「祇園祭」はどんなお祭り? 2023年の開催日や由来・見どころを紹介

祇園祭とは、例年7月に行われる京都の代表的なお祭りです。絢爛豪華な山鉾巡行や駒形提灯が灯る幻想的な宵山をはじめ、たくさんの見どころがあります。全国から多くの観光客が訪れる祇園祭について、2023年の日程とあわせて紹介します。

2023年の祇園祭はいつ?基本情報も確認

祇園祭(ぎおんまつり)は京都の夏を象徴する一大行事です。

2023年は4年ぶりに本来の形で開催予定とあって、京都市民はもちろん、全国から期待が寄せられています。まずは、祇園祭の見どころや2023年の日程を見ていきましょう。

例年7月1日から1カ月間続く八坂神社の祭事

祇園祭とは、例年7月1日~31日まで行われる八坂神社(京都市東山区)の祭事です。5月の葵祭、10月の時代祭とともに、京都三大祭に数えられています。八坂神社と氏子区域で1カ月にわたって行われる祇園祭は、京都の夏の風物詩です。

また、祇園祭は東京の「神田祭」、大阪の「天神祭」と並ぶ日本三大祭の一つでもあります。全国から訪れる観光客の多さはニュースに取り上げられるほどで、3年ぶりに開催された2022年の前祭(さきまつり)では、約14万人の見物人を記録しました。本来の形での開催が予定されている2023年の祇園祭は、さらなる人出が予想されています。

2023年京都市 プレスリリースより

疫病退散を願う「祇園御霊会」が始まり

祇園祭の歴史は平安時代にまで遡ります。

859~877年(貞観年中)の頃、当時の都・平安京には疫病が流行し、多くの死者が出ていました。死者の魂を慰め、疫病退散を祈願するために霊場・神泉苑で行われたのが「御霊会(ごりょうえ)」です。

祇園祭の起源となった「祇園御霊会」は869年(貞観11年)、疫病の流行を鎮めるために催されました。天皇の勅命により神泉苑に66基の鉾を立て、八坂神社から神輿を迎えたとされています。

970年(天禄元年)からは毎年行われるようになり、民衆も参加して規模も大きくなっていきます。山鉾巡行(やまぼこじゅんこう)は1467(応仁元年)から始まった応仁の乱により一時途絶えましたが、1500年(明応9年)に復活しました。以後、祭りの伝統は現代まで引き継がれています。

祇園祭いちばんの見どころ・山鉾巡行

祇園祭の代名詞でもある山鉾巡行は、いちばんの見どころです。中京区・下京区各町の誇る壮麗な山鉾が連なって、京都市内を巡行します。圧巻の山鉾巡行を楽しむために知っておきたいポイントを紹介します。

2023年京都市 プレスリリースより

前祭・後祭合わせて34基の山鉾が登場

2023年の山鉾巡行は、7月17日(月・祝)の前祭と、7月24日(月)の後祭(あとまつり)に予定されています。

登場する山鉾は前祭・後祭合わせて34基で、大きなものは重量約12トン、鉾頭までの高さが地上約25mに達します。組み立てから巡行、解体までに1基あたり約180人もの人手が必要です。

「くじ取らず」の10基(2022年の場合)以外の山鉾は、毎年7月2日のくじ取り式で出発の順番が決まります。ただし、先頭は毎年「くじ取らず」の「長刀鉾(なぎなたほこ)」とされています。「長刀鉾」の鉾先につけられた大長刀が、疫病・邪悪を祓うとされているためです。

また、「長刀鉾」には全山鉾のなかで唯一、神様の使者とされる子ども「生稚児(いきちご)」が乗ります。生稚児の役目は、太刀で注連縄を切り、結界を開放することです。

提灯が美しい夜の長刀鉾

巡行では豪快な辻回しが見られる

山鉾巡行のコースは前祭が四条烏丸から新町御池まで、後祭は烏丸御池から四条烏丸と予定されています。

河原町四条・河原町御池・御池新町の交差点では、山鉾が90度向きを変える「辻回し」が見られます。山鉾には方向を変える舵がありません。そのため、濡らした青竹を敷き詰めた上に車輪を乗せ、掛け声とともに曳き手が息を合わせて方向転換します。高さ数mの山鉾が、人の力で向きを変える過程は必見です。

