セミの鳴き声に関する基礎知識
なぜセミは、夏頃になると大きな声で鳴き始めるのでしょうか。セミが鳴く目的と、鳴き声の種類に関する基本的な知識を解説します。
鳴いているのはオスだけ
セミは全て鳴くと思っている人が多いかもしれません。しかし実際は、大きな音を出して鳴いているのは、オスのセミに限られています。オスのセミが大きな音で鳴く目的は、メスに自分の存在を知らせるためです。
数年を土の中で過ごす幼虫とは対照的に、セミの成虫は数日から数週間、長くても1カ月ほどしか生きられません。成虫の使命は次世代へと生をつなげることなので、できる限り早くメスと出会って卵を産ませる必要があるのです。
鳴き声は種類によって違う
セミの鳴き声は種類によって異なるため、「ミーンミーン」以外の鳴き声も存在します。セミの鳴き声がほかの昆虫に比べて大きい理由は、背中側についた発音板(発音膜)と腹の中の空洞、脚の下側にある「腹弁」といった体の仕組みです。
オスのセミは、背中にある発音板(発音膜)を、発音筋を使って振動させることで音を出します。腹にある「共鳴室」と呼ばれる空洞で音が響き、胸の一部が発達したとされる腹弁によって抑揚・リズムに強弱がついて鳴き声となる仕組みです。空洞の大きさや腹弁の働きはセミの種類によって違うため、鳴き声も種類によって異なります。
セミの鳴き声としてイメージするのは…
セミの鳴き声というと、多くの人が思い浮かべるのは「ミーンミーン」という鳴き声ではないでしょうか? まずは、印象的な鳴き声を持つセミの種類をチェックしていきましょう。
印象的なミンミンゼミの鳴き声
夏の風物詩ともいえる「ミーンミーン」と鳴くセミは、ミンミンゼミと呼ばれています。実際の鳴き声は「ミーンミンミンミンミー」で、7〜10月の午前中に鳴くのが一般的です。
北海道・本州・四国・九州の、田畑や雑木林といった里山に多く生息しています。黒っぽい体の胸部分には緑・水色の模様が入っており、体長は約3.5cmとそれほど大きくありません。一方で、茶色の紋がついた透明の羽を含めると5.5〜6.5cmの長さになり、中型サイズのセミに分類されます。
種類別に異なるセミの鳴き声を知ろう
セミの種類は、ミンミンゼミ以外にもたくさんあります。種類ごとの鳴き声を確認し、セミの大合唱から声の持ち主を親子で当ててみましょう。
アブラゼミ
「ジリジリジリ」と鳴くアブラゼミは、7〜9月頃の夏から秋にかけて、平地や里山に生息するといわれています。北海道・本州・四国・九州の公園や街路樹、町中などで見かけることも多く、茶色く透き通らない羽が特徴的です。
「ジリジリジリ」という鳴き声が、油で揚げ物をするときの音に似ていることから、アブラゼミという名称がついたとの説もあります。羽を含めた長さは5.3〜6.0cmの中型サイズで、黒い体は胸から腹が白い粉に覆われています。
ニイニイゼミ
全国の公園や寺社の林などに生息し、6〜9月頃に活動するとされるニイニイゼミは、全長3.2〜4.0cmの小さなセミです。太くて短い体と平べったい形が特徴的で、「チー」「ニィー」と長く鳴きます。
ニイニイゼミを見分けるポイントは、茶色と透明がまだらになった羽と、胸にあるオレンジ色の模様です。小さくて丸い抜け殻には全体的に泥がついているので、抜け殻を頼りにしてニイニイゼミを探す手もあります。
ヒグラシ
「カナカナ」と鳴くヒグラシは、7〜9月頃の明け方・夕方といった気温の低い時間帯に活動するといわれています。全国の樹林地に生息しており、羽の先を含めた体長は4.5〜6.2cmです。
ヒグラシはセミの1種で、夕方に鳴くことから「ヒグラシ」という名前がつけられました。俳句の季語としても使われており、多くの俳人がヒグラシを用いた句を詠んでいます。
中でも江戸時代の俳人・与謝蕪村が詠んだ「蜩(ひぐらし)のおどろき啼く(なく)や朝ぼらけ」は、ヒグラシが朝方にも鳴くことが分かる一句です。
クマゼミ
クマゼミは、関東より南の本州・四国・九州・沖縄の住宅地や公園などの木に生息しているといわれています。「シャーシャー」という高くて大きい声で鳴く、体長6.0〜7.0cmの大型のセミです。
黒くてがっしりとした体つきで、クマゼミの名前にぴったりな見た目をしています。透明の羽はつけ根側が緑色で、先にいくほど黒っぽくなっているのが特徴です。一般的にセミの成虫の寿命は短いといわれていますが、野生下のクマゼミ(成虫)は1カ月ほど生きたという研究結果も報告されています。
ツクツクボウシ
「オーシンツクツクオーシンツクツク」と鳴く、ツクツクボウシもセミの1種です。7〜10月の夕方頃に、特に鳴き声が聞こえるといわれています。全国の里山や公園、寺社の林などに多く生息しているので、鳴き声を聞いた経験がある人も多いのではないでしょうか。
体長は4.0〜4.7cmとそれほど大きくなく、細い体が特徴的なセミです。左右の羽に茶色の紋が二つずつあり、胸にはオレンジ・緑の模様が入っています。
セミの鳴き声から種類を考えてみよう
一生の大半を土の中で過ごすセミは、地上に出て10〜14日ほどで死んでしまうのが特徴です。短期間でメスと出会って卵を産ませる必要があるため、オスのセミは腹部の仕組みを使って大きな鳴き声を響かせます。
「ミーンミーン」と鳴くセミはミンミンゼミで、そのほかにも多くの種類が存在します。ミンミンゼミの鳴き声に混じって聞こえる「ジリジリジリ」「シャーシャー」といった音も、セミたちの鳴き声です。セミごとの鳴き声をチェックし、身近に生息するセミの種類を考えてみましょう。
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構成・文/HugKum編集部
参考:対象種詳細:環境省