【秋の虫の鳴き声図鑑】虫の声は日本ならではの表現? 採集&飼育の注意点も紹介

秋が近づくと、多くの保育園・幼稚園・小学校などでは「虫のこえ」の歌・演奏を楽しみます。虫の鳴き声を「虫の声」と表現する背景には、日本の文化が関係しています。秋を代表する虫の特徴や採集の注意点もチェックし、親子で虫の声に耳を澄ませましょう。

「虫の声」は日本特有の表現なの?

「虫の声」という表現をする国は、日本だけなのでしょうか。欧米との違いも踏まえながら、日本における虫の鳴き声に対する感じ方を解説します。

虫の声から季節を感じる文化がある

「虫の声」は主に、虫を愛でる文化のある日本・中国で使われる表現です。太陽の動きから1年を捉える「二十四節気(にじゅうしせっき)」と同じく、虫の声から季節を感じる文化も古代中国から伝わったといわれています。

一方で、アメリカ・イギリスなどの欧米諸国では、虫の鳴き声を「雑音」と捉える傾向があります。同じ音にもかかわらず、感じ方が異なる理由は、虫の鳴き声を認知する部分にあるようです。

ミンミンゼミの鳴き声を「ミーンミーン」と表現するように、日本人は「言語脳」と呼ばれる左脳で虫の声を聞くといわれています。反対に西洋人は右脳で虫の声を聞くため、単なる音として認識するという説があるのです。

秋を代表する虫の声は?

鳴き声が特徴的な虫というと、セミを思い浮かべる人もいるかもしれません。ミンミンゼミ・ヒグラシ・ツクツクボウシといった夏に鳴くセミもまた、季節を感じられる「虫の声」の一つです。ここでは、童謡「虫のこえ」に登場する秋の虫をピックアップして紹介します。

マツムシ

マツムシ

「虫のこえ」の冒頭に登場するマツムシは、秋を代表する虫です。9月ごろの夜、草むら・河原・土手などで耳を澄ましていると「チッチリン、チッチリンチリン」「ピッピリリリ」というマツムシの甲高い声が聞こえるかもしれません。ススキが生えている場所で多く見られる傾向にあるため、近くにあるかを確認しておくとよいでしょう。

マツムシは体長が約18~33mmで茶色く、触覚・後ろ足が長い虫です。鳴くのはオスのマツムシで、夕方ごろから1匹が鳴くのにつられて鳴き始めるといわれています。メスのほうが全体的に細長いのが特徴です。

スズムシ

スズムシ

リーンリーン」と透き通った声で鳴くスズムシもまた、秋を感じさせるコオロギの仲間です。日本では8~10月ごろ、本州・四国・九州地方の生い茂った草の中に生息するといわれています。

オス・メスともに体長は約15~20mmと、それほど大きくありません。鳴くのはオスだけで、羽をハート型のように広げ、ふるわせて鳴くのが特徴です。オスはメスの興味を引くために鳴くので、メスを一緒に飼育することで美しいスズムシの声を楽しめるでしょう。

エンマコオロギ

エンマコオロギ

8~11月ごろの夜に鳴くエンマコオロギは、状況によって3種類の声を使い分けるといわれています。

●呼び鳴き
●さそい鳴き
●あらそい鳴き

コロコロ・コロ・コロ」と聞こえるのは、なわばりを守りつつメスを呼び寄せる「呼び鳴き」です。「コロコロ・リー・リー」という「さそい鳴き」からは、メスが近くにいることが分かります。オス同士がケンカをする際には「キリキリキリッ」という「あらそい鳴き」をするのが特徴です。

エンマコオロギは北海道の南部から九州まで、広いエリアで見られます。昼間は草の中や枯葉に隠れていることが多く、鳴くのはオスだけです。メスのエンマコオロギの方が全体的に大きく、尻部分にある三つの突起の中央が長く伸びています。

ウマオイ

ウマオイ

スイッチョン」「スイーッチョン」と鳴くウマオイの声は、主に秋の夜の、雑木林・草むら・公園などで聞こえます。鮮やかな緑色の体をしており、頭から背中にかけて茶色の線が入っているのが特徴です。

気性が荒くて肉食の虫のため、素手で捕まえるのはやめましょう。また、他の虫と同じケースで飼育すると、共食いされる恐れがある点にも要注意です。

バッタ目キリギリス科の虫ですが、昼に鳴くキリギリスとは対照的に、暗くなってからしか鳴きません。ウマオイ(漢字では「馬追」)の名称は、馬に人・ものをのせていた馬子(まご)が馬を追う際「シーッ」といってチョッチョッと舌を鳴らす様子に由来するといわれています。鳴くのはオスのウマオイです。尻部分の細長い「産卵管」の有無で見分けられます。

虫の声を聞きながら採集する際の注意点

虫の声から季節を感じる日本では、虫の飼育も一つの楽しみです。持ち物・服装などの注意点を確認し、親子で虫の採集に出かけてみてはいかがでしょうか。

網・飼育ケース・軍手・水筒などを持参

虫を捕まえに行く際には、以下のようなグッズを用意する必要があります。

●網
●飼育ケース
●軍手
●水筒

竿が長すぎると扱いにくいため、虫取り用の網を選ぶ際には、子どもの体格に合っているかの確認が大切です。親子・きょうだいで共用する場合は、長さが調節できるタイプが役立ちます。

捕まえた虫を入れる飼育ケースには、衝撃が伝わりにくいように、草・葉っぱなどを入れておくとよいでしょう。

特に秋の虫は草むらや枯葉の下に隠れているケースも多いので、軍手があると便利です。夏などの暑い季節に限らず、水筒を持参しておくと、こまめに水分補給ができます。

長袖・長ズボン・歩きやすい靴がおすすめ

虫は自然豊かな場所に生息するため、衣服が木の枝に引っかかるなどのトラブルも考えられます。長袖・長ズボンだと肌が見えにくく、虫刺されやケガのリスクを軽減できるでしょう。また、ハチなどの虫は黒を好む傾向にあるため、白・ベージュといった明るい色の服装がおすすめです。

草むらに生息する虫を捕まえに行く際は、歩きやすいスニーカーなどが適しています。雨が降った後などは地面がぬかるんでいる可能性もあるので、長ぐつを選ぶとよいでしょう。

採集・持ち帰りの可否を確かめておく

虫を捕まえに行く際には、事前に採集・持ち帰りの可否を確認しておくことが大切です。田畑をはじめとする個人が管理する私有地には、無断で立ち入るのはやめましょう。また「特別保護地域」が設けられた国立公園では、虫はもちろん、落ち葉・枝などを含めた全ての採取が規制されています。

それ以外の場所だとしても、飼育する環境が整っていない場合は、虫にストレスを与える恐れがあります。無理に持ち帰らず、採集した場所に戻すといった配慮も大切です。

虫の声から日本の季節を感じよう

虫の声から季節を感じる文化には、自然豊かな日本の風土が関係しています。鳴く虫のほとんどはオスで、主な目的はメスを呼び寄せて子孫を残すことです。そのため、鳴く虫を飼育する際は、オス・メスを同じケースに入れるのがおすすめです。

また、草原・森林などの減少とともに、鳴く虫を含む昆虫の数自体が少なくなっています。虫の声を楽しんだ後には元の場所に返し、大切な日本の自然を守りましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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