『ふたりのロッテ』ってどんなお話?
まずは、『ふたりのロッテ』の物語の背景を知っておきましょう。
ドイツの作家エーリッヒ・ケストナーによる作品
『ふたりのロッテ』は、1949年のドイツで、作家のエーリッヒ・ケストナーによって発表された小説です。簡単な言葉で書かれてはいるものの、物語はボリューム満点なので、小学校4・5年生以上の読書におすすめです。
原題:Das doppelte Lottchen
国:ドイツ
発表年:1949年
おすすめの年齢:小学校4・5年生以上
作者のエーリッヒ・ケストナーってどんな人?
作者であるエーリッヒ・ケストナー(1899-1974)は、『エーミールと探偵たち』や『ふたりのロッテ』『飛ぶ教室』等の代表作で知られるドイツの詩人・作家です。
元々新聞社に勤務していたケストナーは、1929年に発表した児童向け小説『エーミールと探偵たち』が注目を集めたことから、精力的に文学作品を執筆するようになります。ナチス政権下では圧力を受けながらも、屈せず執筆活動を継続。戦後は西ドイツペンクラブ初代会長としても活動しました。1960年には、国際アンデルセン大賞を受賞しています。
元はナチス時代に書かれた映画の脚本
ナチスに抵抗して自由や平和を訴えていたケストナーは、ナチス政権時代、執筆活動を禁じられていました。本作は、そんなナチスドイツの時代に、ケストナーが偽名を使って、映画の脚本としてひそかに書いていたものです。
しかしながら、当局に知られてしまい映画の製作は中止に。戦後になってようやく公表された本作は、多くの人に愛され、大変な評判になりました。
主人公は内縁の妻の名前から付けられる
本作の主人公は、お互いのことを知らずに暮らしていた双子の女の子たち、ロッテとルイーゼです。作中では、このふたりの名前が、ロッテとルイーゼの母親であるルイーゼロッテ・ケルナーの名前を半分に分けたものであることが判明します。
実はこの、ルイーゼロッテ・ケルナーとは、ルイーゼロッテ・エンダーレという実在した女性の名前を引用したもの。そしてそのルイーゼロッテ・エンダーレは、伝記作家であり、ケストナーのパートナーであった女性です。
ルイーゼロッテ・ケルナーのモデルだったといわれ、新聞社で働いていることをはじめ、作中に描かれた人物像にもいくつかの共通点が感じられます。
日本ではアニメやミュージカルで愛される
ドイツでは度々映画化されてきた本作は、日本でもまた、さまざまなかたちで映像化・舞台化がされてきました。たとえば、『わたしとわたし ふたりのロッテ』と題されたアニメ版や、劇団四季によるミュージカル版。小説は読んだことはなくても、これらのバージョンで本作を知っている方も少なくないはず。
「ふたりのロッテ」のあらすじ
ここからは、『ふたりのロッテ』のあらすじを押さえておきましょう。
あらすじ
ロッテとルイーゼの出会い
ロッテとルイーゼは、お互いを知らずに別々の場所で育ったふたごの姉妹。誰が見ても見分けがつかないくらいにそっくりなふたりは、ある夏の林間学校で偶然に出会い、自分たちの関係に気がつきます。
林間学校の期間が終わると、ふたりは別れた両親を再び繋ぎ合わせるため、ロッテはルイーゼのふりを、ルイーゼはロッテのふりをして、入れ替わってお父さんとお母さんそれぞれの元に戻ることにしました。
ルイーゼはロッテに、ロッテはルイーゼに
子どもたちが入れ替わっていることに気づかないまま、しばらく生活を続けるお父さんとお母さん。前とはどこか変わった我が子を不思議な気分で見守り続けます。
そんなある日、ルイーゼのふりをしたロッテは、お父さんがゲルラッハさんという女性と再婚しようとしていることを知り、ふたりを反対するあまりに熱を出して寝込んでしまいました。
ちょうどその頃、お母さんはある写真をきっかけに、自分の家にいるロッテが、実はルイーゼだったことに気がつきます。はじめて、ロッテではなく自分として、お母さんと話すことができたルイーゼ。そして、お父さんの方にいるロッテからの手紙が途絶えていることをお母さんに打ち明けます。心配をしたお母さんは、すぐにお父さんに連絡をし、すべてを知らせると、ルイーゼを連れてロッテの元へと出発しました。
