ユニセフとはどんな団体?
日本に住む人であればテレビCMやインターネット、街頭の募金活動などで、「ユニセフ(UNICEF)」という名称を一度は耳にしたことがあるでしょう。ユニセフとはどのような団体で、何を行っているのでしょうか?
世界の子どもを救う国連機関の1つ
ユニセフの正式名称は、「国連児童基金」です。国際連合(国連)機関の一つで、活動費用は各政府からの任意協力と人々からの募金によって賄われています。
活動の目的は、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」に基づき世界中の子どもの権利と命を守ることです。子どもの権利条約とは、1989年11月20日に国連総会で採択された条約です。
生きる権利や暴力から守られる権利、教育を受ける権利といった「世界中の子どもが持つ権利」を定めています。条約の採択から30年以上が経っていますが、世界には貧困・虐待・孤立などにより、本来の権利が守られていない子どもたちが大勢います。
名前の由来と設立の経緯
ユニセフの英語の正式名称は、「United Nations Children’s Fund」です。元々は、United Nations International Children’s Emergency Fund (国際連合国際児童緊急基金)という名称で、その頭文字を取って「UNICEF」と名付けられました。
ユニセフの設立が国連総会で採択されたのは、第2次世界大戦後の1946年12月11日です。戦争で親や家を失った子どもたちを救おうと、ポーランドのルドウィク・ラフマンがユニセフ設立を提案しました。
設立当初は、食べ物や衣類を送り届ける支援がメインでしたが、戦争の被害を受けた子どもだけでなく、世界中の子どもを救う活動へと方向性を転換します。
ユニセフと日本の関係
日本はユニセフの主要な支援国ですが、かつては支援される側でもありました。日本の歴史や支援状況を交えながら、ユニセフと日本の関わりを解説します。
戦後の子どもたちをユニセフが支援
第2次世界大戦の敗戦国となった日本では、物資不足が深刻化しました。住宅や日用品はもちろん、食料もほとんど手に入らず、多くの子どもたちは貧困状態に陥ったといわれます。
ユニセフが日本を支援したのは、1949~1964年までの約15年です。給食用の脱脂粉乳や衣服用の原綿、医療品などが日本の子どもたちに提供されました。
1964年の東京オリンピックを経て、日本は支援される側から支援する側へと変わりましたが、2011年の東日本大震災では半世紀ぶりに支援対象となります。世界で活動していたユニセフのスタッフが日本に逆派遣され、被災地の子どもたちを支えました。
日本の募金額は世界トップクラス
ユニセフの活動資金は、各国の政府からの拠出金と人々の募金によって賄われています。日本国内で集められた募金は、日本ユニセフ協会を通じてニューヨークにあるユニセフ本部に送られます。
日本ユニセフ協会によると、2023年度の日本の募金額は306億7,589万2,252円でした。内訳は、個人からの募金が83.0%を占めています。
2019年においては、日本ユニセフ協会を通じて約170億円が拠出されました。このうち支援先や分野を限定しない「通常予算」への拠出額は、世界第1位の139億4,531万3,466円です。
また日本政府は、2023年度の補正予算よりユニセフに約4,320万米ドルを拠出する決定をしています。日本はユニセフに多くの金銭的支援をしていることがわかるでしょう。
出典:2023年度 日本ユニセフ協会 収支報告概要 | 日本ユニセフ協会
日本のユニセフ募金 2019年、米国政府拠出金を抜き世界第一位に 日本ユニセフ協会 2019年度決算発表
日本政府、令和5年度補正予算から、UNICEFを通じて約4,320万米ドルの支援を行うことを決定 | UNICEF 東京事務所
ユニセフはどんな活動をしているの?
