子どもの育ちで大事なのは安全と健康
私が子育ての最終的な目標としていたことは、子どもが大人になって子ども時代を振り返ったとき、「実家で家族と暮らした日々は楽しかったなあ」と思ってもらうことです。そのためには子どもが笑顔でいられること、子育てしている私自身も楽しむことを目指してきました。もちろん、現実は理想とは違う場面も多いとは思いますが、深く悩まずに「明日には明日の風が吹くでしょう」ぐらいのラクな気持ちで子育てしていけばいいと思います。
あれもこれも…と考えず、大事なことだけを優先させて取り組んでいったらいいと思います。
私が幼児期に力を入れていたことは、「命と健康」です。子どもの安全を考え健康に留意してきました。ここでは、子どものリスク管理と、歯の健康についてお話します。
“気をつける”には限界があるから“気をつけなくてもいい状態にする”
子どもは特に幼少期には少しだけでも目を離すと命にかかわる事態になりかねません。そこで子どもの行動範囲で危険なものは極力取り除くようにしました。
わが家の子どもたちは、長男と次男が年子で、三男が次男の2年後に生まれ、さらに長女がその3歳下と4人のきょうだいの年齢は近かったのです。長女が生まれたときにはまだ長男が小学校に入学したばかりという、家の中で乳幼児4人がひしめき合う状態が続いた時期が続きました。一人ひとりに目が届かない状態で、私がしたことは以下のようなことです。
ケーキはスプーンで食べる
先が尖っているフォークは家の中を手で持って歩いていて転ぶとケガをします。そこでケーキを食べるときはスプーンで食べさせていました。ケーキは柔らかいのでフォークでなくても大丈夫です。
パーカーの紐はとりのぞく
新聞で子どもが遊具で遊んでいてパーカーについているひもが絡んで事故になったと知り、すぐにすべての子どものパーカーのひもを抜き取りました。パジャマにもサイズを調整するひもがついていたのでそれも全部取りました。
湯沸かしポット、片手鍋、ドラム式洗濯機は使わない
やけどの原因になる湯沸かしポット、片手鍋も危険なので撤去しました。ドラム式洗濯機の危険性も読んだことがあるので使っていません。
節分の豆まきは家の中にまかない
節分は「鬼は外福は内」と家の中と外に豆をまきますが、家の中にまくと掃除をしたとしても、ソファの後ろなどに掃除しきれない豆が潜んでいるものです。ずっと後になって子どもが見つけて口に入れて詰まらせる危険性を予測して、豆は家の中にはまきませんでした。
「注意していれば大丈夫」と思いがちですが、“気をつける”には限界があります。一瞬のスキをついて事故は起きるので、それを防ぐには“気をつけなくてもいい状態”にしておくのが一番です。
学歴の有効期限は35歳。でも歯の健康は一生もの
もうひとつ、私が力を入れていたのが歯の健康です。
高学歴と言われる学歴を獲得しても、その有効期限はせいぜい35歳ぐらいまでと私は思っています。そこから先は社会に出てからの経験や実績がモノを言うからです。
でも、歯は一生使います。歯が丈夫だと美味しく食べられ、楽しくおしゃべりできます。最近、歯周病が心臓病の原因になったり、咀嚼すると脳の若さが保たれるなど歯が体全体の健康に関与していることが言われています。
子どものころ、週刊誌の記事で歯の大切さについて知った私は子どもの歯が生え始めたときからケアを怠りませんでした。
乳児から欠かさなかった歯科検診
最初に歯科医院に行ったのは長男が生まれて6~9か月たったころです。下の歯が2本生えたのを見て、診てもらいました。歯医者さんは生後間もない乳児を連れてきた母親は始めてだったようで驚き、「これぐらいだったらガーゼで歯をぬぐうぐらいで大丈夫ですよ」とおっしゃいましたが、私は「いえ、私が見逃しているところがあるかもしれないので診てください」と言って診ていただきました。
以来、子どもたちは4人全員、1人で上手に磨けるようになるまで毎日私がブラッシングを手伝い、1年に4回、定期健診に通っていました。4人を引き連れて歯医者さんに行くのですが、歯医者さんを嫌がる子はいませんでした。それはあくまで歯科医院に行くのは検診であって、歯科医院を虫歯になって歯を削るなどで痛いことをされる場所と認識していないからです。
また、歯医者さんの帰りにはいつもハンバーガー店でハンバーガーを食べると決めていたので、子どもたちは歯科検診を楽しみにしていました。中高生になってからは夏季休暇などの長期の休みに私が予約して1人で行くような習慣をつけました。
勉強は子どもの成果、歯の健康は親の成果
現在、子どもたちは虫歯は1本もありませんし、夜、歯磨きした後には食べ物を食べない習慣が身についています。たまに夫が夜、お土産に甘いものを持って帰ってきても歯磨きした後だったら食べようとしませんでした。
健康を維持するためには食事など生活に気をつけることが大事ですが、それでも内臓疾患や脳疾患の予防は自分ではなかなかできません。しかし、歯だけは自分で手入れすれば一生健康に保つことができます。そして幼少期に歯を健康に保つのは保護者の仕事だと思います。
勉強の成果は子どもたちのがんばりの賜物ですが、子どもたちの歯が今も虫歯1本もないのは私が子どもに貢献できたことだと自負しています。
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教えてくれたのは
大分県生まれ。津田塾大学英文科卒業後、高校で英語教師に。結婚後、3男1女を育て、全員が東京大学理科Ⅲ類から医学部医学科を卒業する。母親ならではのきめ細かい学習サポート法が注目されている。進学塾「浜学園」でアドバイザーとして活動するほか、様々なメディアで発信している。著書に『3男1女東大理Ⅲ合格百発百中 算数 国語 絶対やるべき勉強法』『3男1女全員東大卒医師に!一点集中ムダ取り勉強法』(幻冬舎)などがある。
構成/今津朋子 写真/岡本尚樹(佐藤さん)