青木裕子さんが息子たちの小学校受験を振り返って。 小学校・中学校受験に「幼少期の体験」が役立つ理由とは?

青木裕子さん書籍「3歳からの子育て歳時記」の発売を記念して、小学校受験・中学校受験に「幼児期の体験」が役立つ理由を専門家とともに解説するウェビナーが講談社のFRaU主催で開催されました。小学校受験や中学校受験を検討しているママやパパにはとても参考になる内容です。

フリーアナウンサーであり二児の母でもある青木裕子さんがFRaU eduで執筆した連載を一冊にまとめた書籍『3歳からの子育て歳時記』(講談社)の4月19日の発売に先立って行われたウェビナー。書籍にも寄稿している小学校受験、中学校受験それぞれの専門家を招き、小学校受験・中学校受験に「幼児期の体験」が役立つ理由について、耳寄りな情報が発信されました。

そのウェビナーの参加者からの質問に3人が答えるQ&Aコーナーを抜粋してお届けします。

ウェビナーに登壇したのはこの3名

大原英子先生(小学校受験専門『コノユメサロン』主宰)

東京大学卒業。2000人以上の親子を指導した経験を持ち、2022年に株式会社コノユメを設立。私立小学校受験を目指す家庭を支援するオンラインサロンと小人数制のスクールを開校。早慶はじめ難関校に合格者を送り出す。二児の母。

 

矢野耕平先生(中学受験専門塾 スタジオキャンパス代表)

中学受験指導塾スタジオキャンパス代表、国語専科博耕房代表。中学受験指導歴は今年で30年目。法政大学大学院修士課程修了。著書に『令和の中学受験』シリーズ(講談社+α新書)など14冊。中学受験や中高一貫校、国語教育などをテーマにした連載記事を担当。中学受験を経た中1生、高2生の父。

 

 

青木裕子さん(フリーアナウンサー)

慶応大学卒業。TBSテレビにアナウンサーとして『サンデージャポン』や『News23X』をはじめ、バラエティ・報道・スポーツ等多くの番組を担当。2012年にTBSテレビを退職し、フリーアナウンサーとして活動をスタート。現在はモデル、ナレーション等活動の幅も広げ活躍中。二児の母。Instagram

 

 

小学校受験専門家・大原先生への質問

Q.  小学受験に向けてさまざまな体験をさせたいと考えておりますが、年長になるとお教室の季節講習などもあり、両立が難しい場合もあると思います。どのようにしたらよいでしょうか?

A. わざわざ体験しに行かなくても大丈夫!(大原先生)

例えば、春に菜の花を見に行くという体験だとしたら、その体験を『しなければならない』と、思わなくていいのかと思います。もちろん、できれば体験してみてください。でも、できなければ、菜の花を見に行かなくても感じることができるものは、身の回りにたくさんあると思います。例えば、菜の花について描かれた素敵な絵本や図鑑を見てみる。あるいはスーパーに行って菜の花を買って調理してみるのもいいですね。それ自体が親子の会話のきっかけになり、知識のきっかけにもなると思います。
あとは、お正月の体験としては、例えば門松。門松を自宅で作るの難しいじゃないですか。 そういう時は、門松があるところに行き、『これは門松だね、松の木が使われているね』と話してみる。他にも獅子舞に噛まれに行くとか、外出先で体験したり、自宅ではできないイベントに参加してみるのもいいと思います。
もうひとつ、オンラインサロンの中でおすすめしているのは、工作です。お雛様とお内裏様を作ったり、鯉のぼりを作ったり、行事系の工作を作って季節を感じるのもいいですね。

