童話『シンデレラ』はグリムとペロー版でここが違う! 原作の内容とあらすじを再確認【教養としての童話】

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舞踏会、かぼちゃの馬車、12時の鐘、そしてガラスの靴……。誰もが知る『シンデレラ』には、「灰かぶり姫」という原作があります。原作の怖い結末とは?ガラスの靴ではなかった?魔法使いは出てこない? …等々、原作との違いをまとめました。

『シンデレラ』ってどんなお話?

『シンデレラ』は、継母や義理の姉らに虐げられていた美少女が、魔法使いの力を借りてお城に行き王子様に見初められるという、誰もが知っているお話です。

『シンデレラ』には、グリム版などいくつか類話がありますが、そのもとになった原作はシャルル・ペローの『シンデレラ、あるいはガラスの靴』と言われています。多くの映画やアニメーション作品にも影響を与えたとされています。

原題: ” Cendrillon, ou La petite pantoufle de verre”、英語表記 “Cinderella, or The Little Glass Slipper”
国:フランス
作者:シャルル・ペロー
発表年:1697年

シャルル・ペローってどんな人?

シャルル・ペロー(Charles Perrault, 1628-1703)は、フランスの作家、詩人、公務員、学者です。彼はルイ14世の時代に活躍し、17世紀のフランス文学において、童話や寓話のジャンルを確立したことで知られています。

シンデレラの原作者シャルル・ペロー。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%BC#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:ChPerrault.jpg
シンデレラの原作者シャルル・ペロー。Wikimedia Commons(PD)

彼は、『母ガチョウのお話』『赤ずきん』『長靴をはいた猫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』など、多くの有名な童話や寓話を書いています。

あらすじ・ストーリー紹介

原作「シンデレラ」のあらすじを以下にまとめていきます。

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

詳しいあらすじ

むかしむかし、それはそれは美しい少女がいました。

シンデレラと呼ばれて

母親を早くに亡くし、父親の再婚に伴い、継母と義理の姉たちと住むことになります。ところが、彼女たちから家事をすべて押し付けられ一日中、ヘトヘトになるまで働かされます。

「すす」だらけの彼女を、姉たちは「シンデレラ(= 英文表記の「Cinder=灰」に、本名のエラ「ella」を付けて「Cinderella」)」とあだ名をつけあざ笑いします。それでもシンデレラは、仕事が忙しい父親には心配させないよう、何も言わないで過ごします。

魔法使いによって舞踏会へ

ある日、王子様が開催する舞踏会に、義母と義理の姉2人が招待を受け出席することになりました。

美しく着飾って楽しそうに出ていく義母や姉たちを見て、ひとりだけ留守番をさせられるシンデレラのそばに、魔法使いのおばあさんが現れます。

魔法使いは、シンデレラにドレスやガラスの靴、魔法の馬車などを用意してくれ、無事に舞踏会に参加させてくれます。

王子様は美しいシンデレラに一目ぼれ、踊りに誘います。シンデレラも王子様と踊るうちに恋に落ちます。しかし、夜中の12時には魔法が解けてしまうため、シンデレラは追いかける王子様を振り切って舞踏会を後にします。急いだシンデレラは、うっかりガラスの靴を片方、落としていきます。

王子と結婚

王子様はシンデレラを忘れることができず、「この靴の持ち主と結婚する」とお布告(おふれ)を出します。ガラスの靴だけを手掛かりに、家来たちは町中シンデレラを探し始めます。多くの女性が試してみるも、その靴がぴったり履けたのはシンデレラだけでした。

シンデレラこそが王子様が探していた女性だとわかると、王子さまはすぐに求婚します。二人は結婚し幸せに暮らします。

あらすじを簡単にまとめると…

継母と義理の姉たちに、いじめられ女中のようにこき使われているシンデレラが、魔法使いによってお城で開かれる舞踏会へ参加することができ、その結果、王子様に見初められて幸せな結婚をする物語。

『シンデレラ』の教訓

誰もが履けなかった靴をぴったり履けたのが、すすだらけ、灰だらけの、みすぼらしいシンデレラでした。それでも、王子さまはこの人だ!と確信します。

このことから、人は見た目だけで判断してはいけない、という教訓が込められています。また、シンデレラのように苦難に耐え、乗り越えることで、いつか幸せになれるというメッセージも示唆されています。