両親の再会と復縁
ロッテの元へ着くと、離婚をしたばかりの頃とは見違えるように、子ども思いで大人になったお父さんの姿に、お母さんは驚きます。お父さんは、ロッテとルイーゼにはお母さんが必要であること、そしてロッテとルイーゼをもうばらばらにしてはいけないことを、あらためて感じました。そして、ゲルラッハさんとの関係をおしまいにします。
晴れてロッテが回復すると、ふたりの誕生日祝いの日がやってきます。プレゼントを贈ろうとするお父さんとお母さんにふたりがお願いしたのは、「これからずっといっしょにいてほしい」ということ。
お父さんとお母さんは、再会してからのお互いの気持ちを話し合い、むかしのことを許して、再び結婚をすることにしました。それから4人は幸せに暮らし、いつか新しい全員ふたごのきょうだいたちが生まれることを夢見ました。
あらすじを簡単にまとめると…
ロッテとルイーゼは、お互いを知らないふたごの姉妹。誰が見ても見分けがつかないくらいにそっくりなふたりは、ある夏の林間学校で偶然に出会い、自分たちの関係に気がつきます。ふたりは、別れた両親のもとで別々に育ってきたのです。
林間学校の期間が終わると、ふたりは別れた両親を仲直りさせるため、ロッテはルイーゼのふりを、ルイーゼはロッテのふりをして、入れ替わってお父さんとお母さんそれぞれの元に戻ることにします。けれども、お父さんには2回目の結婚を考えている相手がいて……。
主な登場人物
ここでは、本作の主な登場人物を押さえておきましょう。
ロッテ
パルフィーさんとケルナーさんとの間に生まれた女の子。ルイーゼとは双子の姉妹。両親が別れた後は、お母さんであるケルナーさんの元で育ってきた。働いているケルナーさんの分、家事をやってきたので、料理が得意。真面目で几帳面で、少々内気なところがあり、ふだん、髪は三つ編みにまとめている。
ルイーゼ
パルフィーさんとケルナーさんとの間に生まれた女の子。ロッテとは双子の姉妹。両親が別れた後は、お父さんであるパルフィーさんの元で育ってきた。身の回りのことはお手伝いさんがやってくれてきたので、家事が不得意。気が強くてがさつなところがあり、手が出るのも早い。髪もぼさぼさにしてる。
ルートヴィッヒ・パルフィー
ふたりのお父さん。有名な指揮者。ケルナーさんとの離婚後は、ルイーゼをひとりで育ててきた。
ルイーゼロッテ・ケルナー
ふたりのお母さん。新聞社で働いている。パルフィーさんとの離婚後は、ロッテをひとりで育ててきた。
ゲルラッハさん
お父さんと再婚する予定の女性。ロッテやルイーゼとの関係はあまりうまくいっていない。
「ふたりのロッテ」を読むなら
最後に、本作『ふたりのロッテ』を読む際におすすめの書籍をご紹介いたします。
ふたりのロッテ (岩波少年文庫)
ケストナー作品のほか、多数のドイツ文学作品の翻訳を手掛けてきた、池田香代子さんによる訳書。子どもにも読みやすく、大人にも親しみやすい語り口が魅力です。ケストナー作品の挿絵でおなじみのヴァルター・トリアーによるイラストが表紙を飾っており、原書の雰囲気も味わうことができます。
ふたりのロッテ (ケストナー少年文学全集)
1950年に高橋健二さんによって翻訳されたバージョンで、クラシカルな雰囲気がお好きな方にはおすすめの一冊です。ケストナーの作品はすべて揃えたい熱心なファンなら、こちらの全集を集めてみては。
子どもはハラハラドキドキ!大人にとっては「家族の幸せ」を考えさせられる物語
今回は、『ふたりのロッテ』の背景やあらすじを中心にお伝えしてきました。子どもにとってはハラハラドキドキ、大人にとっては家族の幸せについて真剣に考えさせられるお話でしたね。
本作が戦時中に書かれたことを思うと、家族のことでじっくり悩み、考えることができる現在の環境が恵まれていることを痛感させられます。ぜひ、親子でいっしょに読んでみてくださいね。
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文・構成/羽吹理美