「気に食わないとギャーと騒ぐ!」「部屋を片付けない」悩めるママパパに東大名誉教授の汐見稔幸先生と井坂敦子さんが徹底回答!【HugKum×花まる学習会 セミナールポ】

子育てに関する悩みは尽きないもの。特に6歳までの子どもは、成長が速い一方で、分からないことが次々に出てきて、悩むことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、東大名誉教授の汐見稔幸先生と子育てのプロ井坂敦子さんが、読者から寄せられた悩みに答えたオンラインセミナー『HugKum×花まる学習会 セミナー』より、お二方の回答をご紹介します。

今回開催された『どうすればあと伸びする子が育つ? 6歳までの子育てお悩み相談室』って?

 幼児期について幅広い現場での経験と学問の両面から深い知見を持つ、東京大学名誉教授であり日本保育学会会長の汐見稔幸先生と、元受験対応型保育園園長で、9月に『入学後の学力がぐんと伸びる 06歳の見守り子育て』(KADOKAWA)を出版した、花まる子育てカレッジディレクター井坂敦子さんが、ママやパパからのお悩みに回答したオンラインセミナー。1つのお悩みに対してお二人から意見を伺ったことで、幅広い解決策が示されました。

セミナーには多くのお悩みが寄せられ、相談者のママがオンラインで実際に先生方とやり取りをする場面も。今回はそのなかから、お悩みを抜粋しいくつかご紹介します。

【お悩み】気に食わないことがあるとすぐにギャーッと騒ぎ出し、30分くらい駄々をこねて対応に困っています。(4歳の保護者)

親側に余裕があるときは話を聞いたり、代案を出して付き合いますが、そうでないときは放置してしまいますとのこと。多くのママやパパが直面したことがある場面ですが、どうしてあげるのが正解なのでしょう。

 汐見先生の回答「どうするか子どもに選ばせることを習慣化する」

汐見先生 4歳の子ということで、5歳になると少し変わる可能性はありますが、気に食わないことがあると「ちょっと我慢するか」というタイプと、「冗談じゃない、我慢できない」というタイプの子がいますよね。私の3番目の子は、だいたい2時間くらい駄々をこねていました(笑)。

 小学生になったらだんだん自分のことをコントロールする力がついてきますから、明日からどうにかしようといいのは無理で、もし対応するなら少し距離をとって、子どもが自分で静まるのを丁寧に待ってあげる

 あとは子どもに「どっちにする?」と、選ばせてあげる。例えば遊んでいて出かけなければいけない場合、①もう30分遊ぶのか、②今すぐ片づけていく準備をするか、どちらにしても行かなきゃいけないんだけど、どっちがいいか子ども選ばせることを習慣にしていくと、少しばかり減るだろうと思います。

元々の性格がありますから、4歳でなんとかしよう思わず、時間をかけて少しずつ変わっていってもらおうとしましょう。

 井坂先生の回答「ギャーッと騒ぐのは信頼の証。慌てずに根気よく付き合って」

 井坂先生 4歳ぐらいって親側はなんでも理解できて、話も出来ると思いがちですが、子ども自身は、気持ちの整理がつかない感じをまだうまく説明もできず、「ぎゃー」って言うしかないのかなと思います。

 精神科医の先生が以前、感情を抑える、自制心って言うんですかね。「ここは騒いじゃいけない」とわかるのは20代になるまでかかるとおっしゃっていました。
そうなると、4歳なんて入り口も入り口ですから、親側はまだ無理だというのを前提として思っておくのがいいと思います。

 また、保育園でたくさんのお子さんを拝見して、ぎゃーって騒ぐっていうのをしてくれるのは、とってもありがたいんですよね。
大人側としては「嫌なことあるんだな」とか、「今、怒ってるんだな」というのを表に出してくれるっていうのはわかりやすい。その理由はわからなくても。

だから、 場所や時間によっては困ることもあると思うんですけど、ぎゃーって言ってくれるのは、親である自分を安心して「出していい人」だって思ってくれているんだなと思って、慌てずに根気よく、落ち着いた感じでそこにいてあげるっていうのも大事だと思います。

汐見先生のお話で出た、2時間くらい駄々をこねていたという汐見先生のお子さんは、小学生になっても自分をうまくコントロールできなかったそう。そこで先生が「困っていない?」と聞くと、本人は「うん」と回答。先生はそのときに、本人が1番困ってるんだっていうことがわかったそう。子どもが駄々をこねると、対応する親もほとほと困ってしまいますが、何より困っているのは本人。このことは胸にとめておきたいですね。

【お悩み】6歳の兄が片付けてくれてしまう環境で下の子は片付けない。どのような工夫が正解なのかわかりません。(3歳の保護者)

