咳払いをよくする人への対処法は? その心理や癖になっている人への対応について【医師監修】

咳払いは、人によっては雑音に感じたりストレスを覚えたりする独特のものです。咳払いをする本人は悪意を持ってやっているわけではない場合がほとんどですが、悪印象を与えてしまうことも少なくありません。また単なる咳払いだと思っていたら、実は「チック症」と診断されるケースもあります。
今回は「咳払いする人」「咳払いが気になってしょうがない人」両方の立場から咳払いについて考察します。

咳払いと咳の違い

飲み物や食べ物が気管に入ってしまった時に、いわゆる「むせる」という反応を起こしたことがあるでしょう。その「むせる」が「咳」に該当します。気管に入った異物を排除しようと、体が自然に咳を起こして異物を吹き飛ばします。風邪を引いた時も咳が出ますが、この場合は気管の炎症からの刺激を受けて咳が出るというメカニズムです。

では「咳払い」とはなんでしょうか。咳払いは、気管ではなく上気道に溜まった分泌物や異物を「意図的に吐き出す行為」です。痰を吐き出すような行為も咳払いに該当します。

このように「咳払い」と「咳」には大きな違いがあるため、混同しないことが大切です。ちなみに今回紹介する咳払いは、人に対しての咳払いを指しています。なぜ人に対して咳払いをするのか、この点にフォーカスします。

咳払いをする人の心理

人が意図的に咳払いをする時、誰かに聞かせることを目的としている場合もあります。気管に異物が詰まっているわけでもないのに咳払いをするのです。さまざまなシーンで、咳払いをする人の心理を解明していきましょう。

自分の存在を常に知っていてもらいたい心理

自己顕示欲が強い人は、常に自分の存在を知らしめておきたい心理が働きます。それはあらゆる行動や発言に出るもので、咳払いはこのひとつに該当します。例として、講演で咳払いをしてから話し出す人がいますが、これは権威的な空気を作ろうとする心理です。

講演する立場ですでに自分が上位者である意識がある(あるいは無意識に持っている)ため、話に重みを感じさせる意味でも、自然に咳払いが出てしまうものと思われます。

話者に対しての悪意や反発の心理

人が真面目に話をしている時に、いきなり大きな声を出したり音を出したり、ヒソヒソ話をはじめたりする人がいますが、話の邪魔をしたい場合がほとんどです。

話の最中に咳払いをする人も、同じことを目的としている場合があります。話している人や話の内容が気に食わない時に、咳払いで空気を乱したり、発言の邪魔をしたりすることがあるのです。

また誰かの話の最中に咳払いをすることを、物申したいサインの代替行為として使う人もいます。咳払いが癖である人は、それが時に悪意を持ってしていると受け止められてしまうため、できるだけこらえるほうがいいでしょう。

ルーティンとして咳払いする心理

仕事や勉強に集中しはじめる際に、咳払いしてから取り組むシーンを見たことはありませんか。スイッチを切り替えるための方法として咳払いをルーティン的に用いる人も少なくありません。

日常的なシーンでは、カラオケで歌い始める前に咳払いをする人がいます。これは、うまく歌うことを目的として、最初に喉の調子を整える意味で咳払いをするのでしょう。

咳払いにイライラしたときは

咳払いがうるさい人がいる時は、どうすればいいでしょうか。それが迷惑やストレスになっているなら対処する必要があります。しかし「あなたの咳払いが非常に迷惑です」と直接伝えることは、トラブルの原因になる可能性もあります。また悪意を持った咳払いではないケースもあるため、慎重な対応が必要です。

もし配慮を持って誰かの咳払いに対策したい場合は、その人を心配する姿勢で咳払いを意識してもらうようにしましょう。

例えば、

「最近喉の調子がよくなさそうですね、大丈夫ですか?」と声をかけて、のど飴をプレゼントする

「私も喉が悪くて咳払いが出ることがあるんですが、そういう時はマスクをして対策しています」とアドバイスする

「もしかしてここ、空気悪いですか?  お咳が出ているようで心配です、換気しましょうか」と聞いてみる

などです。咳払いをしている本人の悪意の有無に関係なく通じる声掛けを心掛けてください。

明らかに悪意を持った咳払いを止めることができない場合は、周囲の人たちが物理的に離れたり、聞こえなくする対策をしたりするしかありません。また職場や学校のような公的な場所であれば、上司や職員に相談することも一策でしょう。

