「ほめる子育て」は「叱る子育て」と同じ? 折れない心=自己肯定感をのばす具体的な言葉かけとは

最近話題にのぼることが多い「自己肯定感」。子どもの自己肯定感をのばすには、親からの「言葉かけ」に秘密がありました。子どもが人生を生き抜き、周囲の人と交流していく力を持つには、どのような時にどのような言葉をかけていくといいのでしょうか。

そもそも自己肯定感って?

自分のことが好き、自分は自分だから大丈夫だと思える心の状態を言います。

「自己肯定感が高い」と聞くと「自信満々な人」をイメージするかもしれませんが、そうではありません。自分の長所はもちろん、足りないところや欠点を隠したり、卑下したりすることなく「これが私なんだ」とありのままを認められるのが、自己肯定感の高い人です。

自己肯定感がのびると生きる力が育ちます

子どもの自己肯定感をのばすことが将来役に立つものだと、意識を向けるおうちの方が増えてきました。何歳からでも自己肯定感を高めることは可能ですが、2~4歳児世代から育むことで効果が出やすいと言われています。

自己肯定感が育つことによって発揮される3つの力があります。それは「新しいことに挑戦する力」「壁を乗り越える力」「相手を思いやる力」です。

この3つは生きる力そのものであり、土台としてしっかり育つことで、将来誰かの言いなりになったり、依存したりすることなく、どんな場面でも自分で考えて行動できるようになります。まさに「自分の人生を歩んでいける」人物に育っていくのです。

家庭での「言葉かけ」が自己肯定感を育てるもとに

子どもの自己肯定感を育てるために、家庭やおうちの方の役割はとても大きいです。といっても何か特別なことをする必要はありません。日々子どもにかけている「言葉」を少し変えていくだけでいいのです。

親が子どもにかける言葉の多くは「早くしなさい」「あれをやりなさい」など指示の言葉、「こぼさないで」「そんなところに上らないで」など禁止の言葉の2種類だと言われます。どちらも親の希望を伝えるだけで、子どもも「うん」か「イヤ」としか答えられません。

そのような一方通行のやりとりではなく、子どもから言葉を引き出す言葉かけで、親子の会話を重ねていくと、自分で考えて行動する力が育まれていきます。

自己肯定感が育つとこんな力がのびる!!

①新しいことに挑戦する力

新しいことを始める時は「うまくいかなかったらどうしよう」と失敗を恐れて尻込みすることもあります。自己肯定感が育っていると「失敗しても自分は自分!」と自信を持つことができるので、新しい環境や場所、仲間の中にも飛び込み、挑戦することができるのです。

②壁を乗り越える力

何かを続けていると、時として壁にぶつかることもあるはずです。そんな時に「もうやめる!」「私にはできない」と早々にあきらめてしまうのではなく、自己肯定感によって「私ならできる!」と信じて、努力を続けることができます。

③相手の気持ちを思いやる力

思いやりは生きていくうえで最も大切な力かもしれません。人は自分の思いや考えを「これでいいんだ」と認めることができてはじめて、まわりの人たちの思いや考えも尊重し、認めることができるのです。相手の立場に立って相手の気持ちを想像し、それを認めるには、自分を肯定する気持ちが根底になければできません。

自己肯定感を育む子どもの「認め方」

自己肯定感を育むためには、子どもを「認める」言葉かけを繰り返すことが重要です。言葉で子どもを「認める」とはどういうことかその流れをご紹介します。

「ほめる」「叱る」ではなく行動をそのまま受け止めて

子どもの自己肯定感を育てるために、おうちの方にお願いしたいのは、親の言うことを聞くように求めるのではなく、子どもが自分で考えて行ったことをそのまま「認める」ことです。

ここで重要なのは、「認める」ことと「上手だね」「すごいね」とほめることを混同しないことです。たくさんほめられた子どもは自分の得意なことにどんどん挑戦するかと思いきや、「こうするとほめてもらえるかな?」と親の反応をうかがいながら行動するようになります。実は、これは「叱られて親の言うことを聞く」のと同じことなのです。

親にとって望ましい行動であってもなくても「大きな声が出るね」「走るの楽しいね」と、子どもの行動や思いをそのまま言語化するのが「認める」言葉かけになります。親から認められる経験が重なることで子どもの心が育ち、さまざまな困難や、自分とは異なる考えも受け入れられるようになるのです。

「認める」言葉かけ こんな時はどうする?

Q.命に危険が及ぶような行動をしている場合も、まず認める言葉かけが必要ですか?