掛け声が飛び交うダイナミックな「辻回し」

山鉾巡行の途中には、くじの順番通り巡行しているか確かめる「くじ改め」が行われます。大紋烏帽子を身につけた京都市長が、改め役を務めるのが慣例になっています。

※本記事の情報は2023年5月時点のものです。詳細は公式サイトで確認ください。

祇園祭山鉾巡行(前祭・後祭)

ユネスコの無形文化遺産にも登録されている

京都祇園祭の山鉾行事は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。2009年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

山鉾そのものも、29基が国の重要有形民俗文化財に指定されています。西陣織やゴブラン織など、国内外のさまざまな織物やタペストリーで飾られた絢爛豪華な山鉾は、「動く美術館」と呼ばれるのも納得です。彫刻や金具などの細工の美しさ、西陣織を用いた衣装やからくりなど、山鉾一つひとつに特徴があります。

山と鉾の違いは屋根の上にあります。木(松)が立てられているのが山、加えて長刀や三日月などのシンボルが立てられているのが鉾です。山鉾巡行を見ながら、違いをチェックするのも楽しいでしょう。

参考:
「山・鉾・屋台行事」のユネスコ無形文化遺産登録(代表一覧表記載)について
祇園祭山鉾 文化遺産オンライン

山鉾巡行だけじゃない!祇園祭の主な祭事

祇園祭の見どころは山鉾巡行だけではありません。1カ月の間、八坂神社と氏子区域では毎日のように祭事が行われています。見学できるところも多いので、ぜひ足を伸ばしてみましょう。

神輿洗・お迎提灯

神輿洗(みこしあらい)は、7月17日の神幸祭(しんこうさい)に先立って行われる神事です。御祭神を乗せる神輿を、鴨川で汲み清めた水を使って四条大橋の上で洗います。例年では神幸祭前の7月10日と、神事が終わる7月28日に行われます。

お迎提灯(おむかえちょうちん)は、神輿洗で清められた神輿を迎える提灯行列です。例年、7月10日に祇園万灯会の有志が八坂神社を出発し、河原町通を経て京都市役所前広場で舞踊を奉納します。その後、寺町通を経て八坂神社に戻り、神輿をお迎えする流れです。

神幸祭・還幸祭

神幸祭は、例年7月17日に行われる神事です。神輿渡御出発式の後、八坂神社の3基の神輿が四条御旅所まで、所定のコースを通って渡御(とぎょ・神輿が進むという意味)し、24日まで留まります。

還幸祭(かんこうさい)が始まるのは、7月24日の後祭が終わった後の午後5時頃です。3基の神輿は四条御旅所を出発し、所定のコースを経て八坂神社へ戻ります。八坂神社又旅社での祭典後、神輿に灯が入れられて本社へ還幸となります。

山鉾巡行と同じ日に行われるのは、もともとの山鉾巡行の目的が、神幸祭・還幸祭のために道を先導することだからです。

宵山

宵山(よいやま)は、前祭と後祭のそれぞれ3日前・前々日・前日に行われます(例年7月14日~16日、7月21日〜23日)。各山鉾町に出番を待つ山鉾が並ぶさまは圧巻です。

宵山の賑わい

駒形提灯が灯され、祇園囃子が流れる宵山は、京都らしい風情があり、浴衣を着て散策するのにピッタリです。また、前祭の宵山では屋台や露店が建ち並び、歩行者天国になるところもあります。

