5歳の娘が万引きをしました。それも初めてではなかった。盗み癖がついたらどうしよう…【愛子先生の子育てお悩み相談室】

子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴半世紀あまり。常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。

5歳の娘が万引をしました。すでに、何度かお店の物を持ってきていたことも判明。盗み癖がついていたらどうしよう……

 買い物帰り、買った覚えのないものを持っていた年長の娘。「○○ちゃんにもらった」と答えますが、問いただすと「お店から持ってきた」と白状しました。すぐお店に事情を話して謝り、品物を返しました。心配になり娘の持ち物を確認すると、見覚えのないものがいくつも。明るくていい子なのに……。入学すれば目が届きにくくなるし、盗み癖がついていたら、と考えると恐ろしくて仕方ありません。

 これくらいじゃ、盗み癖はつきません。親のすべきことは「いけないこと」だと、ありったけ怒ること

 そんなまさか、と思われるかもしれませんが、年長児あたりの年代の万引というのは、よくあること。で、うまい具合に必ずばれるものです。一回で懲りることもありますが、何回か繰り返す例もあります。

やった本人にも、後ろめたい気持ちはもちろんあって、お金と物は交換だということも知っている。

でも、そのお金がどこからやってくるかが、まだあんまりわかっていない。

「銀行にお金はある。パパが働いているから銀行に行けばある」。年長といえども、この程度の認識レベルですから、お金の流通経路がわかっているわけではありません。

で、お店に買い物に行くと、持っていってと言わんばかりに子どもがちょうど手に取れる場所に、欲しくなるようなものが陳列してあるんです。そうなると、欲しいという、物欲が勝ってしまう。それで、ちょっと「もらっちゃう」ということをやってみちゃう。

いけないことだということは知っていますので、親に見つかったら、もちろん泣きも入るし、どの子も必ずと言っていいほど「○○ちゃんからもらった」と答えるのも同じです。

嘆くよりも前にきっちり怒ることが大切です。怒りのすさまじさを見ることで子どもも気が付くはず

そんなときはどう対応すべきか、なのですが、親ならば盗みが発覚した時点で、子どもを烈火の如く怒ってください。

「あなたをそんな子に育てた覚えはない!」って、ありったけの力で怒る。理屈じゃない、そのときの親のすさまじさを見せてください。

子どもの心に、親の思いを響かせる手はほかにないと思います。その様子を目の当たりにして、子どもも「ああ、やっぱり、まずかったか」と感情を伴ってわかっていくものなのです。頭で知識で知っていることと、身体ごとわかっていくことの違いです。

質問のママも「明るくていい子」と書いているように、親はどうしたって「うちの子に限って、どうして?」と思うでしょう。でも、嘆く前に何よりまず、きっちり怒ること、その姿を見せることが大事。

以前、家庭裁判所の方とお話しした際にこんなことを聞きました。思春期に悪さをして補導されたときに、呼ばれた親御さんに多い反応が、「何かの間違いじゃないですか?」「友達にそそのかされたのでは(本当に悪いのはうちの子じゃない)」「いくら出せばいいのですか?(学校に内緒にしてもらいたいため)」というものなんですって。あんまりですよね。そんな姿を子どもの前で見せても、子どもの心にはまったく響きません。

また、お母さんのお財布からお金を取っちゃうのも同じようなもの。ただ年長児の場合は、思春期にする悪さとは動機が違います。物欲がまさってやってみちゃった、という無邪気なもの。この年代の子にはよくあることです。たちの悪いものでも、癖になることもないので、その点は安心してください。

ただ、いろいろ試してみたいお年頃。眼を離せませんよ!

記事監修

柴田愛子|保育者・自主幼稚園りんごの木代表

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて36年。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。

イラスト/海谷泰水

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