現在もいろいろな声かけをしているそうですが、本人は嫌々やっており、大きくなってから物や頭の整理整頓に困らないように習慣づけたいのですが……というのがお悩みです。

井坂先生の回答「“散らかしっぱなしでいいエリア”を作ってみるのもあり!」

 井坂先生 片付けが好きできちんとしているのが好きな子がいる一方で、本当に気にならない子もいる。それは個性だと思います。

親は片づけられないのと心配になると思うんですけど、片付いている空間が本当に子どもにいいのかどうかっていうところは、諸説あるんですよね。

一時期、高層マンションに住んでいる子どもはあまり学力が伸びないという記事が出ていたことがありました。そこに書かれてたのは、片付かずにあふれ出ているもの、そこら辺に転がってるものがあると、子どもはそこから興味を持ち、これとこれをくっつけてみようかな、どうなるかなと思いついて工作を始めたりと子どもの頭が動き出すという話で、片付いていないことが悪いばかりでもないという内容でした。

 そこで実際に我が家でやっていたのは、“散らかしっぱなしでいいエリア”を作ること。
ちょっとの場所ですが、ここはあなたが出しっぱなしにしていいよ、だけどみんなで使う部屋は一緒に片づけてね、というようにして。
出しっぱなしで雑然としているのが好きなお子さんはそういう場所を持たせてあげるのが、心の安定にもなるのかもしれません。

 片付けに関しては、時間を決めるとか、音楽を決める。動きやすいアップテンポの音楽をかけて、一緒にやろう!競争でやるよ!とか、親も兄弟も一緒にやるよっていう感じのことをやっていましたね。

汐見先生の回答「やっぱり下の子だよねというおおらかな気持ちで。時期がくればやります」

汐見先生  だいたい兄弟がいると、上の子はお母さんの言うように行動しなければいけないという気持ちが全体的に強いんですね。だから上の子は期待通りにしてくれるんだけど、そうやって親の言うように動いているのを見ている下の子は、「そういうのは僕はやりたくない」という選択肢が増えるんです。だから下の子の方がだいたい要領がいい

 有名な心理学者のアドラーが「人間の性格形成に一番大事なのは兄弟関係だ」と言っているくらいで。僕がこういう風になること自体が、あんまり気にしないというかやっぱり下の子だよねっていうおおらかな気持ちでいていいんじゃないかという気がします。

人間はやっぱり片付けないとまずいなっていう気になる時ってやっぱりあるんですよね。 その時に片付けられれば、大丈夫だと思うんです。

うちの三番目も部屋全体がゴミ箱のようでしたが(笑)、1231日には掃除するんですよ。やろうと思えばできるんですよ。好きな子が出来たら、部屋がきれいになったりね。

だからあまり気にしすぎず、「ここだけはちゃんと片付けてね」「お客さんがくるところだから」などを丁寧に伝えて一緒に片づけをするといいのかなと思います。

 ここで汐見先生が部屋を公開!

本がたっくさん積みあがっていて、「妻は片付けてよと言いますが、僕から見ると片付いている」と先生。優秀な先生の意外な部屋の様子に、なんだか元気が湧いてくる場面でした。

【お悩み】親としては一緒にしているつもりでもお互いをうらやましく思うよう。兄弟で平等にする難しさに悩んでいます。(4歳と2歳の兄弟の保護者)

このお悩みはご本人がオンライン上で直接相談。「まだまだ手のかかる弟のお世話をしていると、お兄ちゃんが寂しそうにしていたり。平等な接し方に悩んでいます」とのことでした。これは男女問わず、子どもが増えたタイミングで悩まれる方も多いのではないでしょうか。

 汐見先生の回答「平等にするのは不可能!上の子に大好きだと伝え続けて」

 汐見先生 全てを平等にするってことは不可能です。小さい子どもが生まれた時には、どうしてもそちらに手がきます。上の子にしてみれば、それまでは自分がお母さんを独占していたのに、下が生まれてそっち行っちゃった。つまり子どもの最初の三角関係が始まるわけです。それで奪い返しに行こうとしたり、自分も赤ちゃん返りをしたりする。人生に最初の難題が降りかかってくるわけです。

だから、1つはお兄ちゃんとかお姉ちゃんに対して、時々「ごめんね」って。「あんまり相手してあげられないけど、お兄ちゃんのこと大好きなんだよって、わかってくれてるよね」とぎゅーっと抱きしめてあげるとか、下の子寝ている間に一緒にお風呂入ろうかとか。上の子を大好きなんだっていうことを、適宜伝え続けるのがいいと思います。

 もう1つは「お兄ちゃんオムツ持ってきてくれる?」とか、お手伝いを頼んで「お兄ちゃん上手ね」「お母さんのときより赤ちゃんがニコニコしてる」と言って、「さすが兄貴だ」という体験を増やす。お兄ちゃんってのは大事な役割果たせるんだっていうことを体験させてあげて、下の子に対して嫉妬の感情だけにならないように、配慮してあげることが大切だと思います。

井坂さんの回答「お兄ちゃんの気持ちを大事に!2人だけのデートもいっぱいしましょう」

 井坂先生 男の子兄弟をたくさん見た経験からいくと、だいたい弟くんのほうが強いんですね。お兄ちゃんは本当に優しくて、お母さん思いで、優等生なタイプが多い。弟はすごくやんちゃだったり、強いっていうパターンが多いんです。
なので、どっちかというと、汐見先生がおっしゃったように、お兄ちゃんの気持ちを大事にしてあげてほしいなって思います。

