妻が癌と分かってから1ヶ月で他界。突然のことで、戸惑い先が見えない状態でした。それでも、私達2人をいろんな方々が支えてくれたおかげで、娘は順調に成長しています。実は我が家には、娘のその成長をいつも一緒に見守ってくれる愛犬がいます。私と娘にとっては本当に大事な家族の一員です。
今回はその愛犬との話をさせてください。
犬を飼うことになった経緯
愛犬が家族になったのは、娘が小学校2年生のとき。
その頃の僕たちは、僕の地元から遠く離れた職場の近くに2人暮らしだったため、近所に私の親や頼れる知人がいませんでした。そのため、娘は学校が終わった後の時間を学童で過ごしながら、僕の仕事の帰りを待つ予定でした。
しかし、学校や家の周辺の学童がすべて定員オーバーで受け入れてもらうことができず、娘は学校が終わると、ひとりで自宅にお留守番することが多い生活に…
きっと、寂しい思いをさせていたと思います。
そんなとき娘が「ワンちゃんと一緒ならお留守番も寂しくないのになぁ…」と言い出しました。
「ワンちゃんがいれば寂しくないかもしれないけど、ワンちゃんがいるといろいろなお世話をしないといけないよ。おしっこやウンチを片づけたり、エサをあげたり、散歩をしたり…ちゃんとできる?」
と僕が言うと、娘は少し憤慨しながら「できるよ!!」と答えました。
僕は犬を飼うとなったら、毎日やらなきゃいけないことが増えて、さらに生活が慌ただしくなるだろうなぁ…と想像したため、「No」と言いたい気持ちもありましたが、娘に寂しい思いをさせている申し訳ない気持ちもあり、
「わかった。家族になってくれる、ワンちゃんを探してみよう」と約束。
すると不思議なもので、ちょうど知り合いに犬の飼い主を探していた方がおり、今の愛犬とのご縁をいただいたのです。
娘と愛犬のお留守番がスタート!
愛犬を家族の一員に迎えてからの娘は学校が終わると、愛犬に早く会うために走って自宅に帰るようになりました。
それまでの娘は自宅へ早く到着すると留守番の時間がそのぶん長くなるので、わざと遠回りをしたり、公園に寄り道したりしながら帰っていたのに…(笑)
ひとりでお留守番をしなくてもよくなったことが本当に嬉しかったのでしょうね。娘にとっては弟妹ができたような気持ちだったのかもしれません。
母親がいない分、そんな存在を願っても叶わないことだと思い込んでいたでしょうから、いつも犬がいてくれることへの気持ちは、娘にとって格別だったと思います。
実際に犬を迎えてからの娘は、事前に約束していた犬のお世話を進んでやってくれましたし、お姉さんのような口調でよく犬に話しかけていました。
そして以前より、笑顔が多く明るい子になったと思います。今まで他の誰かに世話をされることが多かった娘が犬のお世話をすることを通じて、自己肯定感が上がり自信がついたのでしょうね。
でもあるとき、犬がいたことで娘にとって恐怖の留守番になった出来事がありました。
思わぬアクシデントも…
この頃は娘にガラケーを持たせていて、帰宅すると仕事中の僕へ連絡をするようにしていました。
その日もいつものように娘から帰宅の連絡がありました。それから10分ほどすると、娘から着信が入っていたので電話をかけると、なぜか大泣きしているのです。
「どうした?」と聞いてみると、娘は
「犬の部屋に小さくて黒い粒みたいなのがたくさん落ちてる。そして、それが虫みたいに動いている」
僕は「そうか。それなら他の部屋に行って犬と一緒に避難してなさい。パパも急いで帰るから」と言って泣いている娘をなだめました。
そして、娘は「うん。早く帰ってきてね」と言い電話を切ったのですが、またその10分後に電話があり、「避難した部屋にも虫がいる。もう早く帰ってきて」と先程以上に大泣きしていました。
僕もこの時は、なぜそんな虫が複数の部屋にいるのか? 娘が虫ではない何かと勘違いしているのではないか? と思い理由がまったく分かりませんでした。
そして帰宅して娘が話していたその黒くて丸い虫を見てみると、大きさは0.3~2ミリくらいのものが数多くいました。そして、たしかに動いており、娘が避難した複数の部屋にいるのです。
でも、その虫がいない部屋もあったので不思議に感じていると、衝撃の事実が…。なんとその虫は犬から発生して落ちていたのです。だから犬と一緒に避難した部屋には、かならず発生してしまっていたのでした…(笑)
私も犬に関する知識が豊富ではなかったので、犬につくノミにビックリはしましたが、娘が感じた恐怖と比べると、たいしたことはなかったと思います。
今でもこの出来事は娘にとって史上最悪の留守番だったと言っています(笑)
気まずい雰囲気を変えてくれる
僕にとっても、愛犬は非常に心強い存在です。
特に娘と僕が気まずい雰囲気になったとき、その悪い雰囲気を愛犬が変えてくれることに本当に感謝しています。
娘が低学年のころに、僕が娘を叱っていると、愛犬は心配そうな顔をして何度も様子を見にきてくれました。その顔は「もう、そんなに言うな。娘はすでに理解しているよ」と、僕に伝えているようでした。
実際に自分自身でも叱り方が良くなかったり、長くなり過ぎたりしていたと感じるときにきてくれることが多かったので本当に不思議です。
今でも我が家は僕と娘の父子家庭なので、ケンカや口論などでお互いが冷静になれていないときに、その間に入って感情を宥めてくれる人はいません。でも、愛犬が少なからずその役割をしてくれていると感じています。
実例をあげると、ケンカや口論をしている場所でウンチをしたり、変な鳴き声を発したり、なんてことも…(笑)
僕も娘もそんな愛犬を見て笑ってしまい、お互いに冷静になれることが、娘が思春期の現在でもよくあります。
愛犬も大事な家族の一員
犬を飼うことは、たしかに手間やお金がかかります。ひとり親の家庭では、飼わないほうが無難と考える方が尚更多いかもしれません。でも、僕と娘はそんな不安を忘れるほど、愛犬から与えてもらっているものがたくさんあると感じています。
もし、愛犬が我が家にいなかったら…。心穏やかで過ごせた時間は、今ほど多くはなかったと思いますし、親子関係は現在より良好ではなかったかもしれません。
犬を家族に迎え入れたいけど、なにかと大変になることを想像して悩んでいる方がいましたら、我が家みたいな家庭もあることを知ってもらえると幸いです。
僕は父子家庭だったからこそ、愛犬がいてくれて本当に良かったと思っています。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。すべての親子が幸せになりますように! もちろん、その親子の家族の一員となるペットも含めて。
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文・構成/ひまわりひであき
※写真は愛犬画像以外はイメージです。