お財布には神さまがいる?「幸せなお金の使い方」とは【フィナンシャルプランナー監修!絵本で学ぶお金の話】

ファイナンシャルプランナーが子育て中のパパママに必須な「お金」の話を、絵本を例にとりながらわかりやすく解説していくリレー連載。第三回は「おさいふのかみさま」という絵本に学ぶ、お買い物体験の必要性と、お金の使い方のお話です。子どもと一緒に絵本を読むことで、お金の原点を学ぶことができます。

作/苅田澄子 絵/にしむらあつこ 監修/キッズ・マネー・ステーション

1400円+税(フレーベル館)

 

こんにちは、キッズ・マネー・ステーション代表、ファイナンシャルプランナーの八木陽子です。今回紹介する絵本は、キッズ・マネー・ステーションで監修をしている絵本「おさいふのかみさま」です。

<あらすじ>

100円をもらい、どろりん商店街に買い物にでかけたおばけの“ばけばけ”。

欲しいものを買おうとするのですが、本当に欲しいものが分からず、おさいふのかみさまから、何度も「それ、いちばん ほしいかね~」と聞かれて、困ってしまいました。何も買わずに家に帰ると、かみさまのいたずらで、次から次へと100円玉が出てきて、100円玉の大きな山ができあがりました。その山に埋もれそうになって、“ばけばけ”は半べそに。そんな“ばけばけ”が最後に選んで買ったものは、何でしょうか。

金銭感覚を“肌で体験する”お買い物体験がおすすめ

この絵本で知ってほしいことの一つが、お買い物体験の大切さです。

今の時代、家にいて、ポチッとすれば、何でも気軽に購入できます。そんな時代に、リアルな街中でのお買い物体験は、子どもたちをたくましく成長させてくれるもの。子どもたちにとって、金銭感覚は、教えられるより、“肌で体験する”ことで培われるものです。

「お金は大切なもの」とくどくど言っても、言われたほうは、「ふーん?」という感じですよね。

それが、ばけばけのように、自分のお金100円玉を握りしめてお買い物にいくと、お店であれこれ悩んだり、ハプニングがあったり、貴重な体験になります。

お買い物の現場では、多くの発見があります。

たとえば、クッキーを買うとしても、同じようなクッキーなのに、どうして高いものと安いものがあるのだろう?と考えるかもしれません。会社が違うから?でも、同じ会社の同じブランドなのに、今日賞味期限のものは、割引で売られているかもしれません。どうしてでしょう?……お買い物は「社会のしくみ」を学ぶ大切なきっかけになります。

もし子ども一人だとちょっと不安という親御さんがいらっしゃったら、スーパーまでは一緒に行き、ある買い物を子どもに任せるといった、“プチお買い物体験”から始めるとよいでしょう。

我が子がお買い物に失敗する姿は、少しかわいそうなこともあるかもしれません。

私には、2人の子供がいますが、2人とも、小さい頃から、おこづかいで買い物をして失敗する場面に、何度も遭遇してきました。縁日で飛びついて購入したら、すぐ壊れるようなおもちゃで、翌日号泣……。抽選のガラガラがやりたいだけで、欲しくないものをたくさん買ってしまって、おこづかいが足りない……などなど。親としては、先回りして教えたい衝動にかられますが、大切なのは、たくさん失敗して、将来賢いお買い物ができるように見守っていくことだと思います。

お金の種類や価値は実体験で自然と学ぶ

小さな子どもたちの中には、1000円などのお札よりも、小銭が好きな子がたくさんいます。小学生低学年ぐらいのお子さんでも、まだまだ500円と100円の価値の違いが分からないことがあります。「500円玉より、100円が欲しい」と言い張る子もいますね。きっとガチャガチャができたりカードが買えたり、子どもにとっては、100円が身近な嬉しい存在なんでしょうね。

そんなときは、「500円玉は、100円5個分で、こっちのほうが高いの!!」と無理に教える必要はないです。今、お金の計算ドリルなども出ていますが、むしろお買い物で自然に学べます。500円玉や1000円札で、商品を買ったらおつりがきた、おつりはいくらかな? おつりで他の商品は買えるかな?……こういった体験を積み重ねることによって、自然と貨幣の種類や価値を学ぶのです。

大人になったら、クレジットカードや○○ペイなど、データで決済することが増えるからこそ、小さい頃のお買い物で実体験を育みましょう。

教えたいのは、幸せなお金の使い方

お金の教育というと、「お金の貯めかた」の教育と思われることも多いのですが、私は「お金の使い方」を教えるほうが重要だと思っています。

「お金は使って初めて豊かになる」

10年以上前になりますが、この言葉を初めて聞いたときは、目から鱗が落ちた感覚になりました。

お金を貯めたとしても、その先にあるのは、「どう使うか」。貯めているだけでは、豊かになりません。限りあるお金を、自分らしく使い、幸せになることができるかが、お金の教育の最終的な目標と言ってもよいかもしれません。

ばけばけが、絵本の最後にたどりついた、幸せなお金の使い方とは、みんなで食べる飴を買うこと。最後のシーンで、友達や家族と一緒のばけばけを見ると、ほのぼのとした気持ちになります。

 

キッズ・マネー・ステーションの講座「おこづかい会議」では、アメリカの金融教育のメソッドに従って、おこづかいの使い方を「SOS」に仕分けることをおすすめしています。

(1)自分のために使うお金  Spending

(2)人のために使うお金 Offering

(3)貯めるお金 Saving

日本では、(2)の人のために使うお金には、馴染みが薄い方もいるかもしれませんね。

もちろん、お金にはこう使わなくてはいけないという決まりがあるわけではありませんが、自分のためだけにお金を使うのではなく、人の笑顔のためにお金を使うことは、長い人生に豊かさをもたらしてくれるのではないかと思っています。

「幸せな金の使い方」は人それぞれ。この奥の深いテーマを、ばけばけと一緒に探求してみませんか?

 

 

八木陽子

キッズ・マネー・ステーション代表/ファイナンシャルプランナー

日本では少数派である、金融商品を一切販売しないFP事務所を運営。平成29年に文部科学省検定の高等学校の家庭科の教科書に日本のファイナンシャルプランナーとして掲載される。NHK「ウワサの保護者会」などメディア出演多数。著書に「6歳からのお金入門」「お金は子供に預けなさい」など。

 

記事監修

キッズマネーステーション|ファイナンシャルプランナー

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2018年までに1100件以上の講座実績を持つ。


 

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