小学1年生を終えて感じるポルトガルでの教育、日本との違いは? STEM教育、IT教育、数の書き方の違いまで【パパ目線の海外子育て】

ポルトガル在住のパパライターによる海外子育て便りです。渡欧してから一年が経ち、現地で入学した小学1年生の一学年を振り返ります。日本とポルトガルの違いは、学校の授業内容だけでなく、小さなところは数字の書き方まで違うようで・・・。

海外で暮らしていると日々新しい発見があり、それと同時に同じくらいの苦労があるものです。息子がポルトガルの公立小学校に通うようになってから早1年弱。80日にもおよぶ長い夏休みに入り、ピカピカの1年生が終わりました。

ここでは、ポルトガルの小学校に息子が通いはじめてから1学年が終わるまでに起きたことをまとめます。「ポルトガルに移住したい」「子どもには海外の教育を受けさせてみたい」という方はぜひ参考にしてみてください。

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はじめまして。フリーライターの小林悠樹です。私は2022年春、ユーラシア大陸最西端の国「ポルトガル」に妻と当時5歳の息子と、家族3人で移住し...

小学1年生を終えての感想

7歳の息子は、2022年9月からポルトガルの現地の小学校に通いはじめました。1学年を終えるまで、さまざま出来事と変化がありました。まだまだ1年ほどしか経っていませんが、それでも我が家にとってこの1年はかけがえのない経験だったと思います。

息子がポルトガルの小学校での日々をスタートした当初、私たちは心配事でいっぱいでした。「彼は本当に小学校でうまくやっていけるのだろうか?」と不安が常に頭のなかをいったりきたりして、入学したてのころの日中は仕事が手につかないくらいでした。でも、1年も経つと息子は新たな環境に順応し、見違えるほど成長しました。

母の日のお手紙もポルトガル語で

ポルトガルの学校の様子

息子が通う学校は、自宅から車で5分ほどのところにあります。周囲は雑木林や畑に囲まれ、民家が数件ある程度。たまに馬車を引くロバを見かけるほど、牧歌的でのどかな雰囲気です。

通学は、ほぼ全員といってもいいほど車での送迎が一般的。門の前に先生が立っており、そこで子どもの引き渡しが行われます。セキュリティがしっかりとしている点は、親としてとても安心できました。

小学校は午前9時に始まり、午後3時半に終わります。授業はおもに国語(ポルトガル語)、算数、そしてEstudo de meioと呼ばれる総合的な科目です。その間には午前中の短い休み時間、給食、そのあとに長めの休み時間がとられます。

ポルトガル語の授業

1年生のポルトガル語の授業は、一つひとつのアルファベットの読み方や筆記体での書き方、その文字から始まる単語などから学びはじめます。ポルトガル語がわからない息子にとって、ちょうど義務教育の初学年からスタートできたというのはタイミングとしてはばっちりだったと思います。

学校にもよると思いますが、息子が通う小学校では、非ポルトガル語話者に対する特別なサポートは特にありません。基本的にはポルトガル人の生徒と同じように扱われます(ただ、授業中は先生がなにかと面倒をみてくれるようで、必要に応じてノートにわかりやすくメモ書きをしてくれたりはします)。

ポルトガル語の授業は、年度のなかごろになると、各アルファベットの学習が一通り終わり、徐々に短い文章を扱った授業が始まります。読解のような宿題をもらってきた日には、息子と一緒になんて書いてあるかをひいひい言いながら解読して、なんとか問題を解いていきました。

大好きなお友だちもできました

算数の授業

算数の授業は簡単な足し算・引き算、数の比較など、おおむね日本と同じですが、ところどころ学習内容に異なる点があるのは興味深かったです。

たとえば、ポルトガルでは数直線の概念をかなり早い段階から使います。数直線を通じて、数の大小や加減を学んでいました。

余談ですが、ポルトガルでは「7」の書き方が日本と違います。ポルトガルで7を書く場合は、点をつけないと「これはなんて読むのか?」と言われてしまいます(1と区別がつかないようです)。反対に、1はただの棒で書くのではなく、山をつけて書くのが決まりなようです。

左が「1」で、右が「7」

Estudo de meio

Estudo do Meioはポルトガルの小学校で行われる一般的な科目で、「環境の研究」などと直訳できます。この科目では、身の回りのテーマを題材に、社会科学や自然科学などを総合的に学びます。日本の小学校でいう、生活や道徳、総合の授業に近いイメージです。

子どもたちが自分たちの周りの世界について理解を深めることを目的としており、生活のなかで出会う事象や問題について考え、総合的な思考力を養成していきます。

コンピューターの授業

学期が始まって半年経ったころからは、コンピューターの授業も始まりました。パソコンは学校から支給され、コンピューターの授業は毎週木曜日と決まっています。

ubbuと呼ばれるオンラインのデジタルプラットフォーム内で行われ、タイピングやプログラミングのワークに取り組みます。最近流行りのSTEM教育は、ポルトガルでも人気。この授業は6~12歳まで続き、最終的には簡単なゲームやアプリをつくったりするレベルまでいくようです。

私(35歳)が日本の小学生だったころは、6年生のときに学校にパソコン教室が設置され、コンピューターの授業が始まったので、1年生から始まることに少し驚きました。しかも、パソコン以外にも、マイク付きヘッドフォンとモバイルWi-Fiルーターが配られます。国全体としてデジタル教育には前のめりの感じがして、個人的にはとても好感がもてました。

1学年を終えて感じた2つのこと

息子の小学校では、以上のような授業が1年を通じて行われました。1学年を終えて、親として感じることは大きく2つあります。

ひとつは、「教育の質の高さ」です。

私たちがポルトガルに移住する前は、私立の小学校を検討していました。しかし、ポルトガルに来てからその考えは一転。実際に現地校を自分たちの目で見ると、公立学校でも十分な環境が整っていると感じたのです。授業の内容や設備の質、学校職員の雰囲気などはどれも申し分なく、日本とそん色ないと感じています。

2つ目は「子どもの順応性の高さ」です。子どもの吸収力は大人が想像するよりもはるかに高く、今では日本語よりもポルトガル語がとっさに口から出てくる場面も少なくありません。すでにポルトガル語を一番うまく話せるのは息子になっています。

日本語の勉強はドラえもんの漫画で

おそらく子どもの年齢が低ければ低いほど順応性は高く、言語の習得や環境への適応に関していえば、幼少期に海外に出たほうが何かとスムーズです。もし海外移住や海外での教育に興味があるのであれば、「かわいい子には旅をさせよ」の精神で思い切って挑戦してみてはいかがでしょうか。

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記事執筆

小林悠樹(こばやしゆうき)| フリーランスライター・編集者 
神奈川県藤沢市生まれ。2016年に家族3人で宮古島へ移住し、2022年4月にポルトガルへ渡航。著書に『移住にまつわる30の質問「地方、田舎に住みたい」そんなあなたの疑問解消します。(Kindle版) 」がある。http://yuki-kobayashi.com/profile/

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