「音ハラ」という言葉をご存知でしょうか?
「音ハラスメント」の略で、例えば静かな会議中や図書館で聞こえてくるボールペンの「カチッカチッ」というノック音。他人が聞いて不快に感じる音を立てることがこのように呼ばれています。
音ハラ対策の先駆け/ぺんてる「カルム」
2021年12月に発売になったぺんてるの「カルム(Calme)」は音ハラに強い意識を持った20代〜30代を中心にしたミレニアル世代に向けて、「自分も周りも“穏やかに心地よく”」をコンセプトに掲げた、静音油性ボールペンシリーズです。
ちなみに「カルム(Calme)」とはフランス語で穏やかな・静かなという意味です。
「使う人へも周りの人へもさりげなく気遣う」ボールペン
2021年夏に同社が実施した世代別音ハラスメント全国意識調査では全国1000名以上の男女に調査を行いました。そこでわかってきたのが、特に20〜30代が音に対して高い意識を持っていて、他人が立てる音により「不快な気分になる」だけでなく、自分がボールペンを使用するときの音に対して「周りに迷惑をかけていないか心配になる」という傾向が特に高いことがわかりました。
シリーズとして単色(黒・赤・青)、多機能ボールペン(ボールペン2色+シャープペンシル)、多色ボールペン(3色ボールペン)があります。単色ボールペンと多色・多機能ボールペンの静音を実現した仕組みは異なりますが、どちらもノックをしてみると従来の商品と比べて音がとても小さいことがわかります。
こだわりのカスタマイズ音
この製品のすごいところは「無音にすることもできたが、あえて音量をカスタマイズして残した」点です。この商品は不快な音を当社比66%低減しましたが、実は無音にすることも技術的には可能でした。しかし音がしないものを試用してみたときに「ボールペンをノックしたという実感が得られない」という違和感を訴える方が多かったのです。このことから、あえて心地よい音量になるようにカスタマイズをして作り上げたのです。
音に敏感なここでも使われています
音だけのメディアである「ラジオ」。ラジオの放送中には原稿をめくる時のペラペラという音すら立てないようにと気を使います。そのような環境であるラジオ局のスタジオ内に筆者がお招きいただいた時、スタジオ内のペン立てにはカルムが実際に採用されていました。
なめらかな書き心地のインキ
リフィルを改良を改良することでボテ(油性のボールペンインクに多い、インクが溜まって出てしまうもの)が軽減されました。また、このインキはなめらかな書き心地でありながら、手や紙が汚れにくくスッキリとした筆跡で書くことができます。
デザイン性の高さも
製品自体は2022年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
グリップ部分には高級カメラのグリップに使われることが多い「革シボ加工」が施されています。この高級感ある加工は写真の通り表面がボコボコした状態になり、握った時のに手に馴染む質感となっています。また、しっとりとしたマット調デザインで、生活に馴染む静かな佇まいのボールペンとして仕上げられています。
「無音」と名付けられたボールペン/「ミュートン」
音が小さいゲルインクボールペン
サンスター文具は2023年4月下旬より静音のゲルインクボールペンを発売しました。前述のカルムとは異なる機構でノック音を当社比33%カットしていますが、人や使い方によってはこちらの方が静かに聞こえるかもしれません。カチカチという音はほとんどなく、部品同士が擦れ合う音「スカッスカッ」と表現すれば良いのでしょうか? そんな音が聞こえるにとどまります。
服の胸ポケットや身の回りのものを汚さない
ミュートンは音が小さくなった以外にとても優しい機能が搭載されています。ボールペンのクリップを洋服の胸ポケットやノートの表紙などに引っ掛けて持ち歩く方は少なくないと思います。でも、たまにやってしまいませんか?
「ペン先を出したまま持ち歩いてしまった!」ということを。そのせいで胸ポケットにインクが染みてしまってシャツをダメにしてしまったり、ノートやカバンの中を汚して悲しい気持ちになりませんか?
それを防止するのがミュートンに搭載された「ノック解除忘れ防止機能」です。
ボールペンを使用するためにノックしてペン先が出ている間は、クリップが収納されて使えなくなるのです。もちろん、もう一度ノックしてペン先をしまえばクリップが外に出てきます。
この機能のおかげで誤ってペン先が出たまま胸ポケットや手帳に挿してしまう心配がなく安心です。
優しさが詰まった商品
軸もこだわりの3角軸(断面が三角)になっており、握りやすい仕様になっています。インクも現在定番となっているゲルインキを使ったボールペン。音が小さいだけでなく、小さな心遣いも持ち合わせたボールペンです。
周りへの気遣いから生まれた「静音ボールペン」は定番に!?
今回ご紹介したボールペンはノック時に聞こえる音の大きさ、雰囲気だけでなく、インクの種類も異なるため書き心地も違います。あなたの用途、お好みに合わせて快適な静音体験をしてみてください。
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文・構成/ ふじいなおみ