咳払いが癖になっている場合はチック症の可能性も

悪意が全くない咳払いをする人がいる時は、「チック症」を疑ってみてください。「意図せずに、ただ咳払いをしているだけ」の可能性があります。しかしチック症であるかの判断は、正しい知識を持っておこなう必要があります。

咳払いが癖になっている場合はチック症の可能性も
咳払いが癖になっている場合はチック症の可能性も

チック症の症状

チック症のパターンは主に2種類あります。

運動性チック

運動性のチック症は、

・まばたきを続ける
・頻繁なしかめっ面
・口を変な日常的でない形に歪めたり尖らせたりする
・理由なく首を左右に振る、肩や腕を動かす

上記のような傾向にある場合はチック症を疑ってみる必要があります。

音声チック

音声チック症は、

・鼻をすする、鳴らすを繰り返す
・理由なく舌を鳴らす
・理由なく「咳払い」をする

上記のことを悪意なく無意識に行っている場合は、チック症の可能性があります。

大人になってからも発症する?

チック症は、基本的に子どもの頃に発症するケースがほとんどですが、今まで何の症状もなかったのに、大人になってからチック症の症状が出てきたというケースもあります。ただしこのようなパターンは比較的稀なため、判断に注意を払う必要があります。

前述のようなチック症的な咳払いをする人がいる場合は、意図したことではないため、周囲の人たちの気遣いが必要です。

チック症の人への配慮

●チック症の当事者の場合

自分がチック症であることが分かった場合は、周囲にそれを知ってもらい理解を得ることが先決です。理解してもらい「嫌われていないか」「迷惑をかけていないか」といった不安を軽減しながら過ごしましょう。

●身近にチック症に大人がいる場合に配慮すること

そもそも「チック症とは何か、どのような症状があるか」を理解するようにしてください。チック症の独特の言動は、決して悪意を持って周囲に迷惑をかけようとしているものではありません。

また過度な気遣いは本人を孤独にさせたり、迷惑をかけていると考えさせたりする要因になりかねません。日常的には「気にしない」という気遣い、いわゆる「優しい無視」が必要です。チック症を理解したうえで、普段は無視するようにしましょう。

その一方で、チック症の当事者にいつでも手を差しのべられる姿勢でいるようにしましょう。大人のチック症は多くありません。そのため理解している側は問題ありませんが、いざ外の世界で一緒に行動する際は、大人のチック症の当事者が不審者のような扱いをされてしまうケースもあります。そのような時は、理解者が必ずフォローをするようにしましょう。

まとめ

咳払いには、意図的な咳払い、症状としての咳払いの2種類があります。前者の場合は本人の反省・改善や周囲の対策が必要です。職場や日常的な人間関係に悪影響を及ぼすため、今回ご紹介したような方法で、無視せずに対策をとるようにしてください。

後者の場合はチック症の可能性があります。当事者が決して悪意を持っているわけではないことを周囲が理解して、普段は優しい無視を心掛けましょう。

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記事監修

安藤 大樹|医師

医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック院長。藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)卒業後、同大学病院研修を経て、同大学病院総合診療内科所属。2011-2015年にかけて同院最優秀指導医賞受賞。岐阜市民病院総合内科を経て現職。岐阜大学総合病態内科学非常勤講師、藤田医科大学救急総合内科客員講師、岐阜市民病院研修管理委員会外部委員。

日本内科学会認定医
プライマリケア連合学会認定医・指導医・代議員
日本心療内科学会登録医
日本医師会認定産業医

『医療よろず相談所』をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリケア医。「プライマリケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。

医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック

 

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