各山鉾町では、厄除けの護符を添えた粽(ちまき)が売られています。端午の節句の粽とは異なり、笹の葉で作られているので食べられません。京都では、多くの家で玄関先に吊るされています。購入すると山鉾に上がらせてくれるところもあるので、思い出作りにおすすめです。

京都の厄除け粽

花傘巡行

花傘巡行は、1966年(昭和41年)に山鉾巡行が1回になった際、後祭の代わりとして始まりました。馬長稚児神輿に児武者や花街の舞妓・芸妓、10基以上の傘鉾など、総勢1,000名近くが参加する華やかな巡行です。2014年(平成26年)に後祭が復活した後も残り、現在では後祭と同日に行われています。

例年では八坂神社から出発し、寺町通・御池通・河原町通・四条通を通り、八坂神社に戻ってくるコースとなっています。その後は舞踊などを奉納する、お祭り色の強い行事です。

ただし、雨天決行の山鉾巡行とは異なり、花傘巡行は天候によって中止されたり、内容が変更されたりすることがあります。

疫神社夏越祭

疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)は、例年7月31日に行われます。参拝者が疫神社の鳥居に設置された高さ約2mの茅の輪をくぐって護符を授かる、祇園祭の締めくくりとなる神事です。

八坂神社の境内もある疫神社。鳥居に設置された茅の輪をくぐる。

八坂神社の境内摂社(神社の境内にある小さな社)である疫神社は、別名を蘇民将来社といいます。八坂神社の御祭神・素戔嗚尊(すさのおのみこと)を貧しいながらももてなし、一夜の宿を提供した蘇民将来命(そみんしょうらいのみこと)にちなんでいます。

蘇民将来命の親切に喜んだ素戔嗚尊は、「蘇民将来子孫也」と記した護符を与えました。この護符の力により、子々孫々が疫病から逃れられたとして、蘇民将来命は疫病除けの神として祀られるようになったのです。

祇園祭を観覧するときの注意点

祇園祭は京都の夏の一大イベントです。本来の形で行われる2023年は、例年より多くの人出が想定されます。あらかじめ準備をして楽しみましょう。

水分補給と雨対策をしっかり

祇園祭は京都の梅雨明けと重なるため、蒸し暑くなります。祇園祭を訪れる際は、水分補給や体調管理を心掛けることが大切です。

加えて、山鉾巡行や宵山は十万人単位の人出が予想されます。2022年の前祭宵山では約30万人、山鉾巡行で約14万人を記録しました。4年ぶりに祇園祭本来の形で開催されるとあって、2023年はさらに観光客が増えることでしょう。

山鉾巡行は雨天決行ですが、ルート沿いに雨除けはありません。傘の使用も禁止されているので、レインコートの用意が必要です。さらに、日除けもなく日傘も不可とされています。熱中症対策は万全にしておきましょう。帽子や日除け用のタオル、飲み物や保冷剤が必須です。

落ち着いて見られる有料観覧席もおすすめです。詳しい情報公開は2023年は5月下旬、販売開始は6月上旬が予定されています。ただし、有料観覧席でも雨傘や日傘の使用は禁止となっているので注意しましょう。

※本記事の情報は2023年5月時点のものです。詳細は公式サイトで確認ください。

令和5年「祇園祭」有料観覧席のご案内

祇園祭の歴史と賑わいを体感しよう

祇園祭は京都を代表するお祭りの一つです。山鉾巡行や宵山の賑わいに、千年以上受け継がれてきた民衆の情熱や思いが感じられるでしょう。

また、祇園祭は八坂神社の祭事でもあります。1カ月の間、氏子区域で毎日のように行われるさまざまな神事にふれることで、厳かな雰囲気も味わえます。2023年は4年ぶりに本来の形で開催される予定なので、祇園祭の歴史や賑わいを、現地で体感してみることをおすすめします。

※本記事の情報は2023年5月時点のものです。詳細は公式サイトで確認ください。

祇園祭「どんな祭?」

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構成・文/HugKum編集部

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