出生前検査「NIPT」を実施する医療機関には「認証」「非認証」2つのタイプが。専門家に聞いた「出生前検査を受ける前に知っておきたいこと」

出生前検査とは、赤ちゃんが産まれる前に先天性疾患がないかを調べる検査です。希望すれば、どの妊婦さんも受けることができます。しかし検査を受ける前に知っておいてほしいことがあります。
認定遺伝カウンセラーで、妊婦さんとパートナーに出生前検査のカウンセリングを行っている西山深雪さんに、検査を受ける注意点などをうかがいました。

先天性疾患をもって生まれる赤ちゃんは2.29

「赤ちゃんが健康に生まれてきてほしい」という思いは、すべての妊婦さんとパートナーの願いでしょう。しかし健康な妊婦さんとパートナーであっても、赤ちゃんが病気をもって生まれてくる可能性はあります。

資料提供/株式会社PDnavi

先天性疾患をもって生まれてくる赤ちゃんは、2.29%といわれています(グラフ参照)。最も多いのは心室中隔欠損症0.43%、次いでダウン症候群0.16%、口唇口蓋裂0.15%、多指・多趾症0.15%などです。

定期的に受ける妊婦健診では超音波検査を行いますが、これは妊娠の経過が順調かを診る検査です。ときに妊婦健診でおなかの赤ちゃんに病気が見つかることもありますが、より詳しく調べるには出生前検査が必要です。

ただし出生前検査でも、すべての疾患が判明するわけではありません。生まれてから病気がわかる、または成長の過程で見つかるケースも多いです。

出生前検査には、非確定的検査と確定的検査があり、それぞれに特徴があります

出生前検査は、次の種類があります。非確定的検査で陽性になった場合は、確定的検査を検討するのが一般的な流れです。

<非確定的検査・流産のリスクなし>

  • NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査) 

採血のみ。妊娠9~10週以降に受けられる。検査でわかるのは21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミー。

 コンバインド検査

超音波検査・採血。妊娠11~13週に受けられる。検査でわかるのは21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミー。

  • 母体血清マーカー検査(クアトロテスト)

採血のみ。妊娠15~18週に受けられる。検査でわかるのは21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、開放性神経管奇形。 

<確定的検査・流産のリスクあり>

  • 絨毛検査

妊婦さんのおなかに注射をして、絨毛を採取。妊娠11~14週に受けられる。検査でわかるのは染色体の病気全般。 

  • 羊水検査

妊婦さんのおなかに注射をして、羊水を採取。妊娠15~16週以降に受けられる。検査でわかるのは染色体の病気全般。

出生前検査は保険適用外。NIPTにかかる費用は約1020万円

出生前検査はいずれも保険適用外です。検査費用の目安は、NIPTは約1020万円、母体血清マーカー検査は約2~3万円、コンバインド検査は約3~5万円、絨毛検査や羊水検査は約1520万円です。また医療機関によっては、受けられない検査もあります。

出生前検査を受ける前に、必ずパートナーとしっかり話し合いを

妊婦さんとパートナーが出生前検査を希望するのは「安心を得たい」という理由が多いでしょう。しかしおなかの赤ちゃんに病気が見つかったときのことも考えて、妊婦さんとパートナーでしっかり話し合ったうえで、出生前検査を受けてほしいと思います。おなかの赤ちゃんに病気が見つかったとき、お互いがどのような思いや考えをもっているのか、じっくり話し合ってから検査を受けましょう。

話し合いが不十分だったために、検査で陽性とわかってから初めてパートナーと意見が違うことを知るケースもあります。

専門家のカウンセリングを受けてから決断

出生前検査を検討している妊婦さんとパートナーに受けてほしいのが専門家によるカウンセリングです。カウンセリングは、出生前検査に詳しい医師や認定遺伝カウンセラーなどが、検査に関する不安や疑問に答えてくれます。結果によっては、カップルの人生において重要な決断を伴う可能性がある検査なので、不安や疑問をそのままにしないことが大切です。

日本に導入されたのは11年前。NIPTの問題点は、医療機関に認証と非認証が混在していること

出生前検査の1つに、NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)があります。日本では約11 年前から導入された検査です。流産のリスクがなく血液検査のみという手軽さからSNSでも取り上げられることが多いのですが、NIPTの問題は一定の基準を満たす認証医療機関と非認証医療機関が混在していることです。

2024年10月1日時点で、NIPTの認証医療機関は562施設ですが、非認証医療機関も増えています。非認証医療機関と知らずに出生前検査を受けている妊婦さんもいるでしょう。

NIPTの認証医療機関は、サポート体制が整っていることが特徴

NIPTの認証医療機関は、

1)臨床遺伝専門医がいる医療機関です。または、そうした医療機関と連携しています。

2)病気がある子の医療や暮らしについて詳しい出生前コンサルト小児科医と連携していることなどが認定条件であり、妊婦さんとパートナーへのサポート体制が整っていることが特徴です。

検査をしておなかの赤ちゃんに病気が見つかった場合は、専門家が妊婦さんやパートナーをサポートしながら最善の道を一緒に探っていきます。単に検査をして終わりではありません。

非認証医療機関では検査精度が低いなどの問題点も

一方、非認証医療機関は、出生前検査前後のサポート体制が不十分です。また認証医療機関の検査項目は21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの3つの染色体疾患に限定されていますが、非認証医療機関は、それ以外の病気も検査できる場合があります。しかし検査精度が低い問題点が指摘されています。

認証医療機関か非認証医療機関かわからない場合は、検査項目を確認するのも1つの方法です。また「検査をすると、おなかの赤ちゃんの性別を教える」ということも認証医療機関では行っていません。

全国のNITP認証施設が検索できる「NIPT認可クリニック検索ナビ」

出生前検査サポート&コンサルティング事業会社 株式会社PDnaviが運営する、全国のNIPT認証施設からの提供情報をもとに作成したサイト「NIPT認可クリニック検索サイト」が今月オープンしました。NIPTなどの出生前検査を検討している妊婦さんやご家族が、ご自身に合った医療機関を選択できるよう支援することを目的としています。

NIPT認可クリニック検索ナビ – powered by PDnavi>>>>>

不安なこと、わからないことは専門家に相談

SNSなどで出生前検査に関する誤った情報が発信されていることもあり、誤った情報に振り回されている妊婦さんもいます。そのため不安なことやわからないことは、かかりつけの産婦人科や認定遺伝カウンセラー®などの専門家に相談しましょう。

株式会社PDnaviでは「出生前検査ホットライン」にてオンライン相談(有料・要予約)も行っています。

「出生前検査ホットライン」予約サイト

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記事監修

西山深雪さん|認定遺伝カウンセラー

2008年 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻遺伝カウンセラーコース修了。同年認定遺伝カウンセラーを取得。外資系検査会社に入社し、最新の出生前検査技術を学んだ後、2011年京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻博士後期課程修了。社会健康医学博士。2013年国立成育医療研究センターに入職。年間1,000人以上の妊婦に対し出生前検査の遺伝カウンセリングを実施し、研究活動にも従事する。2022年出生前検査サポート&コンサルティング事業会社 株式会社PDnaviを設立。代表取締役社長を務める。*認定遺伝カウンセラーは、一般社団法人日本人類遺伝学会および一般社団法人日本遺伝カウンセリング学会の登録商標です。

出生前検査の専門家による相談支援・カウンセリング – PDnavi (pd-navi.co.jp)

取材・構成/麻生珠恵

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