Q.  お教室に通う以前の教育や習慣は、小学校受験の結果に大きく反映しますか? 目指す小学校のレベルによってはお教室での指導では埋められない穴がありますか?

A. 幼児教室に通うことよりも、通いながらの家庭生活が大事です(大原先生)

幼児教室は手段であり、小学校受験に必須のものではないと私は思っています。ただ、より効率的、効果的にやるために親が全部分析するというのは結構ハードなので、専門家の意見を聞きながら、すでに作られているプログラムを子どもがこなしていくことで成長するというのが幼児教室なんです。
手段であって目的ではないので、親ができる分野があれば、幼児教室には通わなくてもいいです。絵画や体操などさまざまな幼児教室に毎日毎日行っているけど、子どもが自分のお洋服は畳めない、靴を脱いだらそのままにして親が上履き袋に入れている、そういうご家庭は意外と多いと思います。 幼児教室に通うことが目的でも、 小学校受験の合格が目的でもありません。小学校受験はあくまで選択肢のひとつ、通過点でしかないのに、『そこで合格したら人生勝ち組』なんて、勘違いしてる方も結構います。たくさん幼児教室に通うことよりも、通いながらの家庭生活のほうがずっと大事です。自立や語彙力、自分のことを自分でできる、お友達に優しくするということに目を向けられていないと厳しい結果になるパターンも多いと思います。
幼児教室に振り回されていませんか。幼児教室に使われるのではなく、幼児教室は家庭が意志を持って選び、使うもの。もちろん私たちもコノユメもそう思っていますし、ご家庭側が選ぶものですよね。子どもやそのご家庭にあった幼児教室の使い方、生活の仕方の方が大事なので、そこに目を向けて生活をしていただければと思います。

中学受験専門家・矢野先生への質問

Q . 中学受験に求められる能力はどんなものですか?また、幼児期の体験を受験につなげる際に注力すべきことや大切にすることは何でしょうか?

A. 中学受験は知識だけではなく表現力も問われます(矢野先生)

今の中学受験は、算数・国語・理科・社会の4教科が主流で、理科は4分野、社会は3分野全部出てきて、かなり難しくなってきているので、知識はもちろん必要なのですが、小学校受験でも必要と言われている表現力も問われるようになっています。
そんな中で、『中学受験の主役は誰か』と考えた時に、それは子どもなんですよね。勉強するのも子ども、入試に臨むのも子ども、 合格して学校に6年間通うのも子どもです。だから、最終的には我が子が主役にならなければいけない。自分で勝手に勉強するようにしなければいけない。これがとても重要です。自立して物事に取り組めないと、膨大な知識や表現力はなかなか手に入れられないと思うので、 中学受験は、親が最後まで付き添っていなくても、徐々に親から切り離しをして、段階ごとに 『自分の中学受験なんだ』というところに導いてもらいたいと思います。

Q. 共学校、女子校、男子校、それぞれの特徴、また各々に合う子の特性等あれば教えていただきたいです。

A. 男女別学のメリットも理解して、志望校選びは一生懸命やってほしい!(矢野先生)

僕は、中学受験は親が燃料の多段型ロケットみたいなもの思ってて、飛び立ったら途中で切り離さないといけない。最後は子どもだけが上がっていくイメージでいます。ただ、最後まで保護者がすべき仕事は、“志望校選び”なんです。小学生ですから、 根拠を持って『この学校がいい』は、なかなか難しいと思うんですよね。そこは、我が子の普段の様子を見ていて、『うちの子はここの学校が合うんじゃないかな』と判断するのは保護者の方々だと思うので、志望校選びはもう一生懸命やってほしいなと思います。

最近では『志望校は共学校しか考えない』と言う方が増えました。『世の中は男女で成り立っているから、やっぱり男女が一緒に過ごす方が健全』という理由です。じゃあ、女子校や男子校は不健全なのかという話なんですけど、僕個人としては、 男女別学に対しての偏見は多いと思っています。『異性に対する距離感が掴めなくって困った大人になる』という声も聞こえてきますが、そんなデータはあるんですか?という話なんです。
中学高校の6年間を男女別学に通うとすると、その6年間は性別から解放されるということで、これはすごく重要だと思うんですよ。男子がいるから女子はこうであるべき、女子いるから男子はこうあるべきみたいなものが取り払われるメリットも大きい。 例えば、鉄道が大好きで、家でも外でもずっと電車漬けという子には、男子校を勧めます。中学や高校の好きな女子に大好きな鉄道のことをネガティブに言われたら、その子は口をつぐむようになるわけですよね。でも、男子校だったらどうでしょう? そこにはもう異性がいないわけですから、鉄道の話もし放題なわけですよ。しかも『物知りだな』って認めてくれる環境もあるからとことんオタクになれる。 だから研究者肌の子には男女別学が合っていると思います。ちなみに、我が子は娘が女子校、息子は男子校に通っています。