A.認める前に「ダメ!」と言っていい場合が2つあります。

①子ども自身の命や心②相手の命や心を傷つける恐れのある行動  は、迷わず「ダメ!」と言って止めましょう。ボールを追いかけて道路に飛び出しそうな時など、今にも命にかかわる場合はすぐに止めます。

この2つ以外の時は、親にとって嫌なことだとしても、まずは認める言葉をかけましょう。いつも認めてくれるママとパパがダメと言った時に、本当のダメが子どもに伝わります。

Q.電車やレストランで騒いでしまう子を認めると、まわりにひんしゅくを買いそうです。

A.最初に「認める」ことで親の話に耳を傾けやすくなります。

公共の場で走り回ったり、大きな声で騒いだりしていると、まず「やめなさい!」と注意したくなりますが、いきなり注意から入ると、否定されたという気持ちだけが残り、その後に「電車の中だから騒がないよ」と説明しても耳に入りません。

おうちの方が周囲に配慮する気持ちもよくわかりますが、上のステップに沿って、子どもの気持ちを認めた後におうちの方が謝ることで、その思いは伝わるのではないでしょうか。

【シチュエーション別】言葉かけ集

めばえっ子の日常では、どんな言葉かけをすると「認める」ことになるのでしょう。よくあるシチュエーション別に言葉かけの例をご紹介します。

自分でできることを「やって」と甘えてくる

「じゃあ今日はお手伝いするね。」

子どもが「やって」と言うなら、まずその気持ちを認めます。頭と腕を出す位置を間違えないようにTシャツを持つなどのさりげないサポートをしましょう。腕を出せたら「間違えずに腕を出せたね!」と言葉かけを。

自分の作品を「見て見て」とアピールしてくる

「ロボットの足、すごく工夫して作ってるね。」

親の目から見て、気づいた工夫や努力を伝えるとともに、子ども自身から「ここをこうしたんだよ」などの言葉を引き出せると、さらに親子の会話が広がります。「ほかに工夫したことある?」と質問しても。

子どもがおもしろい遊びをしている。

「そんなこと思いついたの!おもしろいね」

子どもの個性や才能を感じ、それをもっとのばしたい時も「上手だね」などほめる言葉かけではなく「工夫してるね」など、あくまで子どもの行動にフォーカスした言葉かけに。

寝る時間なのに切り替えがうまくいかない

「すごく楽しそうだね~。」

「寝る時間よ」と指示する前に、まずはいま子どもが夢中になっている世界に入り、「楽しいね」と一緒に遊んだ後「その遊びの続きをお布団の中でするのはどう?」と子どもが自分から布団に入りたくなる会話をしましょう。

失敗してくやしがっている

「気持ちがモヤモヤしちゃうよね。」

「何がくやしいの?」「どうして泣くの?」と理由を聞き出す問いかけは気持ちを否定されていると感じることも。ありのままの状態を受け止めてもらうことで、次第に気持ちを言葉にできるようになります。

がんばって結果が出た時

「毎日おうちで練習したもんね!」

「1位なんてすごい」と結果をほめるのは誰でもできますが、結果に向けて努力したことを知っているのは身近にいた親だけ。過程を認めることが、さらなる努力につながります。

親も自分の子育てを認めましょう

わが子のいいところをたくさん探してください

子どもの自己肯定感をのばすためのお話をしていると「親の自己肯定感が低いのに、子どもの自己肯定感をのばせるのでしょうか?」という悩みを聞くことが多いです。

でも「自己肯定感が低い」と自分の弱い部分を認めている時点で、自己肯定感は育っていますので大丈夫です。それに、どんな親でも、子どもは親を100%愛して認めてくれる存在です。子育てを通じて、親の自己肯定感もどんどん高まるはずです。

時には自分の子どもとほかの子どもを比べて「うちの子はほかの子より劣っている。私の子育てはダメだ」と感じるかもしれません。比較することが悪いとは限りませんが、その点だけに固執してしまうと悪いところばかりに目がいきがちです。どうぞ、わが子のいいところ、この子にしかできないことに目を向けて、自分の子育てとわが子を認めてくださいね。

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教えてくれたのは

天野ひかり先生
NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事。フリーアナウンサー。親子コミュニケーションアドバイザーとして講演やセミナー講師を務める。『子どもを伸ばす言葉 実は否定している言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

『めばえ』2023年9月号
イラスト/ 三角亜紀子 文/古川はる香 構成/KANADEL

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

再構成/HugKum編集部

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