ロシアのモスクワ郊外のテロは140人以上が犠牲に
ロシアでは3月22日にモスクワ郊外にあるコンサートホールで大規模な襲撃テロ事件があり、140人以上が犠牲となりました。この事件ではイスラム国というイスラム過激派が犯行声明を出し、世界に大きな衝撃を与えました。
また、今年1月にはイラン南東部ケルマンでもイラン革命防衛隊の幹部の追悼行事を狙った自爆テロがあり、100人近くが犠牲となり、世界がウクライナや台湾、中東に関心を注ぐなか、テロへの警戒が再び強まっています。
テロとはいったいどんなもの?
では、そもそもテロって何でしょうか。
メディアや新聞でも頻繁にテロ、テロという言葉が使用されていますが、テロとは簡単に説明すると、「政治的な主義主張、目的を達成するため、暴力や脅迫を行うこと」です。
ロシアやイランでのテロで関与が指摘されるイスラム国は、厳格なイスラム法(シャリーア)による国家統治を目指しており、その目的の達成のため欧米やイスラエル、ロシアや中国、そしてアラブ諸国の政府などを攻撃対象としています。
今日、世界の多くの国では政教分離、すなわち政治と宗教は分けて国家の運営が行われていますが、イスラム国はそもそもイスラム法による国家運営、要は宗教に基づく政治を目指しており、我々の考えや価値観とは相容れない主張を展開しており、そこに妥協点は見出せない状況です。
イスラム国の主義や目的を達成するためには、国家の破壊や政権の打倒などといった政治的な意図がありますので、イスラム国によるロシアやイランでの暴力はそもそもテロに該当することになります。
テロと一般犯罪の違いは?
また、テロと一般犯罪の違いはどこにあるのでしょうか。
外見上、両者を区別することは難しいですが、テロには政治的な意図や目的がありますが、一般犯罪には政治的意図や目的はありません。
皆さんの周辺でも傷害事件、殺傷事件などは発生しますが、そういった犯人は恨みや妬み、金銭目的など、あくまでも個人的な事情が背景にあり、それによって国家を転覆させよう、政権を破壊しようという政治的な意図はありません。政治的かどうか、これがテロと一般犯罪の違いです。
テロリストと犯罪者も意味合いが大きく違う
さらに、テロリストと犯罪者も大きく違います。テロか犯罪かの区別が難しいケースもありますが、一般的に犯罪者は犯行後に自らがやりましたと大々的に発信しません。多くの場合、犯罪者は犯行後にいつ自分が捕まるかと不安を覚えていることが多く、自らの犯罪をアピールしません。
一方、テロリストはそれをおもしろがっているかのように自らがやりましたと犯行声明を出し、今後も続けると社会に不安を与えようとします。ロシアのテロ事件でも、イスラム国はすぐに犯行声明を出しました。これが両者の大きな違いになります。
この記事のPOINT
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1,テロは、政治的意図・目的を持つ
2,テロリストは犯行声明を出し、社会に不安を与える
3,イスラム国のロシアへの攻撃⇒テロである
- 記事執筆/国際政治先生
- 国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う