ユニセフに集められたお金は、どのような用途に使われているのでしょうか? ユニセフの主な活動内容と活動地域を確認しましょう。
主な活動内容
ユニセフの主な活動の舞台は、開発途上国です。それらの国の多くは社会基盤が脆弱で、貧困問題や内戦問題、インフラ問題などを抱えています。適切な教育を受けられないだけでなく、栄養失調や病気、内戦によって命を落とす子どもたちが後を絶ちません。
ユニセフでは子どもの命・健康・権利を守るために、以下のような活動を行っています。
●乳幼児のケア
●HIV・エイズの治療や感染予防
●安全な水や衛生施設の確保
●栄養不良の予防
●教育機会の提供
●ジェンダーの平等の推進
●暴力や虐待などからの保護
●緊急支援
2022年度は、3億5,600万人の5歳未満の子どもに栄養不良を予防する支援を行ったほか、74億米ドル分の物資とサービスを届けました。ユニセフの活動報告の詳細は、日本ユニセフ協会のウェブサイトで確認できます。
出典:ユニセフ活動報告
活動地域と支援基準
ユニセフでは、最も支援が必要な地域を優先するため、以下の基準を重視しています。
●5歳の誕生日を迎えるまでに亡くなる子どもの割合
●国民1人当たりの所得
●18歳未満の子どもの人口
ユニセフが活動する地域は約190カ国(ユニセフ協会が活動する33の国と地域を含む)で、支援が必要な国はアジア・アフリカ・南アメリカに集中しています。
ナイジェリアやソマリア、南スーダンなどでは、長引く紛争により深刻な食糧危機が起きています。コレラやマラリアなどの感染症が蔓延する地域も多く、支援は一刻一秒を争う状況です。
国軍のクーデターによって社会が混乱に陥ったミャンマーでは、貧困化が加速しています。生命や生活の危機にさらされた子どもたちを救うには、国際社会の力が欠かせません。
ユニセフに関するQ&A
募金以外の支援やユニセフで働く方法など、ユニセフに関する疑問をQ&A方式で解説します。日本ユニセフ協会のウェブサイトを見ながら、自分たちにできることを親子で話し合ってみるのもよいでしょう。
日本ユニセフ協会とはどんな団体?
「日本ユニセフ協会」はユニセフ直属の機関ではなく、公益財団法人と呼ばれる民間の組織です。ユニセフの活動を支援する国々には、ユニセフと協定を結んだ「ユニセフ協会(ユニセフ国内委員会)」が設置されており、ユニセフと国内の橋渡しを担っています。
日本ユニセフ協会はユニセフと日本をつなぐ唯一の公式窓口として、募金活動や広報活動などを行っています。ユニセフに募金をする際は、日本ユニセフ協会のウェブサイトにアクセスしましょう。
ユニセフ親善大使とは?
「ユニセフ親善大使」とは、ユニセフが任命する親善大使の名称です。支援の輪を広げるため、無報酬でユニセフの活動に協力しています。
アジア人初のユニセフ親善大使(国際大使)は、黒柳徹子(くろやなぎてつこ)さんです。アジアやアフリカ、バルカン諸国などの支援地域に頻繁に足を運び、世界中に支援の協力を呼び掛けています。2000年10月には、「ユニセフ子どものためのリーダシップ賞」を受賞しました。
1998年4月に日本ユニセフ協会大使に就任したアグネス・チャンさんは、2016年3月からユニセフ・アジア親善大使として活動の場を広げています。
募金以外にできることはある?
募金以外にも、ユニセフの取り組みに賛同する方法は複数あります。自分がやれることから始めましょう。
●日本ユニセフが主催するイベントやセミナーに参加する
●ボランティアに参加する
●バザーやフリーマーケットで換金して募金する
●ユニセフの取り組みや世界の子どもの現状を学ぶ
東京都港区にある「ユニセフハウス」は、2022年10月3日にリニューアルオープンしたユニセフの体験型学習展示施設です。無料のガイドツアーや音声ガイドが利用できるので、親子で足を運び、世界の子どもたちの現状やユニセフの活動を学ぶのもおすすめです。
ユニセフで働くにはどうすればいい?
ユニセフで働く人は、「国際公務員(International Civil Servant)」と呼ばれる職種に該当します。高い専門性を持った「専門職」と、一般事務を担当する「一般職」があり、後者は現地採用が一般的です。就業するための条件には、以下のようなものがあります。
●英語またはフランス語で業務ができる
●大学院(修士課程)修了程度の専門知識がある
ユニセフに採用されるには、大学や大学院で自分の専門分野を極めることが重要です。国連機関の一つであるため、国際関係・社会開発・環境・人権などの知識も求められるでしょう。
ユニセフと世界の子どもの現状を知ろう
国連機関の一つであるユニセフは、子どもの権利や命を守る活動をしています。日本は戦後15年にもわたって、ユニセフの支援を受けました。途上国に支援の軸足が移った現代では、日本は募金などを通じてユニセフの活動を支援しています。
日本では日本ユニセフ協会による募金活動が活発ですが、支援方法は募金だけではありません。世界の子どもたちの現状を知り、周囲に伝えることも重要です。ユニセフの取り組みに共感できる部分があれば、自分ができる方法で応援しましょう。
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構成・文/HugKum編集部