非常事態宣言 延長の「ミャンマー」ってどんな国? ビルマとの違い、仏教遺跡など、この国の歴史と文化を見つめる【HugKum世界紀行】

「ミャンマー」は以前はビルマと呼ばれていました。昨今は政情不安を報じるニュースでよく耳にする国名ですが、この国には歴史や文化、自然を満喫できるスポットや見どころがたくさんあります。
この記事ではミャンマーの基本情報や有名スポット、特徴などを紹介します。どんな国なのか、さっそく見ていきましょう。

ミャンマー基本情報

まずはミャンマーの正式な国名や首都、場所などといった基本情報を確認します。

国名

正式な国名は、「ミャンマー連邦共和国」といいます。

以前はビルマと称されていましたが、1989年にビルマ連邦からミャンマー連邦共和国と改名されたことを受け、日本でも「ミャンマー」と称するようになりました。

首都

首都は、ネピドーです。(2006年までの旧首都はヤンゴン)

場所

ミャンマーは、東南アジアに位置します。隣接する国には、中国、ラオス、タイ、インド、バングラデシュがあり、南西部はインド洋に面しています。

日本との時差

日本とミャンマーとの時差は2時間30分で、日本のほうが2時間30分進んでいます。日本が午前2時30分だとすると、ミャンマーは午前0時となります。

面積

ミャンマーの面積は68万平方キロメートルです。これは、日本の約1.8倍の面積となります。

エリア

ミャンマーは7つの地方と7つの州の、合計14の行政区画に分かれています。

ミャンマーの地方行政区分 Illustrated by Aotearoa, CC 表示-継承 4.0, Wikimedia Commons

●ネピドー連邦直轄区域
ミャンマーの中央に位置し、首都があるエリアです。ウッパタサンティ・パゴダや宝石博物館などの観光スポットがあります。

●ヤンゴン地方
首都・ネピドーができるまで、ここに首都がありました。ミャンマー最大の都市で、商業と貿易の中心地です。シュエダゴン・パゴダなどの仏教遺跡があります。

●マンダレー地方
ミャンマー第二の都市と呼ばれるエリアです。伝統文化と歴史の中心であり古都や寺院が多く、仏教の重要な拠点となっています。

●エーヤワディー地方
ミャンマー最大の河川であるエーヤワディー川が流れる地域です。

●バゴー地方
歴史的な王朝の地であり、ビルマ文化の発祥の場所として知られています。

●マグウェ地方
農業と石油生産が主要産業で、とくにごまやナッツなどの栽培が有名です。

●タニンダーリ地方
南部に位置し、長い海岸線を持つエリアです。美しいマウンマガンビーチがあります。

●カチン州
ミャンマーの最北部に位置するエリアです。ミャンマー最高峰の山「カカボラジ山」や、ミャンマー最大の湖「インドジー湖」など自然の宝庫です。

●カヤー州
小さな州で、山岳地帯です。

●カレン州
タイと国境を接する州です。カイン州の住民の大部分はカレン族で、カイン・バンブーダンスが有名です。

●チン州
西部の山岳地域です。ナマタン国立公園があります。

●モン州
モン州には島、丘陵、森林、美しい海辺のリゾートがあります。またパゴダや仏像などの、歴史的な仏塔や仏像があることでも知られています。

●ラカイン州
ミャンマー西部の海岸地域です。マハムニ仏像、仏教博物館、ガパリビーチなどがあります。

●シャン州
東部に位置する州で、山岳地帯です。インレー湖、ピンダヤ洞窟といった観光スポットが人気です。

人口

ミャンマーの人口は5,114万人(2019年、ミャンマー入国管理・人口省発表)です。これは、東京都の人口(約1,400万人)の約3倍の数となります。

市街地を走るバス

言語・公用語

ミャンマーの公用語はミャンマー語です。そのほかシャン語、カレン語などが使われています。

通貨

ミャンマーの通貨単位はチャットです。日本円にすると、1チャットは0.06710円です(2024年9月13日現在)。

宗教

ミャンマーの人々が信仰する宗教は、仏教、キリスト教、イスラム教などです。

歴史概略

諸部族割拠時代を経て、11世紀半ば頃に最初のビルマ族による統一王朝「パガン王朝」が成立しました。その後、タウングー王朝、コンバウン王朝などを経て、1886年に英領インドに編入。

1948年1月4日にビルマ連邦として独立しましたが、その後も多数の民族グループによる自治要求や武力闘争で政情は不安定でした。

1988年以降、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が軍事政権に対する民主化運動を展開してきた結果、2011年には一部で民主化が進みましたが、2021年に軍は再びクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏やNLDの主要メンバーは拘束されます。

クーデターに抗議するNLD支持者たち Photo by Maung Sun, CC 表示-継承 4.0, Wikimedia Commons

このクーデターから4年目となる2025年1月31日、軍はクーデターの際に発した非常事態宣言を半年間延長すると発表。国内の民主化運動と軍との対立はいまもなお続いています。

