-
フェルミ推定ってどんなもの?
円柱型の貯金箱1つと1円玉1つを手渡され、「この貯金箱の中に1円玉が何枚入るか計算してみよう!答えはざっくりでOK!!」という問題を出されたら、あなたはどんなアプローチで答えを導き出しますか?
例えば、
1円玉1つが1gで、水1mlが1g
1円玉のほうが比重が重いということを知っている人は、
入る水の量=重さ
から計算できそうです。
また、円柱の体積の求め方を知っている人は、
貯金箱と1円玉の大きさを計って計算する
こともできそうです。さらに、両方のアプローチで計算してみて、それぞれの答えが近ければ、それは限りなく正解に近いと言えそうですよね。
このように、経験や体験、知っていることを活用しながら、見通しを立て、細かい正確さにはあまりこだわらず、でも、できるだけ説得力のある答えを目指す。これがフェルミ推定です。
-
フェルミ推定で養われる論理的思考力が、子どもの生きる力に
そんなフェルミ推定に、子どもの頃から触れてもらいたいと、『論理的思考力が育つ 10歳からのおもしろ!フェルミ推定』(くもん出版)を上梓した横山明日希さん。
小学生がフェルミ推定で楽しく解ける問題例
◆ 1日に日本のみんながするうんこの数、合わせて何個?
◆ 1冊のノートに、好きなコの名前は何個書ける?
◆ プールにタピオカミルクティMサイズは何杯入る?
◆ トイレの花子さんは日本に何人いる?
こんな、子ども心をくすぐる問題20問にチャレンジしながら、フェルミ推定に親しんでいく1冊で、四則演算ができるようになった10歳くらいの子どもから大人までが楽しめる内容になっています。
日頃から、算数・数学の面白さや楽しさを届ける活動を幅広く行っている横山さん。フェルミ推定は、子どもに、算数に興味を持ってもらったり親しんでもらうのにうってつけの問題だと話します。
「フェルミ推定は、日常の一コマを大雑把に切り取ったリアルな問題。算数の教科書に載っている正解のある問題とは違って、答えがない、または誰も答えを知りません。自分で考え、自分の答えを出せばいいから面白いのです」
さらにこのフェルミ推定は、本のタイトルにもあるように、論理的思考力を養うのにも最適だと横山さん。
「軸にあるのは算数ですが、社会や理科の知識、日々の生活の中で得た体験や雑学などを、自分なりに組み合わせ、自分の中で結論づけて前に進んでいくのがフェルミ推定です。こうしたプロセスを繰り返すうちに、物事を論理的に考える力が身についていくと思います」
実際、近年では、こうしたフェルミ推定を、論理的思考力を見極める方法として、採用試験に用いる企業が増えているのだそう。
「答えのない、変化の激しい時代や社会を生き抜くには、周りからの情報を基に、自分で判断し、意思決定して、行動していかなければなりません。
フェルミ推定は、そういうところにつながる経験であると思いますし、だからこそ、企業の採用試験でも使われているのだと思います。存在として知っていることで、多少は、人生が豊かになるのではないかと思っています」
-
日常の親子の雑談の中で、フェルミ推定を楽しもう!
フェルミ推定は、学校で取り立てて習うことはありません。将来のために子どもに触れさせるには、親のアプローチが必要です。ただ、「算数や数学は苦手…」という人にとってはちょっとしたハードル。どのように向き合ったらいいか、横山さんに聞いてみました。
「日常の親子の雑談の中に、フェルミ推定を盛り込んでもらうといいと思います。例えばテレビを見ながら、
『この芸能人のことを知っている人は日本に何人くらいいると思う?』
など。
そういう問題なら堅苦しくなく盛り上がれると思いますし、子どもにも無理なくフェルミ推定が入っていくのではないでしょうか。
フェルミ推定の良いところは答えがないところ。だからざっくりでいい。親として、子どもには正しいことを言わなきゃいけないとか、教える立場と教わる立場の関係を崩しちゃいけないなどと考えず、お互い答えが分からないという横の立場、関係性で、一緒に問題に取り組んでいただければいいのです。そう思えば、少しは気が楽になるのではないでしょうか。ちなみにこれは、私が、算数・数学の面白さや楽しさを届けるという活動を行う上で、日頃から意識していることでもあります」
そうして、日常の中で遊びのように、繰り返しフェルミ推定に触れていくと、子どもは自然に、自らフェルミ推定を楽しむようになると横山さん。
「フェルミ推定を、子どもにいかに身近なものとして感じてもらえるかがポイントです。正解もないから間違いもない。大事なのは最後まであきらめずに挑戦してみること。そんな風に、自由な捉え方でフェルミ推定と向き合うことで、ひいては、算数全体をも楽しめるようになると思います」
価格:1,320円(税込)
著:横山明日希、文:こざきゆう、絵:柏原昇店
発行:くもん出版
お話を伺ったのは…
math channel代表取締役/数学の楽しさを伝える数学のお兄さん。早稲田大学大学院数学応用数理専攻修了。「体験」を通した学びや、数学×恋愛、数学×お笑い等、数学と異分野を掛けあわせた独自の切り口で、より算数・数学を身近にする授業、講演等を実施。日本お笑い数学協会副会長も兼務。公益財団法人日本数学検定協会認定資格幼児さんすうシニアインストラクター
取材・文/鈴木友紀 写真/五十嵐美弥