漢字が苦手な子は「読み」の優先学習が効果あり。漢字ドリルを毎日1冊音読してみてください
――漢字を読めるようになるけれど、なかなか書けるようにならないという子どもは多いですよね。
漢字が苦手な子にとって、新しく学ぶ漢字は「書ける」はおろか、「読める」という段階にすらなく、「見慣れ」てもいません。ですから、漢字を覚える際は、読みと書きをいったん区別して考え、漢字が苦手な子ほど、特に「読み」を優先して学習していくようにしましょう。
――いきなり「読み」と「書き」の両方を習得するのではなく、「読み」を優先して学習するのですね。これなら無理なく漢字を覚えていけそうですね。では、漢字の「読み」を習得するおすすめの学習法はありますか?
おそらくほとんどの学校で配られる「漢字ドリル」を活用します。さて、漢字ドリルは、「書くもの」という印象を強くおもちなのではないでしょうか。私自身も以前は、漢字ドリルは「書かせるもの」という固定観念をもっていました。
しかし、漢字ドリルには、漢字の音訓だけでなく用例や例文まで載っていますので、これらを音読することで、漢字を見慣れ、読めるようになっていきます。
おすすめなのは、「漢字ドリルを毎日1冊音読する」ことです。音読する際は、上図のように、漢字の音訓を第一優先に、余裕があれば熟語などの用例、次に例文、というステップで音読するようにしましょう。
初めから、すべてを音読しようとすると、疲れて1冊まるごと音読するのが難しくなります。初めのうちは音訓だけでも十分です。音訓だけであれば、1冊1~2分くらいで終わります。これなら毎日無理なく続けられると思います。
「漢字ドリル」を効果的に活用する方法
――「読み」を習得したあと、次は「書き」の学習ですね。
漢字ドリルは、いきなりマスを埋めるだけではなく、「なぞり」を重視して取り組みます。漢字ドリルでは、新しく学習する漢字が大きく示されています。それを指や鉛筆で書き順どおりになぞるようにします。その際に、書き順を意識して体に染み込むように取り組むことが大切です。
なぞる回数は、漢字の複雑さやお子さんの覚えの早さなどにもよりますが、10回はなぞってから、マスを埋める学習に入るようにするとよいでしょう。
同じ漢字を連続して書くのはNG。毎回違う字を書くことで「忘れる」→「思い出す」というサイクルを作る
――練習ノートを使って学習する際の注意点はありますか?
漢字練習と言うと、練習ノートに縦に同じ字を連続で書いていくことをイメージされるのではないでしょうか。かく言う私も、ずっと子どもたちにそのように練習させていました。
この方法が、まったく効果がないとは言いません。しかし、縦に同じ字を何度も書かせると、ただマスを埋めるためだけに書いてしまって、作業的になったり雑になったりします。こんな書き方をしていては、書き順が体に染み込まないので、漢字を覚えられません。
そこで、私は漢字練習を下図のように横に書き進めていくことをおすすめしています。
あらかじめ、その日に練習する漢字をノートの上のほうに書き出しておき、その下に漢字を練習するスペースを確保します。そして、縦に同じ字を連続して書くのではなく、横に書き進め、毎回違う字を書いていくようにするのです。
これにより、毎回違う字を書くことになるので、「忘れる」→「思い出す」というサイクルを毎回組み込むことができます。結果的に「想起」することが増え、記憶を強化することができるのです。
縦ではなく横に書く、というのは書く方向が重要なのではありません。同じ字を連続して書くのではなく、毎回違う字を書くことが大切なのです。そのほうが記憶が強化されるからです。また、毎回違う字を書くので気持ちがリフレッシュされ、雑になりにくいというメリットもありますよ。
漢字は学力の根幹!土居先生の漢字学習メソッドで漢字力を伸ばそう
宿題としてほぼ毎日のように学習しているにもかかわらず、定着率が低く、学年が進むにつれて漢字嫌いになる子が多い漢字の学習。
本書は、今までの漢字学習の問題点を説き明かしながら、漢字嫌いの子どもも、宿題の漢字ドリルや練習ノートを使いながら漢字力を楽しく確実に身に付けられる、とっておきの方法を紹介します。子どもの漢字学習に悩んでいる先生方や保護者の方にぜひお薦めしたい1冊です。
著/土居正博 小学館 1650円(税込)
教えてくれたのは
構成/長 昌之 イラスト/霜田あゆ美 写真/繁延あづさ