小学校受験経験者・青木さんに質問

Q . 我が家も今年小学校受験をする予定の年中です(2月時点)。第一志望の学校のレベルが高く、幼児教室に通っていますが、合格できるレベルに引き上げられる自信がありません。青木さんは今の時期、どのように過ごされていましたか?

A. 限られた時間の中で、何を学ばせたいか、考えて選択しました(青木さん)

長男に関しては、年長になった頃に受験を考え始めて、本格的に塾に通い始めたのがGW頃だったので、質問者さんのお子さんの時期は「受験する?しない?」みたいな段階でした。ただ、本人がこの学校に行きたいという気持ちがあったので、志望校自体は決まっていて、間に合うのかな?と考えていた時期でした。
そして、次男に関しては、長男の時の反省で早めにスタートしたんですが、年中の冬頃に、『あれ、もしかして志望校ここじゃない? 君の特性はちょっと違うのかも』と考え始めた時期でした。
小学校に上がる前の子どもって、1週間でもものすごい成長するじゃないですか。だから、現状で第一志望校をがっちりと決めてしまうのは、ちょっと時期が早いのではないかなと、思ってしまいます。夏以降ってとても忙しくなり、息切れする時期もあると思うので、今はまだ焦りすぎないで過ごしてほしいと思います。
とはいえ、時間は限られているので、今やることの選択は大切にしていました。例えば、GWのお出かけは1か所しか行くことができなそう。『じゃあどうする?』という選択はとても大事です。我が家の場合、一択目は仲良しのお友達と一緒にキャンプに行く。 二択目は祖父母に久しぶりに会いに行く、でした。どちらも魅力的ですが、その時には、受験までに会えるかわからない祖父母に会ったほうが、この子たちが何か得るものがあるんじゃないかと考えて、そう決めたことがありました。限られた時間の中で、できることの中から何を学ばせたいか、そこで何ができるかを考えながら選んでいくのは大切かなと思っていました。

Q. 小学校受験を経験した親として、親が最も得たものは何でしょうか?

A. 子どもと一緒に走った濃密な時間を得られたことです(青木さん)

子どもと共に歩んだあの濃密な時間だと私は思っています。 小学校受験の間は本当に一緒に走ったという感覚があるので、その時間はとっても貴重でした。今思い出してもいい時間だったと思います。
それから、我が家みたいな家庭は、小学校受験がないとしっかり教育のことを考えなかったなと、今振り返ると思います。子どもをどういう風に育てていきたいかを考えたり、いろんなところに行ってみたり、この本を出すことも、すべて小学校受験がきっかけです。先生方にお会いできたのも小学校受験がきっかけですから、そういった意味で、私にとっても得たものが多かったですね。

青木裕子さんの著書「3歳からの子育て歳時記」発売

青木裕子さんの著書「3歳からの子育て歳時記」は、親子「共育」として、3歳から一緒に楽しめる12カ月のさまざまな体験の実例をお届けするほか、青木さん自身の子どもの小学校受験の振り返りや、帯状疱疹ができたエピソードなど、連載公開時に大きな話題を呼んだ、子育てお悩みエッセイも収録。
今回のウェビナーに登壇した大原先生は、自宅で取り組める12か月の知育アイディアを提案。矢野先生は、幼少期の知育が中学受験にどう役立つかなどを綴ったコラムも収録。盛りだくさんの一冊となっています。ぜひ、ご覧になってみてくださいね。

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文/本間綾

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