知ってる?「不倫」「不貞」「浮気」の違い【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

 

不倫・不貞・浮気 この3つ何がどう違うの?

この3つの語は、しばしば芸能人などのそれがインターネットやテレビ、雑誌などで話題にされながら、実際にはどう意味が違うのか、意外と知られていないのではないでしょうか。

「不倫」は文化と言ってはばからなかった芸能人がいましたが、この3語の中でマスコミがよく使う語は「不倫」でしょう。「倫」は、人の守り修めるべき道という意味で、「不倫」は不道徳であることをいいます。

不道徳ですから、男女関係に限ったことばかりではないのですが、いつの頃からか人の道にそむくような男女関係をいうようになりました。その意味で使われるようになったのはいつなのかわかりませんが、今では男女関係以外で使うことは稀でしょう。

法律では使われない「不倫」

「不貞」は法律で使われる語です。法律用語とは言えませんが、「不倫」は法律では使われていません。民法では、第770条で「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる」とし、1項1号で「配偶者に不貞な行為があったとき」としています。

実は、「貞」という漢字は「女性がみさおを守ること」という意味が本来のものですが、法律では「配偶者」とあるように女性に限りません。ただ、本来の意味を考えてしまうと、法律で「不貞」を使うのは少しばかり抵抗があります。

男女間の「浮気」は行為としては「不倫」「不貞」と同じ

「浮気」は、配偶者・婚約者などがありながら、別の人と関係をもつこと、気まぐれに異性から異性へと心を移すことです。「浮気な性分でいろいろなことに手を出す」のようにも使いますので軽い印象のある語ですが、男女間の「浮気」は行為としては「不倫」「不貞」と同じです。

なお、似た意味の語にもう一つ「姦通」があります。男女が道徳や法に反して情を通じることで、日本の旧憲法下ではこちらの語が使われていました。特に夫のある女性が、他の男性と情を通じることを「姦通罪」と言っていたのです。夫婦平等の観点からすればとんでもない法律で、第二次世界大戦後削除され、「姦通」という語は法律から無くなりました。

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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