西京焼きとは
西京焼き(さいきょうやき)は、宮中料理に起源があります。
西京とは
時は明治維新。京都から江戸への遷都が行われた際、新しく都とされた「東京」に対して、「西京」と呼ばれたのが、それまでの都であった、京都です。
その当時から宮中へ献上されていた白味噌は、貴重品の米をふんだんに使って、特別に吟醸されていました。白くなめらかで美しい味噌は、宮中料理の中でも節会、祝儀に欠かせない調味料として定着したそうです。
これが一般の食卓にも並ぶようになり、「西京味噌」と呼ばれるようになりました。
西京味噌
麹を糖化させた甘みをもつことから、他の味噌よりも塩分が少なく、保存性より甘みを味わう嗜好品として使用されてきました。クリームのようになめらかな感触で、米麹と大豆の発酵した旨味があります。
今日の京都では、お正月のお雑煮に欠かせない味噌です。
西京 白みそ 京の彩 300g
京都でもポピュラーな白味噌がこちら。昆布とかつおでひいた出汁に溶き入れ、具材と丸餅を入れてお雑煮に。2人分で80~100gと、普通の味噌よりもたっぷり入れるのがポイント。
西京味噌の使い方
西京味噌を酢で伸ばした「酢味噌」は、ホタルイカや菜の花のおひたしに添えられる調味料です。
生麩にのせて焼く「生麩の田楽」は、香ばしい甘みが生麩の柔らかさと相性抜群です。また製菓では「味噌松風」として仕立てられ、和菓子として親しまれています。
そんな西京味噌を、お酒とみりんでのばし、魚や肉を漬けたのが「西京漬け」です。こんがり焼くと、ふっくらした身と、自然な甘みをもつ「西京焼き」に仕上がります。魚の風味と、味噌が上品に香る焼き物です。
西京漬けの漬け方
ご家庭で西京漬けを作る方法をご紹介します。
漬ける材料
定番は、鮭、さわら、たらなどの白身魚ですが、さば、まぐろ、カレイなどを漬けてもおいしく仕上がります。おすすめはイカです。ぜひ、一度試してみてください。豚ロースや鶏肉だけでなく、クリームチーズやアボカドを漬けると、おつまみとして愉しめます。
漬け床と漬け方
漬け床に魚の身を漬ける工程をご紹介します。
◆材料
鮭 2切れ
【A】
白味噌 100g
酒 大さじ1/2
みりん 小さじ1
◆作り方
【1】漬け床を作ります。
【A】の材料を混ぜ合わせてください。
【2】魚は塩を振り、冷蔵庫で寝かせます。10分ほどで取り出し、キッチンペーパーを使って水気をしっかり拭き取ります。水分が残っていると、雑菌の繁殖につながります。
【3】バットに味噌を敷き、鮭をのせて、上からまんべんなく味噌を塗ります。
【4】ラップをかけて味噌と鮭を密着させます。冷蔵庫で保存してください。
保存期限
漬けてから4日程度は冷蔵庫で保存ができます。だんだん味が濃くなってきますから、2〜3日程が食べ頃です。
焦げない焼き方
フタをしたフライパンで蒸し焼きにするのが、基本的な焼き方です。軽い焼き色がつき、おいしさを引き立てます。
フライパンでの焼き方
【1】焦げやすく、こびりつくので、フライパン用のアルミホイルを使うのがおすすめです。普通のアルミホイルなら、一度軽くもんでから、広げて使います。
【2】冷蔵庫から取り出した魚を、キッチンペーパーで軽く拭い、余分な味噌を拭き取ります。
【3】フライパンにアルミホイルを敷いて、魚をのせてください。弱火でじっくりと、中心部まで加熱します。ホイルの下に少量の水を入れ、フタをして蒸し焼きにすると、焦げにくくなります。
【4】反対面も同様に焼いて、焼き上がりです。
グリル、トースター
フライパン用のアルミホイルに魚をのせて、上からもアルミホイルを被せてください。上下焼き8〜9分で焼き上がります。
こちらも焦げやすいので、よく見ながら焼いてください。
冷凍保存の方法
西京漬けの魚は冷凍保存ができます。
【1】味噌をつけたまま、ピッチリとラップで包んでください。
【2】フリーザーバックに詰めて冷凍庫で保存します。
解凍方法
冷凍庫から冷蔵庫に移動して、半日程度で解凍します。味噌をぬぐい取って焼く方法は、冷凍前と同様です。
冷凍の保存期限
1か月程度のうちに、お召し上がりください。
おすすめの献立
発酵食品でもある白味噌の味をメインに献立を考えると、なにを合わせるか迷ってしまうものです。相性の良い献立は、どんなメニューでしょうか。
西京焼きを提供するレストランの献立を参考にしてみると、小鉢3品(茶碗蒸し、飛竜頭の煮物、青菜のおひたし)、ごはん、香の物、赤出汁。炊き込みご飯への変更も選ぶことができました。とても豪華ですね。
ご家庭で献立を考えるなら、かつお出汁をベースに考えると、まとまりやすい献立になります。
切り干し大根や、厚揚げの煮物、おでんもいいですね。卵を使って、茶碗蒸し、出汁巻き卵、かきたま汁も合うはずです。野菜はおひたしにして、かつお節を振りかけると相性が良く、胡麻和えや胡麻豆腐もおすすめです。
カブの煮物
カブをかつお出汁で炊き、生姜風味のあんかけに仕上げました。鶏はひき肉を使えば、西京焼きの味を邪魔しません。
◆材料
白カブ 2個
カブの葉 少量
鶏 ミンチ肉 200g
かつお出汁 400ml
生姜 1片
しょうゆ 大さじ2
みりん 大さじ2
酒 大さじ2
片栗粉 大さじ1
◆作り方
【1】カブの皮をむき、かつお出汁で煮込みます。
【2】鶏ひき肉、千切りにした生姜を入れて、しょうゆ、みりん、酒で味付けします。
【3】刻んだカブの葉を散らし、水で溶いた片栗粉でとろみをつけます。
発酵による旨味を普段の食卓に
西京味噌は、一般的な味噌の味とは違い、塩気が少なく甘味が強いのが特徴です。発酵による旨味があるため、食べ慣れない場合は苦手意識をもつ方もおられます。ですが、自然な甘みを生かした味付けがうまく調和していると、他にはない味に魅了される方も多いものです。ぜひ、この味を普段の食卓に取り入れて、独特の旨味を楽しんでください。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)