江戸の切り紙遊び「もんきり」。折り紙とハサミだけで子どものクリエイティブな力を引き出す!

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江戸時代に「もんきり」という遊びがありました。紙を折り、「もんきり型」という型紙どおりに切り抜いて、広げて、「紋」の形を作ります。
寺子屋の教科書にも載っていたというこの遊びを、現代風にやりやすく紋から型を起こし、書籍やワークショップを通じて多くの人に伝えている下中菜穂さんに、遊び方をうかがいました。

まずやってみましょう!作るのは「かめ・コウモリ・九つ石」

まず、下絵を用意。切る前に、かめ、コウモリは折り紙を半分に、九つ石は折り紙を3回折ります

折り紙とハサミがあれば、誰でもすぐに美しい形を手から生み出すことができる「もんきり遊び」。どんな形になっているのかな?──切った紙を広げるときのワクワク感を、ぜひ親子で一緒に味わってみてください。

作り方

用意するものは、型紙(左から、かめ、コウモリ、九つ石)鉛筆、折り紙、ハサミ、のり、ホッチキス、クリップ。

型紙は、写真のように白い紙に鉛筆で描く。左から亀、九つ石、コウモリ。 

<コウモリ>

コウモリというと、なんだか不吉なイメージがありますが、実はこのイメージは西洋由来のもの。中国ではコウモリの「蝠(ふく)」と「福(ふく)」が、同じ「フー」という発音で、めでたい紋様とされていたことが日本に伝わり、江戸時代には着物や手ぬぐいの柄に使われるなど、大流行しました。 

1 折り紙を二つ折りにする。
2 型紙を当て(折り目に型を合わせる)、ずれないようにホッチキスでとめる(スティックのりを軽くつけたり、クリップでとめてもOK)。描いた線に沿って、ハサミで切る。
3型紙を外して、紙を開くと、コウモリのできあがり!

<かめ >

「鶴は千年、亀は万年」という言葉が言い伝えられているように、亀は昔から縁起の良い生き物だと考えられてきました。何か、不吉なことが起きたとき「ツルカメ、ツルカメ、ツルカメ」と3回唱えると災難を除けるという“おまじない”もあります。 

「かめ」もコウモリと同じ要領で作ります。

<九つ石>

九つの四角い石が地面に並んだ様子を紋様にした「九つ石」。今でもよく知られている市松模様は、この石の紋様からきています。最近のワークショップでは、この「九つ石」が子どもたちの間で大人気。なぜなら、鬼滅の刃の炭治郎の着物の柄が市松模様だからなんだそうです。 

1 折り紙を三角に二つ折りする。
2 さらに三角に二つ折りする。
3 もう一度三角に二つ折りにする
4 型紙を貼る(折り目に型を合わせる)。あるいは、直接、折り紙に線を書く。
5 線に沿ってハサミで切る。
6 折り紙を開くと、九つ石のできあがり!

切り残しにも味わいが。捨ててはもったいない!

ワークショップでは、子どもたちは、切り残しで新たなものを作りだします

切った形を使って、こんなアレンジも!

切った形は、いろいろとアレンジが可能。例えば、ハガキ大の大きさの紙に貼れば、オリジナルのポストカードが完成。色の組み合わせを考えるのも楽しいですね。 

無地のコースターに形の一部だけをトリミングして貼っても、素敵に仕上がります。 

「もんきり」は江戸時代発祥。昭和の始めまでは教科書にも載っていました

日本人の暮らしに根付いていた「紋」

さまざまな形(紋)とその名前が書かれた一冊の本。それが、江戸時代から伝わる「紋帳」です。今日に至るまで、職人さんが「紋」を描くためのお手本として使っています。この「紋」という形は、日本で古くから使われてきました。

平安時代の貴族が使っていたもの、戦国時代に戦のために作られたもの、江戸時代におしゃれとして使ったものなど。現代でも、着物や老舗店舗ののれん、神社やお寺などで見かけることができます。実は、それぞれの家にも家のしるしとして「家紋」があるのです。 

