想像力がたくましい4歳の息子。嘘つきにならないか心配です【愛子先生の子育てお悩み相談室】

子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴半世紀あまり。常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。

4歳の息子の言動が気になっています。「今日、給食でお寿司が出ておいしかったんだ」「遠足ですごく遠い海に行ったんだよ」など、あり得ないことをうれしそうに話してきます。単に想像力がたくましいのでしょうか?あまりに現実とかけ離れたことを話すことが多いので「うそ」を平気でつく子になるのでは、と親として不安に駆られてしまいます。(4歳男児のママ)

大人の価値観で「うそ」と決めつけないで。家族で一緒に想像の世界を楽しんで!

「うちにはさっちゃんがいるの」と言う3歳の子がいました。ほんとはいないんですけれど、その子には見えているようです。イメージの世界で生きているのは、3歳までくらいにはよくあります。木も、石も、人形もなにもかもが自分と同じ命をもっている時代です。

少しづつそんな世界から人間界に引きづりこまれてきますが、4歳はまだイメージの豊かさをもっています。それを言葉で表現できることから、大人の価値観で「うそ」と言ってしまうことがあります。いえいえ、それは残念。嘘とかほんとかではなくイメージの世界の作り話。このお子さんの場合は、自分の望みかもしれませんね。お寿司がでたらいいな、海に行きたいなっていう気持ちが想像の世界に導かれているのでしょう。

ほんとうは大人だってその話しにのれたら、イメージの世界を共有する楽しいコミュニケーションができます。「ママもお寿司のときはいきたいな。マグロがいいかな」「○○ちゃんはなにを食べたの?」。こんなふうにお話の世界は広げていけるのです。

魅力的なお子さんです。自分の世界を描ける能力を大事にして

思い起こしてください、昔話って、あり得ないことばかりです。川を桃が流れて来るわけないし、割ったら桃太郎が生まれてくるわけはない。ありそうな真っ赤な嘘が、聞く者の心をくすぐり、伝承されてきたのです。そして、本来子どもはみんなそんな能力を持っています。

絵本や児童文学の世界、小説やアニメの世界もその延長線上にあるのではないかしら?

ところが現代の生活にはイメージでのあそび文化が少なくなりました。正しいか間違っているか、嘘かほんとかという表面上のことで断ってしまうからです。そこで、今や冒険という言葉が聞かれなくなってしまいました。先が見えない、想像してわくわくする世界に踏み出す魅力を持てなくしてしまった気がします。

こういうお子さんは魅力的です。家族で嘘話に花を咲かせて大笑いしませんか? 本や物語を通してもっと豊かな世界を楽しむのも素敵です。目に見えない自分の世界を描ける能力を大事にしてあげてください。

記事監修

柴田愛子|保育者・自主幼稚園りんごの木代表

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて36年。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。

イラスト/海谷泰水

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