ロンドンでパルクールを学び、指導者へ。SASUKEで知られる日本パルクール協会会長・佐藤惇さんに「全身を使ったクールな遊び」の魅力を聞いた!今、α世代からも大注目!

2024年開催のパリオリンピックで「お披露目式」への採用が決まり、日本でも人気が高まっているパルクール。日本初のパルクール指導員、日本パルクール協会会長として活動している佐藤惇さんにパルクールについて、ご自身とパルクールの出合いや教室についてお話をお伺いしました。

フランス生まれの「どこでもアスレチック」パルクールとは?

パルクールとは、どのような運動なのか教えてください

佐藤さん:パルクールはフランス発祥のどこでもアスレチック運動です。街の中、森の中で自分で自由に スタートとゴールを決めてその間にある障害物を走る・跳ぶ・登るなど自由に移動しながら身心を鍛えていきます。

本来パルクールはスポーツや競争という概念はありません。パルクール人口やジムの増加とともに、パルクールの要素に特定のルールを設け、勝敗を決める新競技が考えられるようになりました。

佐藤さんがパルクールに出合ったきっかけは?

佐藤さん:小学5年生くらいの時にテレビ番組でパルクールのドキュメンタリーを観て、こんな動きを人間ができるのか!と衝撃を受けました。それから好奇心で外遊びで真似をしていました。

受験期を迎え外遊びをする時間が減り、体を動かせない時期が続きました。中学に進学して勉強についていけないストレスから不眠症になり、体と精神の不調を感じていた時にパルクールを思い出しYouTubeで検索して動画を見ながら、こんなふうに体を動かしたい!と独学で始めたのが、本格的にパルクールに向き合ったきっかけですね。パルクールをしている間だけは生きている実感がありました。

 

ロンドンでパルクールの本質を知り、指導者の道へ

専門学校在学中にパルクール修行を積みにロンドンへ?

佐藤さん:高校に進学し、写真部で活動しながらパルクール仲間の撮影をしていたこともあり、卒業後は写真の専門学校に入学しました。
在学中にパルクールの理解を深める為、パルクールのレッスンを行う団体Parkour Generations (パルクールジェネレーションズ)のCEO、ダン・エドワーズさんに会いにいきました。

日本パルクール協会会長の佐藤惇さん

当時の日本では「パルクールってなに?」と聞かれたときに明確に答えられる人が少なく、自分もパルクールが好きなのに自信をもって答えられない。僕がやっているのは本当にパルクールなのか知りたい、ちゃんと学びたいという想いがありました。

佐藤さん:パルクールとはもともとパフォーマンスではなく、精神的な鍛練で自分ができなかったことができるようになるように身心を鍛えていくことを意味します。

例えば、スタントマンになりたい、警察官になりたいなど、それぞれが違った目的や目標に向けてパルクールを用いるのですが、自分がどのようになりたいかは本人に委ねられるので、それぞれが自分の求める境地にたどり着けるよう修練するということです。

ロンドンに行ってそんなパルクールの概念を知り、考え方や価値観が180度変わりました。
それまでは、楽しく身体を動かしていただけだったけれど、ロンドンで出会った人たちは理念や理想像を持ちながらパルクールをやっていて、その姿がかっこいいと思ったし、僕が生きていきたい場所はここだと思いました。

通っていた高校や専門学校では無気力な友達が多かった中で、ロンドンでパルクールをしている仲間たちは理想を高く持っている人が多くてかっこよく見えました。パルクールってすごいんだな!って。それで帰国後専門学校を中退して、パルクールの指導者となることを決めました。

安全に体を移動させることが大前提

「パルクール」を始めるために、まず最初に何をしたらいいですか?

佐藤さん:パルクールは、まず「歩く」ところからスタートします。例えば、いつもと歩き方を変えてみる。横向きで、しゃがみながら、目をつむりながら……。そうすると普通の動きがものすごく簡単になるんですよ。そこから、懸垂をするなら壁を登ってみる、スクワットするならジャンプもしてみるといったように、ナチュラルな体の動かし方で体を鍛えるのです。

僕らの視点から言うとパルクールって障害物をよける運動なので、ほかの運動と比べるとケガのリスクは低いんですよ。危ないと思ったら止まるのは、生活の中でも生きています。自分の体と常に向き合うので、次第にその日のコンディションに合わせた動きができるようになります。

普段から地下足袋を履いているのですか?

