「チームラボ学ぶ!未来の遊園地」が大人気!担当者が語るアートで育む「共同的な創造性」とは?

アート集団・チームラボは、教育的要素もある作品にも力を入れているという噂を聞きつけ、豊洲の 「チームラボ プラネッツ」に行ってきました! 五感をフル活用して体験する作品は、子ども、そして現代アート初心者の大人も十分に楽しめます。その魅力をご紹介するとともにチームラボの担当者に、世界的に展開する教育的プロジェクト「未来の遊園地」に関する秘話を伺いました。

チームラボに教育的プロジェクトがあるって本当!? 担当者に聞く、誰かと共につくりあげることの大切さ。

チームラボは、2013年以降、「共創(共同的な創造性)」を育むことを目的としたチームラボ 学ぶ!未来の遊園地(以下、「未来の遊園地」)という教育的プロジェクトを世界的に展開しています。現在、日本では札幌芸術の森美術館やボートレース宮島などで展覧会を開催中。札幌展の来場者は10万人をすでに越えるなど、たくさんの来場者が来ているそう!そんなプロジェクトを牽引する、チームラボの松本明耐(まつもと あきたえ)さんに、お話を伺いました。

チームラボの松本明耐(まつもと あきたえ)さん

「未来の遊園地」作ったきっかけは台湾の美術館での原体験。

HugKum:「未来の遊園地」は、どのようなきっかけで誕生したのでしょうか?

松本さん:2001年に創業したチームラボの、美術館での初の大型個展は、台湾美術館での「We are the Future(藝術超未來)」でした。アートからプロダクトまで、19作品を展示しました。子ども向けの展覧会ではありませんでしたが、その美術館は週末になると子ども連れで賑わっていました。

展示した作品の一つに、同じ空間で大勢が同時に関わることができる作品があったのですが、そこに子どもが大勢集まり、みんなと一緒にわいわいアートを楽しんでいました。海外では、小さい頃から子どもをアートに触れさせて、好奇心を刺激したり、考えさせる体験をやっているんだと衝撃を受け、子どもたちの行くことができるアート展を日本でもつくりたいと思ったのがきっかけです。

日本にいると美術鑑賞は、静かにしなきゃいけない、走ってはいけないとか、ルールに従わなければいけないイメージが強いですが、台湾は違っていました。「もっと自由に楽しんでいいんだ!」と教えてもらいましたね。

チームラボ《裏返った世界の、巨大!つながるブロックのまち》©チームラボ

誰かと一緒にものづくりをすることの大切さ 共創しないとチームラボの作品自体も成立しない。

Hugkum:「未来の遊園地」のプロジェクトの作品にはどんな思いをこめていますか?

松本さん:チームラボの根幹には「みんなで一緒に何かを作るのは楽しいし、素晴らしい」という考え方があります。「未来の遊園地」においても、子どもが他の人々と同じ空間でアートに触れながら、共同的で創造的な体験をしてもらいたいと思っています。

チームラボ《世界とつながったお絵かき水族館》©チームラボ

HugKum:なぜ共創が大切なのでしょうか。

松本さん:基本的に、社会に出たらどんな職種であってもチームで仕事をすることがほとんどで、一人で何かを解決することは少ないと思っています。多様な人と一緒に仕事を進めていかなければなりません。チームラボの作品も、得意分野が違うそれぞれのスペシャリストが共にものを創っています。誰かの行動が互いに影響し合ってできているんです。

一方で学校では宿題や試験など個人で進めることが多く、チームで取り組むことは文化祭の出し物や部活が中心でしょうか。社会に出てからチームでものづくりをする経験は必ず役立つのに、教育現場ではその体験が少ない。そこに矛盾を感じました。

HugKum:チームラボの作品に、誰かの行動が他者に影響を与えていくものが多いのは、そういう理由なのですね。

松本さん:多様な人々とのものづくりは、教えられてできるようになるものではなく、実際に体験しながら学んでいくことだと思います。チームラボの展示をみただけで、共創できるようになるわけではありませんが、誰かと一緒につくりあげる体験って素敵だなと、気づくきっかけになれば嬉しいです。

チームラボ《こびとが住まうテーブル》©チームラボ

答えが一つではないことを楽しんでもらいたい。

Hugkum:我々「子ども×アート」チームは、アートに関してはどんな意見を言っても肯定されるところ、つまり、答えが一つではない点に注目しています。

松本さん:いろんな答えがある体験をすることは重要ですね。チームラボの作品も、その点を意識してつくっています。たとえば「お絵かき水族館」のなかで、精緻な魚を描いてもいいし、キャラクターを描いて目立つようにしてもいいし、真っ黒な極悪そうなものを描いてもいい。そこには正しい答えはなくて、いろんな答えがあります。

チームラボ《世界とつながったお絵かき水族館》©チームラボ
チームラボ《すべって育てる!フルーツ畑》©チームラボ

自己主張が苦手な子どもがいたっていい。

HugKum:日本の教育は、一つだけある正解を求める事が多く、堂々と多様な意見を言える場が少ないと感じています。海外の人ははっきりと自分の考えを言える人が多い印象です。どうしたら、子どもたちが自分の考えを堂々と言えるようになると思いますか?