お兄ちゃんは常にママを見ています。ママが困ってたら助けたいし、ママが大変そうだったら何かしてあげたいって 1番に考えるのはお兄ちゃんなので。

声のかけ方としては、お兄ちゃんに「弟くんは何が好きかな」とか「弟くんはどういうところが可愛いかな」とか、弟のいいところをお兄ちゃんに質問すると、普段は弟にお母さんを取られて悔しいという想いが、“これは俺の弟だ”“僕の可愛い大事な弟だ”っていう気持ちが出てきます
君たちは、大事な兄弟なんだよという言葉が出てくるきっかけを、ママから作ってあげるといいかなと。

 あとは弟くんをご主人やおじいちゃま、おばあちゃまに預けられたら、お兄ちゃんと2人だけのデートもいっぱいしてあげてほしいなと思います。本当にもうママのことが大好きで、これは恋人以上だと思いますので、良い関係を続けていただきたいです。

親としては平等にしてあげたいけれど、なかなかできない。その葛藤に苦しむこともありますが、汐見先生からの「不可能」という言葉は、「無理なんだな」と納得でき、救われる気がします。「上の子に大好きな気持ちを伝える」、というのは今すぐに実践できるアイデアです。

先生方の回答を参考にして我が子との時間を楽しみましょう

毎日一生懸命子どもと向き合っていると、もうこの歳なのにどうしてできないんだろう、周りと比べてうちは……など不安や心配、悩みが付きまといます。

最後に井坂先生が教えてくれたのは、そんな方に向けた写真のアイデア。「赤ちゃんの頃の写真を目につくところに飾ると「大きくなってるな」とか「しっかりしてきたね」と思えますよ」(井坂先生)と役立つご意見。

どんな子でもその子なりに着実に成長をしています。なにかあっても、今回の先生方の回答を参考にして対応し、おおらかな気持ちで親子の時間を楽しめたらいいですね。

他の方の質問はこちらをチェック!

ほかにも、「好奇心は強く物怖じしないタイプですが、なわとびや字を書くなど出来ないことへの諦めが早く意欲が続きません。諦めない心を育てる言葉かけなどありましたらご教示頂きたいです。」(5歳女児保護者)、「保育園に通わず、幼稚園まで自宅保育の予定なので、自宅でどんな遊びをしたらいいのか、幼稚園までにどのようなことを教えたらいいのか分からない。」(2歳男児の保護者)といった質問も。

先生方の回答をチェックしてみて!

動画全編はこちら>>

答えてくれたのは…

汐見 稔幸|東京大学名誉教授
1947年大阪府生まれ。2018年3月まで白梅学園大学学長。東京大学名誉教授、日本保育学会会長、白梅学園大学名誉学長、全国保育士養成協議会会長、社会保障審議会児童部会保育専門委員会委員長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事など。 専門は教育人間学、保育学、育児学。現代の父親、母親の育児の応援団長をめざしている。父親の育児のための『父子手帖』を出版したのもその一環。小西 貴士氏らと21世紀型の身の丈に合った生き方を探るエコビレッジ「ぐうたら村」を建設中。

答えてくれたのは…

井坂 敦子|「花まる子育てカレッジ」ディレクター
慶應義塾大学文学部卒業。雑誌「オレンジページ」編集部を経て、公式サイト初代編集長。出版社勤務のかたわら、長女を難関私立小学校に合格させる。その後、受験対応型保育園で初代園長を務め、生活の中で学カリキュラムを立案する。認可保育園保育統括や企業主導型保育園の立ち上げにも従事。小学校受験の個人指導でも、慶應義塾横浜初等部、早稲田実業学校初等部、立教女学院小学校、桐朋小学校などの合格実績を上げ、現職に。子育てに悩む親が、自らの価値観に沿って子どもに向き合う手助けをすることを信条としている。著書に「入学後の学力がぐんと伸びる 0〜6歳の見守り子育て」(KADOKAWA)がある。中学校高等学校教諭一種(国語)、保育士、食育カウンセラー、表千家師範の資格を持つ。

井坂敦子さんの著書はこちらをチェック

井坂敦子・著KADOKAWA本体1,450円+税

子どもの伸びようとする力を、知らず知らずのうちに妨げていませんか?
子どものすることには、すべて理由があります。「ダメ!」と言う前に一呼吸おいて、「なぜこんなことをするのかな」と見守ってみませんか?

娘を有名小学校に合格させ、お受験保育園の園長としても実績を上げてきた「花まる子育てカレッジ」ディレクターが、子育て中の悩みや疑問100に答え、世界で生き抜く力をつける、具体的なメソッドを伝えます。

高濱正伸推薦!「0-6歳は、親が9割。『過干渉が最大の罪』ならばどう関わるか。口出し過ぎでも放置でもない『良い加減の見守り』の秘訣を教えてくれる一

構成・文/長南真理恵

編集部おすすめ

関連記事