佐藤さん:足袋は、ほぼ毎日履いていますね。コンビニに行くときも(笑)。今まで靴を履いているタイミングで捻挫をすることが多くてどうしたらいいかな…と悩んでいました。そんなときにSASUKEで足袋を使う機会があり、これはいい!と抱えていた問題が払拭されました。足裏も鍛えられるし持ち運びも便利です。

日常生活も地下足袋を履いています

パルクールで育む非認知能力

パルクールの教室の受講者は、どのくらいの年齢層の方が多いですか?

佐藤さん:9割が小学生で、低学年の参加者が多いですね。外遊びが好きだけど他のスポーツ教室に当てはまらなかったというお子さんが多くて、親御さんも発散のさせどころがわからなくて来たという感じで、ここに来ている時間が一番生き生きしていると言ってもらえます。

子どもがじっと話を聞けないのは当たり前で、話をちゃんと聞いているなら自由にしててもいい。それぞれの判断に任せるけど、締めるところは締めよう!と、自分で考えて行動できるように進めていきます。

初めてのパルクールで用意するものはありますか?

佐藤さん:準備しておくものは好奇心ですね。自分で最初からできるできないを決めるのではなくて、まずは行動してみる。そして、限界を超えない、自分のリミットを定めることが大切です。闇雲に動いても能力が上がるわけではないし、楽しいかもしれないけれど限界を超えるとケガにもつながります。

何歳くらいから始められますか?また、公園で気軽に始められるのでしょうか?

佐藤さん:マインド的な話になると小学校高学年になりますけど、根本的に本能的に動くという部分では2歳くらいからみんなパルクールをやっているんですよ。パルクールって実は外遊びの名前を変えたものなんだよくらいに思ってほしいです。公園で自主的に遊びながら遊具の使い方や遊び方を発展させていってほしいですね。

それは子どもたちの本能的な動き、例えば石や木に登ってみたりするのもパルクールです。まわりにいる大人が「危ないから!」と止めてしまうことで、そのプロセスが奪われてしまい遊び方を知らない子どもたちが増えてしまうと必然的に子どもたちの運動経験が減ってしまうので、私たち大人が子どもの本能的な動きを止めないことも大切です。

-パルクールで育まれる力とは?

佐藤さん:パルクールでは目の前の障害や困難を乗り越える為に「何を考え、どのように身体を動かせばよいのか」を考えることで、自主性や思考力が育まれます。
レッスンでは、「どこまでだったらケガをしないのか」自分の抑制と発散をする部分で、自律と自律を実現する指導を行っています。また、できることが増えていくことが自信になり自己肯定感も高まります。

「自分らしく生きる」ことがパルクール

佐藤さんが感じるパルクールの魅力とは

佐藤さん:自分らしく生きられること。抑圧された社会の中で周りと同じであるべきと求められたりすることで個性を失ってしまうことがあります。だからこそ好奇心を頼りに、自分って何だろうと自分らしさを見つめ直せる機会になる。行動の自由と選択の自由、開放感や楽しさがある。そこが一番の魅力ですね。

外遊びの延長でパルクールを楽しんでみよう!

佐藤さんは、約10年間母校でパルクール教室を定期的に行っているのだそう。子どもたちと公園で外遊びをする延長で楽しむパルクール。視点や考え方を変えるだけで、いままでの外遊びの世界が大きく変わると言います。私たち親は、子どもたちの好奇心を止めずに、ただ伸ばしてあげることが大切なのだと佐藤さんは教えてくれました。

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佐藤惇(さとう・じゅん)さんプロフィール

1991年生まれ、東京都出身。中学3年生のときに独学でパルクールを始める。18歳のときに、日本人として初めてパルクール国際指導資格を取得。2013年SENDAI X TRAINを立ち上げ、2022年には日本パルクール協会代表に就任。日本におけるパルクールの発展に尽力している。Instagram>@otonakodomosully

佐藤さんが代表を務めるSENDAI X TRAINのパルクールの教室やイベントなど、詳細情報はホームページをご確認ください。

SENDAI X TRAIN 公式サイトは>こちら
日本パルクール協会 公式サイトは>こちら

取材・文/やまさきけいこ 撮影/黒石あみ

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