主な登場人物

『シンデレラ』は短いお話ですので、登場人物は少ないですが、ひとりひとりが重要な役割を担っています。

  • シンデレラ

  • 主人公である美しい女性。母親を早くに亡くし、悪い継母と義理の姉妹に虐げられて生活しています。
  • 王子様

  • シンデレラが恋に落ちる王子。
  • 継母

  • シンデレラの父親が再婚した女性で、シンデレラに意地悪をします。
  • 義理の姉妹

  • 継母の連れ子で、シンデレラをいじめます。
  • 魔法使い

  • シンデレラを助けるために現れる魔法使い。魔法の杖や魔法の馬車を使って、シンデレラを助けます。
  • お城の家来たち

  • 王子様の命で、シンデレラが残したガラスの靴を手がかりに「この靴にぴったり合う足の女性」、つまりシンデレラを探しに来ます。

『シンデレラ』の原作はここが違う

日本で知られているペロー版と、グリム版の違いをご紹介します。絵本などでは、ページ数の関係で原作をかなり割愛していたりしますが、原作とどう違うのでしょうか。

グリム童話のシンデレラ「灰かぶり姫」

「灰かぶり姫」は、グリム童話の一つ。『シンデレラ』と似たお話です。主人公の灰かぶり姫も、母親を早くに無くした美しい女の子で、再婚した義母と義理の姉妹にしいたげられます。かまどの掃除で灰だらけになっている彼女を、姉妹たちは「灰かぶり」とバカにされます。

以下、ペロー版とグリム童話版の主な違い、2点です。

魔法使いは登場しない

  • ペロー版には魔法使いが登場し、シンデレラを助けるために魔法を使いますが、グリム童話版には魔法使いは登場しません。代わりに二羽の白い鳩がパーティーへのドレスを用意してくれます。
  • ガラス靴ではなく金の靴

  • ペロー版では、シンデレラが履いていた靴が「ガラス」でできているとされていますが、グリム童話版では「金」とされています。

これらの違い以外にも、多くの細かい違いがあります。ただし、どちらも主人公が苦難を乗り越え、運命の人との出会いを通じて幸せになるという基本的なストーリーは共通しています。

ペロー版のシンデレラ

ディズニー映画の元となったのがシャルル・ペローの『シンデレラ』で、原題「サンドリヨン」です。

「サンドリヨン」とは、フランス語で「灰汁色の小鳥」を意味します。しかし、一般的には、「シンデレラ」を指す言葉として使われます。フランスの作家シャルル・ペローが1697年に発表した童話『シンデレラ、あるいはガラスの靴』(Cendrillon, ou La petite pantoufle de verre)に登場する主人公の名前が「Cendrillon(サンドリヨン)」であるため、フランスでは「サンドリヨン」と呼ばれています。

『シンデレラ』を読むなら

比較的ページ数の少ない本が多いシンデレラです。絵本、サンドリヨン版、完全対訳版までおすすめの本をご紹介します。

シンデレラ ディズニーゴールド絵本ベスト(講談社)

講談社 (編集) 18ページ 電子版/絵本 

漢字は一切使われておりません。カタカナは少しありますが、平仮名がふってあります。ひらがなが読めるようになったら。フルカラー、ボードブック、サイズ:189ミリ×262ミリ。

シンデレラ(小学館)

著/奥本大三郎  絵/宇野亜喜良  大型絵本 

奥本先生の情感あふれる文章と宇野亜喜良先生のすてきな絵による「シンデレラ・ストーリー」をお楽しみください。小学生低学年~。全32ページ。

灰だらけ姫 またの名 「ガラスの上ぐつ」

シャルル ペロー (著) 楠山 正雄 (翻訳)  形式: Kindle版 文庫 

シンデレラではなく、原名のサンドリヨンで書かれた和訳版。小学生低学年~。全16ページ。

シンデレラ〜小さなガラスの靴

シャルル・ペロー (著) 城牙咲くらは (著, 編集, 翻訳) Charles Perrault (著) 

完訳版。原作との対訳式。フランス語と日本語を読み比べてみたい方に。中学生~。全78ページ

オペラでも楽しめる『シンデレラ』

上記以外にも『シンデレラ』の楽しみ方はたくさんあります。

ペローやグリムよりも以前に、17世紀に南イタリアのバジーレによって書かれた灰かぶり猫(Cenerentola チェネントラ)が「シンデレラ」の元祖と考えられています。イタリアの音楽家、ロッシーニが25歳の時にチェネントラが歌劇にしました。様々な伏線や仕掛けがストーリーに組み込まれており、笑いあり涙ありの見事な喜劇かつシリアスなオペラで大好評を博します。

ロッシーニのチェネントラは、劇場に年齢制限がなければ、小学生でも十分楽しめる素晴らしいオペラですので、もし機会があれば、ぜひお子さんと一緒にご観覧ください。思い出に残る素晴らしい一作となること、間違えありません。

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