天気・気候

ミャンマーの首都・ネピドーと日本の首都・東京をくらべると、ネピドーは最高気温が年間を通じて30℃以上と高く、5月中旬から10月中旬ごろは雨季となり降水量が多くなる傾向にあります。

ミャンマーの治安・住みやすさ

ヤンゴンの街並み

ミャンマーの治安や住みやすさを解説していきましょう。

治安は不安定

ミャンマーの治安は不安定です。外務省の危険情報では、ミャンマー全土に「レベル3:渡航中止勧告」「レベル2:不要不急の渡航中止」が発令されています。

各地で国軍と国軍に反対する民主派勢力との衝突が発生しているため、注意が必要です。

住みやすいとはいえない

ミャンマーは治安が不安定であることや、インフラが未整備な地域が多いことなどから、住みやすいとはいえないでしょう。

ミャンマーの見どころ・観光

ミャンマーにはたくさんの見どころや観光スポットがあります。代表的なものを紹介していきましょう。

シュエダゴン・パゴダ

黄金の輝きを放つパゴダ

シュエダゴン・パゴダは、ヤンゴンの小高い丘の上に建つ仏教寺院です。ミャンマーでもっとも神聖な仏教寺院とされており、2,500年以上の歴史を持つとされています。

見どころは、黄金に輝く巨大なパゴダ。このパゴダは、黄金の国ミャンマーの象徴となっています。

バガン遺跡

2019年に世界遺産に登録された「バガン遺跡」

バガン遺跡は、11世紀から13世紀にかけて繁栄した仏教王国の遺跡群で、世界三大仏教遺跡のひとつです。

約40キロ平方メートルの広大な原野に、2000とも3000ともいわれる寺院や仏塔が林立しています。アーナンダ寺院、シュエズィーゴン・パゴダ、ダマヤンジー寺院といった仏教建築を見ることができます。

マンダレー王宮

19世紀に建設された「マンダレー王宮」

マンダレー王宮は、ミャンマーの最後の王朝「コンバウン王朝」の王宮です。広大な敷地に王宮や塔が立ち並んでおり、マンダレーの歴史と文化を感じることができます。

インレー湖

夕日も美しい「インレー湖」

インレー湖は、シャン州に位置する高原湖です。浮き畑や伝統的な足漕ぎ漁法を行うインダー族の人々の生活を見ることができます。

湖上の村や市場、ガーペー僧院なども観光スポットとして人気です。

ミャンマーの特徴・有名なもの

ここからは、ミャンマーの特徴や有名なものについてご紹介します。

首都ネピドーの市場 Photo by mohigan, CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

国名の由来

「ミャンマー」という国名は、現地語で「マラガシュ」といいます。このマラガシュには「山の民(山の人々)」という意味があり、それが由来とされています。

またマルコ・ポーロが、ソマリアのモガディシュという港を「ミャンマー」と聞き間違え『東方見聞録』に記載したという説もあります。

国旗の意味

ミャンマーの国旗には、赤、白、緑の3つの色と星がデザインされています。赤と白はマレー系民族を、緑はマレー以外の民族を表しています。

ミャンマーの国旗

また色にはそれぞれ意味があり、赤は愛国と主権を、白は純潔と自由を、緑は希望と進歩を象徴しているといわれています。中央にデザインされた星には、ミャンマーが地理的、民族的に一体化する意義が込められています。

アウンサンスーチー氏

ミャンマーの民主化運動の象徴的人物として世界中に知られているのが、アウンサンスーチー氏です。

アウンサンスーチー氏[首相官邸ホームページ] CC 表示 4.0,Wikimedia Commons

アウンサンスーチー氏は「同国の民族が調和して協調できる民主的社会の確立」に貢献した功績が評価され、1991年にはノーベル平和賞を受賞しています。

ルビーの産出国

ミャンマーは、ルビーの産出国

ミャンマーは、ルビーの産出国として知られています。

とくに「ピジョン・ブラッド」と呼ばれるルビーは、光沢感・輝き・透明感が美しい深紅色のルビーです。ミャンマーにあるモゴック鉱山では、世界最高品質のルビーが産出されます。

[まとめ]仏教文化の魅力とともに、世界に注目されるミャンマー

ミャンマーは、黄金の仏塔や仏教遺跡が多く、豊かな自然や歴史的な魅力にあふれる国です。

首都ネピドーや経済の中心地ヤンゴン、伝統文化が息づくマンダレーなど、各地に多くの見どころがあります。シュエダゴン・パゴダやバガン遺跡、インレー湖などは、世界中の旅行者にとっても人気のスポットです。

少数民族の自治要求や民主化運動など長期にわたる政情不安があり、未だ解決の糸口は見えていませんが、民主化という目標に向かって多くの人々が戦っているミャンマーから、私たちは目を離せません。

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文・構成/HugKum編集部

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