1月の別名「睦月」以外にどれだけ知ってる?それぞれの呼称の意味・由来をチェック【日本語の雅を味わう】

1月の別名にはさまざまなものがあり、意味や由来もわずかに異なります。なぜ多くの別名があるのか、疑問を感じる人もいるでしょう。1月の別名を知ると、日本古来の文化をより深く理解できます。古典に親しむ際にも役立つ、主な別名を紹介します。

1月の一般的な別名「睦月」

1月の別名といえば「睦月」をイメージする人も多いでしょう。カレンダーなどに採用されていることも少なくありません。睦月の意味や由来を解説します。

旧暦で使われた和風月名

睦月は、旧暦で使われていた「和風月名」として知られます。日本では1873(明治6)年まで、「太陰太陽暦」を使用していました。現在の「太陽暦」に対し、それまで使っていた太陰太陽暦を一般的に旧暦といいます。

旧暦では月名を数字ではなく、和風の呼び名で表しており、1月は睦月と呼ばれていました。また旧暦と現代の暦との間には、1~2カ月ほどのずれがあります。現代の感覚では、1月はまだまだ冬ですが、旧暦では春に該当します。

なお、昔は新月の日を月の始まりとし、次の新月が来ると新しい月の1日と数えていました。新月から新月までの期間は、約29.5日です。そのまま使用すると季節がずれてしまうので「うるう月」を入れて調整したようです。

出典:「旧暦」ってなに? | 国立天文台(NAOJ)

睦月の由来

1月が睦月となった由来にはいくつかあり、明確には分かっていません。正月に身内が集まって過ごすことから、親しくするという意味の「睦ぶ(むつぶ)」が使われるようになったとする説が一般的です。

また、春に多くの生命が生まれるので「生月(うむつき)」、樹木が芽を出すという意味の「萌月(もゆつき)」がなまって「むつき」になり、睦月の漢字が当てられたという説もあります。

睦月以外の1月の別名

1月の別名は、睦月以外にも多くあります。代表的な別名と、意味や由来について見ていきましょう。

春にちなんだ別名

現代では1月というとまだまだ寒く、春の気配を感じられない日が多いかもしれません。しかし旧暦では1~3月が春に当たるので、1月の別名にも以下のように、春にちなんだものが多く見られます。

新春(しんしゅん)
初春月(はつはるづき)
孟春(もうしゅん)
王春(おうしゅん)

孟春の「孟」には物事の始めという意味があり、新春や初春月とともに、1月が春の始まりの月であることが由来です。王春(おうしゅん)は、中国の学者・孔子が中華統一の思想をまとめる際に「春、王の正月」と表現したことが由来とされています。

最初であることに由来する別名

1月は一年の最初の月なので、年の初めを意味する別名も多く存在します。最初であることに由来する別名は以下の通りです。

太郎月(たろうづき)
初月(しょげつ)
元月(もとつき・げんげつ)
年端月(としはづき)

太郎には長男という意味もあり、物事の最初という意味で、1月を指す言葉になったとされています。年端月の「端」には、物事の始まりやきっかけという意味があります。

自然に由来する別名

1月の別名には、以下の通り空や植物など、自然に由来するものも少なくありません。

早緑月(さみどりつき)
初空月(はつぞらづき)
初陽(しょよう)

早緑月には、だんだんと草木が芽吹き始めるという意味があります。新しい年になって初めて空が見える月を意味する初空月も、自然に由来する別名といってよいでしょう。

初陽は日の出や朝日を指しますが、昔から初日の出はめでたくありがたいものという考えがあり、1月の別名としても使われました。

1月の別名の使い方

1月の別名を知ると教養が深まり、手紙を書くときや俳句・和歌などに親しむ場合にも役立ちます。1月の別名の使い方を見ていきましょう。

手紙に使う場合

1月の別名は、年賀状や新年に出す手紙などに使えます。新春・初春などは、1月上旬~中旬ごろまでの時候のあいさつによく用いられる言葉です。

時候のあいさつは、改まった手紙や招待状などに使用するもので、目上の人への手紙にも使える表現です。「初春の候 貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます」などの書き出しで始まる手紙を、見たことがある人もいるでしょう。

ただし1月15日ごろまでを正月の期間とする地域が多く、それ以降に使うと季節外れな表現になってしまいます。1月中旬以降は「寒冷の候」、下旬になりますます寒さが厳しくなったら「大寒の候」などと書くのが適切です。

和歌や俳句を楽しむ場合

俳句には、季語を使用する決まりがあります。和歌の中にも、季語が登場することは珍しくありません。1月の別名には「初春」「早緑月」「初陽」など、新年に関する季語となっているものもあるので、覚えておくとよいでしょう。

日本最古の歌集「万葉集」の中にも、新年の喜びを詠んだ歌があります。奈良時代の歌人・大伴家持(おおとのもやかもち)は、「新しき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事」と詠みました。万葉集の最後に登場する歌として有名です。

1月の別名を知り和の風情を感じよう

1月の別名は一般的によく知られている睦月以外にも、多くの種類があります。旧暦では1~3月までを春としていたことから、春が付く名前や一年の始まりを意味する別名が少なくありません。

1月の別名に春や始まりを意味する言葉が使われていることを知れば、季節感が重要な手紙を書くときにも適切な表現ができます。和歌や俳句を親しむときにも、より深く意味を理解できるようになるでしょう。子どもと一緒に1月の別名を探したり、俳句を詠んでみたりするのも、よい勉強になるかもしれません。

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構成・文/HugKum編集部

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