このように、日本人の暮らしの中に息づいていた「紋」は、それぞれに意味があり、物語が詰まっています。 

昭和の初めまでは教科書にも載っていた「もんきり遊び」

そんな「紋」を型紙に沿って切り抜く遊びが、「もんきり遊び」。江戸時代には、寺子屋の子どもたちも、もんきり遊びをしていたことがわかっています。また、昭和の初めまで図工の教科書にもんきり遊びが載っていました。 

戦後、西洋の文化に傾倒して忘れ去られてしまった「もんきり遊び」に、再び光を当てたのが造形作家の下中菜穂さん。現代風にアレンジして紋から型を起こし、もんきり遊びを広めています。 

型を使って手を動かすことで生まれるクリエイティブ性。親子で対等に遊べる良さも

現代では、型通りはつまらないというイメージがありますが、型はとても大切なものだと思います。なぜなら、型を使って手を動かしていると、自然とクリエイティブ性が発揮されるからです。まずは、型通りに人真似から始める。すると自信がつくので、安心してクリエイティブな力を引き出すことができます。また、型通りにじょうずに切れなくてもいいんです。何度でも、納得のいくまでやり直せば大丈夫。

親子参加のワークショップでは、最初は付き添いだけ(監視役?)のつもりだった保護者の方が、いつのまにか夢中になって、子どもと対等な立場で楽しんでいます。これも、型がある「もんきり遊び」だからなせる技。

滅びかけてしまったこの遊びを、今、私たちがすることで、後世にも継ぐことができます。ワークショップの最後に、『この遊びを100年後の人たちにも伝えることを一緒にやってくれない?』と子どもたちにお願いすると、みんなの目がキラリと輝くんですよ(下中菜穂さん)

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お子さんにおすすめの「もんきり」入門

こども文様(もんよう)ずかん 

四季の移ろいとともにある日本の暮らしに息づく「かたち」と季節の「ことば」で構成。子どもから大人まで楽しめる、絵本スタイルの文様図鑑。紋切り型(型紙)62種も掲載。 

著・下中菜穂 平凡社刊 1650 

 

 

 

 

ロングセラー『こども文様ずかん』の続編。「天地人」が小さい形の中に閉じ込められているおもしろさん、不思議さを軸に構成。古来から日本で親しまれてきた森羅万象の美しい文様が親子で楽しめる。紋切り型(型紙)72種も掲載。 

著・下中菜穂 平凡社刊 1760 

 

 

 

 

 

「もんきり」上級編 ステキな形がいろいろできます!

*これらの紋・型が作れるキットの紹介はこちらから>>>

もっと、もんきり!入門におすすめはこちら

『いろはにもんきりあそび 』

初心者から愛好者まで楽しめる、「もんきり遊び」の決定版。収録されている型と色紙を使ってすぐに作れます。季節ごとの楽しみ方やアイデアにも注目。人気の型紙35種も掲載。本と和紙折り紙50枚(10色)と型紙を収納する、特製厚紙フォルダー入り。贈り物にもピッタリです。 

著・下中菜穂 エクスプランテ刊 1650 

https://explantae.theshop.jp/items/4905759

教えたくれたのは

下中菜穂(しもなか・なぼ)|もんきり研究家・造形作家

1960年千葉県生まれ。江戸時代の「もんきり遊び」を通して「かたち」に込められた祖先の暮らしぶりや精神を紹介。「文様を暮らしの中で楽しむ」手仕事や文化を、本やワークショップなどで展開。著書に『紋切り型』のシリーズ(エクスプランテ)、『切り紙もんきり遊び かたちを贈る』(宝島社)、『切り紙 切り抜き もんきり遊び』(河出書房新社)など。

*「もんきり、切り紙、日本のかたち」情報色々。ネットショップも。下中さんが主宰する「エクスプランテ

取材・構成/神典子 写真提供/下中菜穂さん

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