【教えて!】栗のイガイガは何のため?
秋の山歩きを楽しむリカちゃん一家。おや、リカちゃんが何か見つけたようですよ。栗のイガイガが不思議でしょうがないようです。
栗のイガイガは何のためにあるのでしょう。あんなイガイガがある植物の実は他に見たことがありません。
今回は栗のイガイガの秘密を探ってみましょう。
【ゆーまん博士が説明】栗の「皮」と思っていたところは実は・・・
栗の花には雄と雌があり、まるで形が違います。
雄花はススキの穂が開いたような細長くフワフワした形をしています。一方の雌花は、雄花の根元に付いています。雄花よりもずっと小さく丸い実のようです。その丸い実の先に小さく咲くのが雌花です。
雌花の丸い部分は、表面に栗のイガイガを小さくしたような突起で覆われています。この凸凹が実をつける時にイガイガになるのです。
栗を覆うイガイガな皮は総苞(そうほう)、イガのことは刺毛と呼びます。果物の実であれば、総苞は果物の皮にあたります。
イガイガが皮なら、実は? 栗の実を割った白い部分だと思うでしょうが、違います。栗の茶色の固い殻(鬼皮)、あれが果肉なのです。スイカなら赤い実の部分が栗の殻になり、スイカの黒い種が栗の殻をむくと出てくる白い実です。あの白い実が種なのです。
イガイガだけではなく、雄花と雌花があったり、果肉が種の皮のように固かったり、いろいろ不思議な栗なのです。
栗のイガイガって必要なの?
ちなみに栗はブナの仲間ですが、どんぐりにはイガイガはありません。栗のように種を食べる植物には、アーモンドやクルミがあります。
では栗のイガイガは何のためにあるのでしょうか? パッと思いつくのは、動物から種を守るためでしょう。イガイガがあると動物は敬遠しそうです。
ところが栗の実は、熟すとイガイガ部分の総苞がキレイに4つに割れて種が表に出ます。動物から守るためのイガイガなら最後まで種を守るべきですが、種が熟しておいしくなったら割れてしまうのでは役に立ちません。動物は種を食べ放題です。
イガイガは動物から種を守るためではないようです。では何のため? 虫から種を守るためとも考えられます。虫にとっても、あのイガイガは邪魔そうです。
ところが『クリ毬果のとげを食害する昆虫について』(日本応用動物昆虫学会誌 第21巻第1号 1977年)によると、なんと栗のイガイガを食べる虫は15種類もいるそうです。虫にとってイガイガは食料になるようです。
おいしさゆえの防衛
栗のイガイガの役割は、実が熟れてからではなく、その前、まだ実が熟していない時に動物や虫から実を守るためではないか? と考えられています。
それというのも、同じブナ科のどんぐりはタンニンという植物の作る苦味と渋みが大量に含まれています。よほど渋抜きをしないと食べられません。これは動物や虫にとっても同じで、彼らは熟して渋みが減ったどんぐりは食べますが、まだ青い実には見向きもしません。タンニンは動物や虫から実を守ってくれる大事な成分なのです。
ところが栗の実にはほぼタンニンが含まれないのです。栗がおいしいわけですね。しかしそれは動物や虫にとっても同じことです。
実が熟してから食べられるのは、植物の宿命です。それは食べきれない数の種を作ることでカバーします。栗の殻が割れて実が表に出るのは、食べられてもいいので、スムースに発芽するためです。しかしまだ実が青いうちに食べられてしまったら、栗は全滅します。
イガイガで身を守る栗ですが、上には上がいます。ゾウムシです。ゾウムシは長い口でイガイガを避けて栗の実に穴を開け、卵を産み付けます。孵った幼虫は中身を食べてしまいます。
栗ががんばってイガイガを身につけても、長い口を持つゾウムシには効かなかったということです。しかしイガイガがなかったら、もっとたくさんの虫や動物に食べられていたことでしょう。私たちが栗を食べることができるのも、イガイガが栗の実を守ってくれたおかげかもしれません。
ゆーまん博士のワンポイント
●栗の実にはタンニンが含まれず、熟す前からおいしい
●タンニンがないので、防御しないと栗の実は食べられ放題
●栗のイガイガは熟す前の実を守るためにある
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構成・文/川口友万 漫画/まめこ