目次
「花より団子」とは?
まずは、「花より団子」の意味と語源を押さえておきましょう。
読み方と意味
このことわざは、「花より団子」と書いて「はなよりだんご」と読みます。
文字通り「花を眺めるよりも、団子を食べることを重んじること」の意で、「見た目の美しさや風流よりも、団子のような実利に重きを置くこと」をたとえた言葉です。美しさや味わいよりも現実的な利益を重要視することをたとえたいときや、上品さやおもむきが理解できないことを言い表したいときなどに使われます。
由来・語源
「花より団子」は、元々は「江戸いろはかるた」や「尾張(大阪)いろはかるた」のラインナップのひとつでした。「は」と書かれたカードには、この言葉と、花見の下で団子を食べる人の姿などが描かれました。
花見は、発祥したといわれる奈良時代においては、主に梅を鑑賞しながら貴族が和歌を詠むというものでした。安土桃山時代に入ると、豊臣秀吉が開催した数千人が参加するほどの大規模な花見で花見団子の始まりといわれる団子が振る舞われたと言われます。江戸時代になると、花見の文化が庶民にも広まり、だんだんと風流よりも団子が目当てとされるように。それをたとえて、風流よりも実利を重視する人たちを揶揄する言葉として、「花より団子」が生まれたという説があります。
ネガティブなニュアンスのある言葉。他人を言い表す際は注意!
先述したとおり、「花より団子」は、元々は風流を理解しない人たちに対する軽蔑的なニュアンスで使われるようになった言葉です。時代を経て、より気軽に用いられるようにはなりましたが、基本的にネガティブな意味を持つことに変わりありません。
自分だけでなく他人を言い表す際にも使うことができますが、失礼にあたる可能性があるため、相手を不快にさせないように気を付けましょう。
使い方を例文でチェック!
ここからは、「花より団子」の使い方を例文を通してチェックしていきましょう。
1:せっかく景色のきれいな場所に来たというのに、つい食べることばかりに夢中になってしまった。まさに【花より団子】だ。
「花より団子」の文字通り、景色を楽しむよりも食べることを優先した時に用いた例。このように、「まさに」と組み合わせて使われることも多いことわざです。
2:会社のお花見ではみんな【花より団子】で、桜よりもおしゃべりに夢中だ。
こちらもまた、風流や趣よりも他を優先した様を喩えるために用いた例です。このように「○○は花より団子で〜」と使われることも珍しくありません。
3:わたしは【花より団子】なので、誕生日祝いはサプライズで用意されるよりも、欲しいものを直接たずねてもらいたい。
こちらは、風流やロマンよりも実利を大切にする様を喩えた例です。サプライズプレゼントのドキドキ感よりも、好きなものを自分で選んで買って貰うことを優先したい方は少なくないかもしれませんね。
類語や言い換え表現は?
ここからは「花より団子」の類語をご紹介します。言い換えに使える表現として覚えておきましょう。
1:色気より食い気(いろけよりくいけ)
「花より団子」の代表的な類語としては、「色気より食い気」がまず挙げられます。文字通り、「色気」よりも「食い気」を優先する様を喩えているので、似た意味を持つ言葉と言えますね。
ただし、「花より団子」が「風流<食欲」を喩えているのに対して、「色気より食い気」は「恋愛<食欲」に焦点があてられている点に注意しましょう。
2:花の下より鼻の下(はなのしたよりはなのした)
「花の下より鼻の下」とは、「花の下で風流を味わうよりも、鼻の下にある口を食べさせていくことの方が大切であること」という意味を持つ言葉です。芸術や文化よりも、まずは暮らしを立てることの大切さを言い表しています。
「花より団子」に似ている一方で、格言のようなニュアンスが強くなります。
3:名を捨てて実を取る(なをすててじつをとる)
「名を捨てて実を取る」とは、「名誉・名声のようなうわべを捨ててでも、実利を優先したほうが賢明である」という意味を持つことわざです。「うわべ<実利」を言い表している点において、「見た目・風流<実利」を喩えた「花より団子」に似た言葉ですが、こちらは主にビジネスシーン等で使われます。
こちらもまた、「花より団子」よりも格言的なニュアンスが強くなります。
対義語は?
では、「花より団子」にはどのような対義語があるのでしょうか。ここでは、「花より団子」の反対のニュアンスを帯びた言葉をチェックしていきましょう。
1:馬子にも衣装(まごにもいしょう)
「馬子にも衣装」とは、「馬子のように取るに足らない者でも、立派な衣装を着ると立派に見えること」を意味したことわざです。中身がそれに伴っていなくても、見た目で取り繕える=外観・見栄を重視するという点において、「花より団子」とは反対の意味を持つといえるのではないでしょうか。
2:武士は食わねど高楊枝(ぶしはくわねどたかようじ)
「武士は食わねど高楊枝」は、「武士は、たとえ貧しくお腹が空いていても、まるで満腹のように楊枝を高々と咥えて見せておかなければいけない」という意味のことわざです。見栄を張るという点において、「馬子にも衣装」の同義語であり、「花より団子」とは反対の意味合いを持つ言葉といえます。
英語表現は?
「花より団子」は、英語ではどのように言えば良いのでしょうか。最後に、「花より団子」に近い英語表現を押さえておきましょう。
1:Pudding before praise.
英語には“Pudding before praise.”ということわざがあります。直訳すると「褒め言葉の前にプリン」=「褒めるよりもプリンを食べさせてくれ」という意味になります。
褒め言葉は風流とは異なりますが、具体的なスイーツの名前を挙げている点や、実利を重んじる点において「花より団子」に似た英語表現と言えます。
2:Bread is better than the songs of birds.
“Bread is better than the songs of birds.”は、「鳥の歌よりもパンがいい」と直訳できる英語表現です。「花より団子」と同様に、風流よりも実利を重んじる様子を言い表しています。
お花見以外にも、幅広いシチュエーションを言い表せる言葉
今回は、「花より団子」の意味や使い方、例文、関連語をご紹介してきました。
中には、「花より団子」に「お花見で使われることわざ」といったイメージを持っていた方もいるかもしれませんね。けれども実際には、お花見以外の幅広いシチュエーションでも使われる言葉であることが分かったのではないでしょうか。ただし、先述したとおり、侮蔑的なニュアンスを持つので、他人に対して使う際には注意が必要です。類語や対義語と共に、ぜひ覚えておきましょう。
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文・構成/羽吹理美