは困難です。そのため誤飲したら、すぐにかかりつけの小児科に相談してください。診察時間外のときは、診療可能な医療機関で相談しましょう。
  • 腹痛や嘔吐を繰り返すなど症状があるときは、救急車を呼んでも

  • 誤飲後、
    ①顔色が悪い
    ②嘔吐を繰り返す
    ③腹痛
    ④機嫌が悪い・泣き止まない
    ⑤ぐったりしている
  • そんなときは、救急車を呼んで構いません。また受診するときは、医師に誤飲したマグネットボールを見せて、何個ぐらい誤飲したか伝えると診断の助けになります。

    誤飲に気づかないと“お腹にくる風邪”と診断されることも

  • なかにはママやパパが気づかないうちに、マグネットボールを誤飲している子もいます。嘔吐を繰り返したり、腹痛で受診すると“お腹にくる風邪”と診断されることもあります。しかしマグネットボールの誤飲は早期治療が必要な場合もあるので、マグネットボールがある家庭は、念のため誤飲した様子がないか確認してください。誤飲が疑われる場合は、再診して医師に相談しましょう。
  • 磁石が腸管を挟み込んで動かないと、腹腔鏡下手術で取り出すことが多い

  • マグネットボールを誤飲しても、症状がなく胃の中にとどまっていると経過観察となることもあります。しかし磁石同士がくっつき腸管を挟み込んだ状態で動かない場合は、腹腔鏡下手術で、くっついている磁石を取り出すことが多いです。全身麻酔をしてお腹を切りますし、入院が必要となる手術なので、乳幼児がいる家庭ではマグネットボールは置かないほうが安心です。どうしてもマグネットボールが必要な場合は、乳幼児の手が届かない場所に置き、しっかり管理してください。
  • マグネットパズルでもネオジム磁石の誤飲事故が発生

  • マグネットパズルに内蔵されているネオジム磁石

ネオジム磁石が用いられている玩具には「マグネットパズル」もあります。

マグネットパズルは、パーツ同士をくっつけて立体造形などが作れる玩具です。内蔵されているネオジム磁石は円柱形で、マグネットボールよりはサイズは大きいのですが、やはり子どもの誤飲事故が発生しています。万が一、パーツが破損して、ネオジム磁石が外に出ると誤飲の危険性が高まるので注意が必要です。

  • 誤飲だけでなく、ふざけて鼻の穴に入れるのも要注意!

  • ネオジム磁石の事故は、乳幼児特有の事故でありません。10歳の子が、ふざけて両方の鼻の穴にネオジム磁石を入れてしまい、取れなくなって、痛みが強くなり救急外来を受診した事例もあります。磁気が強力なので、指を入れたりしても自分では取れません。
  • 時間が経つと血流障害が起きて鼻の穴を隔てる軟骨(鼻中隔)に穴が開くこともあるので、至急、医療機関を受診してください。子どもにはこうした事故があることを教えて、万一、鼻の穴にネオジム磁石を入れてしまった場合は、すぐにママやパパに言うように伝えましょう。
  • 国民生活センターでは、子どもの使用や知育教材等をイメージさせる表示などを行わないよう要望

  • 国民生活センターでは、強力な磁力を持つマグネットセットの誤飲事故の再発を防止するため、子どもには触れさせないよう注意喚起を行うとともに、子どもの使用や知育教材等をイメージさせる表示、広告を行わないよう要望しています。

記事監修

竹井寛和先生|兵庫県立こども病院 救急科医長
  • 日本小児科学会専門医、指導医。日本救急医学会専門医。日本小児救急医学会代議員。

写真提供/独立行政法人国民生活センター 構成・文/麻生珠恵

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