「マジ」は「まじめ」の略
「マジ、やばい」などと言うときの「マジ」ですが、実は江戸時代からあった語だということをご存じでしょうか?
「マジ」は通常「まじめ」の略だと考えられていますが、「まじめ」も「マジ」も使われ始めたのは、同じ江戸時代からのようなのです。
『日本国語大辞典 第2版』には、江戸時代の「まじ」の使用例が引用されています。『にゃんの事だ』(1781年刊)という洒落本(しゃれぼん)のものです。
「気の毒そふなかほ付にてまじになり」
と使われています。意味は「まじめ」と同じです。
洒落本は主に江戸の遊里の内部や、遊女、客の言動を、会話を主体に描いた小説です。
『にゃんの事だ』なんて、ネコ本か?と思ってしまいそうですが、残念ながらそうではありません。この小説は、江戸本所の一つ目弁天前にあった岡場所(非公認の遊里)を舞台にしています。この岡場所は猫茶屋とも呼ばれ、そこの遊女はネコと称していたために「にゃん」なのです。でも、江戸時代にもネコは「にゃん」だったのですね。
「まじめ」の省略形が「マジ」
「マジ」のもとになったと言われている「まじめ」ですが、語源はよくわかっていません。「まじめ」も「マジ」も江戸時代から使われていた語ですので、「まじめ」が生まれて比較的早い時期にその省略形の「マジ」が使われるようになったと考えられています。でも、語源は不明ですが、もともと「マジ」という語があり、それに「細め」「控えめ」などと同じ、度合い、加減、性質、傾向の意味を添える接尾語「め」がついて、「まじめ」になったという可能性も考えられます。
現在使われている「マジ」は、江戸時代の用法とはいささか異なるため、それが継続的に使われたとは言えないかもしれません。でも、根っこの部分は同じだと考えてもよさそうです。
江戸時代のことばって、けっこう身近なところに存在しているのです