松本さん:ここからはチームラボとしてではなく、僕個人の考えです。自己主張が得意な人はいいけど、苦手な人がいてもいいんじゃないかな。俺も空気読みたいですし、揉め事を起こしたくないですよ(笑)。今の時代、学校ではなにも言えなくても、帰ってからツイートしたり、描くのが好きなら「pixiv(ピクシブ)」で発信したり、学校以外で自分を表現できる場は増えていると思います。

もちろん基礎は必要ですから、学校のテストで求められるような暗記とか早く正確にというスキルも否定しません。それもありつつ、もう一方があったらいいですよね。文化祭のようにチームで課題に取り組む機会が増えて、いろんな個性の持ち主が活躍できる場がもっと増えたり、多様な答えを求められる場が増えたらいいと思います。

チームラボ《光のボールでオーケストラ》©チームラボ

多様な個性の育て方がある。

Hugkum:日本の子どもは諸外国に比べて自己肯定感がかなり低いそうです。それに対する危機感があります。

松本さん:いろんな理由があるのだと思いますが、例えばアメリカの自己肯定感が高くそれに比べて日本は低いから日本の子どもはだめだとか、そう単純な話ではないように思います。控えめを好む国民性もあるかもしれません。

たとえば、Google Mapの口コミの星も、国ごとに全く平均点が違いますよ。欧米は高くて日本は低い。アメリカ人にとっての星5と日本人にとっての星4が持つ意味に、大差ない可能性もあります。何をいいたいかというと、パーセンテージだけで単純に良し悪しを判断することはできないということです。

チームラボも新人はひたすら先輩の仕事をコピーすることから始まります。どの教育が良い、悪いという話ではなく多様なやり方があるのだと思います。

空間認識能力を育む「チームラボアスレチックス 運動の森」。

Hugkum:今後、チームラボによるキッズプロジェクトはどう展開していくのでしょうか。

松本さん:共創というコンセプトは引き続き大事にしつつ、「チームラボアスレチックス 運動の森」という、体を使って体験する作品にももっと力を入れていきたいです。「空間認識能力」、五感で情報を得て体で世界を理解する能力はとても重要です。昔は森が身近にあり、そこで遊んでいたから空間を認識する訓練が自然とできていました。

森はでこぼこで歩くだけで大変だし、蛇がいることもあったり、多くの情報を処理しなければいけません。しかし、平面的な都市で育つ子どもが増えた現代では、空間認識能力を育てるのは困難です。究極的には都会に森をつくればいいのですが、それは非現実的だから、都市の中で五感を使って体験する場所をつくろうと思いました。そういった作品も増やしていきますので、期待していてください。

「teamLab Athletics Forest / チームラボ 運動の森」

全国で体験できる「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」と「チームラボアスレチックス 運動の森」詳細

【東海エリア】

チームラボ 学ぶ!未来の遊園地と、花と共に生きる動物たち
・会場:金山南ビル美術館棟 (旧名古屋ボストン美術館)(愛知県名古屋市中区金山町1-1-1 金山南ビル内)
・会期:2023年 9月22日(金)-~12.03(日)
詳細はこちら

【九州エリア】

チームラボフォレスト 福岡 – SBI証券
・会場:BOSS E・ZO FUKUOKA(福岡県福岡市中央区地行浜2丁目2−6 BOSS E・ZO FUKUOKA 5F)
・会期:常設
詳細はこちら

【沖縄エリア】

チームラボ 学ぶ!未来の遊園地 沖縄
・会場:Tギャラリア 沖縄 by DFS(沖縄県那覇市おもろまち4丁目1)
・会期:2023年冬OPEN予定

こちらの記事では、旅行業界のアカデミー賞「ワールド・トラベル・アワード2023」で、今最もアジアをリードする名所に認定されたチームラボプラネッツ(東京・豊洲)の体験レポを紹介します。

【チームラボ プラネッツ】体験レポート!前代未聞の「没入」ができる理由は?子どもたちにも強烈な記憶に
没入型の体験型ミュージアム! 豊洲の「チームラボ プラネッツ」体験してきました! 2018年、豊洲にオープンした「チームラボ プラ...

企画協力/中川ちひろ

撮影/五十嵐美弥
取材・文/藤田麻希
構成/HugKum編集部

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