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「野菜を好きになる保育園 ベジ・キッズ」が2019年4月にオープン!
からだの成長が著しい子ども時代は、毎日の生活の中でバランスよく栄養を摂り、健康に育ってほしいもの。けれども、子どもの野菜嫌いに悩むお母さんは多いものです。
そんなお母さん方の参考になりそうな「食育」の取り組みをしている保育園が、2019年4月、東京都内にオープンしました。
その名も「野菜を好きになる保育園 ベジ・キッズ」という、この園は食品メーカー「カゴメ」が、ナニーサービスで知られている「ポピンズ」に運営を委託し、開園した話題の保育園です。
開園のきっかけは「カゴメ」社内における起業募集だったそう。実際に子育て中の従業員たちから出てきたアイデアを基にコンセプトを決定。基本的な保育を第一に、食育を日常的に行ない、食べることの大切さを伝えていくことをテーマに保育を行なっています。
今回は、オープンから4か月が経つ同園へ取材を敢行! 園で実践している野菜を好きになるための取り組みを紹介します。ご家庭で真似できる食育のポイントが満載です!
野菜と触れ合いながら、そのおいしさや楽しさ、大切さを学ぶ毎日
「ベジ・キッズ」は、「カゴメ」の東京本社からは徒歩3分。日本橋浜町にあります。
保育対象は0歳~2歳児で、定員は19名。「カゴメ」の従業員枠と地域枠(中央区近隣に在住・在勤者)両方での利用が可能となっています。
ビルの1階にある園内は野菜をイメージしたカラフルな色と形がデザインのアクセントになっていて、アットホームな雰囲気。保育室の中央には、オープンキッチンが設置されており、子どもたちは栄養士さんが食事を作る様子を常に眺めることができます。
キッチンと対面して園児の手洗い場が設置されており、子どもたちは手を洗いながら、自然な流れの中で栄養士さんとガラス越しにコミュニケーションをとることもできます。
「ベジ・キッズ」の社内プロジェクトチームのリーダー、飛石希さん(「カゴメ」経営企画室)は、開園の動機を次のように教えてくれました。
「子育て中の女性社員から複数の聞き取りをしたところ、《子どもとの交流時間が少ない》《きちんとした食事を食べさせたいが、なかなか作ることができない》といった意見が多くありました。私自身も3歳になる娘がいまして、その切実な思いが痛いほどわかりました。そこで、私が働いている間に食育を日常的に行ない、食べることの大切さを伝えることができる保育園があったらいいいなと思いました」
給食は一日に必要な野菜量の約半分を使用し、提供
「ベジ・キッズ」では、子どもたちが野菜を好きになるさまざまな取り組みが行なわれています。
まず、毎日の給食メニューには、子どもたちが一日に必要な野菜量の約半分を使用し、提供することを目指した献立となっています。
毎日、3時のおやつで「一口野菜」を
また、その日の昼食に出た野菜は、「一口野菜」と称して、3時のおやつの時間にもう一度食べる機会を設けています。
「園で多めの野菜を摂取していれば、家庭で朝と夜のごはんで、多少野菜が不足した日もママたちが安心でしょう。だから野菜を多めに取り入れています。《一口野菜》はランチに出た野菜を茹でたものです。野菜本来の味を味わってもらいたいので、味付けはしないで、そのまま味わってもらっています。」(飛石さん)
同園では、このほかに毎週木曜日と、給食で野菜の提供量が少ない日に、朝のおやつの時間に「野菜ジュース」をみんなで飲んでいるとのこと。甘いジュースの味をまだ知らない幼い時期に、野菜100%ジュースに親しむことで、野菜ジュースが日常的に飲めるようになることを目指しています。
取材した当日も、朝には野菜ジュース(カゴメの「野菜一日これ一本」を水で3対1で薄めたもの)をせんべいと一緒に、3時のおやつには、かぼちゃの水ようかんとりんご、牛乳とともに、昼食に出たカブの「一口野菜」を食べていました。
開園からまだ2ヶ月ですが、お友だちとみんなでいっしょに食べるので、嫌いな野菜も楽しく食べる子どもが多いそう。集団保育の良さが活かされています。
五感を使って野菜に親しむプログラムを実施
栽培キットでトマトを育てる
「ベジ・キッズ」では、野菜に日常的に触れるカリキュラムも展開しています。
たとえば、園の外では「カゴメ」が販売する「トマト栽培キット」によるトマトの栽培を行なっています。これはミニトマトの苗とトマトの土がセットになったもので、プランターが不要で袋のまま水やりをするだけで簡単にトマトを育てることができます。
子どもたちは、毎日、この小さな畑に水やりをしながらトマトを育てています。やがて熟したところでトマトを自ら収穫し、一緒に調理に参加をして食べる予定です。そうすることで、トマトが食べられるようになるまでには、時間や手間がかかることがわかるだけでなく、自らが育てたトマトに対しては愛着をもって食べる感動が味わえると考えています。
「私自身もこのキットを利用して、3歳の娘とミニトマトを育てました。忙しい朝でも水やりのたった5分間が、親子でふれあう貴重な時間になりましたし、何より娘の成長の発見がありました。ぜひ、《ハグクム》読者の皆さんにも、体験していただけたらうれしいですね」と、飛石さんもその効果を実感しているようでした。
キャベツの葉をはがす、グリーンピースのさや出し…。給食に使う野菜を見て、触って実感
また、同園では給食に使う野菜を使って、野菜とふれあう体験をほぼ毎日行なっています。
たとえば、ある日にはキャベツを丸ごと子どもたちに見てもらったうえで、それを半分にカットして中身を見せたり、葉っぱを1枚ずつはがしてちぎったり。またある日には、グリンピースをさや付きのまま見てもらい、その後に中身の豆を取り出したり……という具合。
目で見て、手で触れ、匂いを嗅いだあとは、それを昼食時に舌で味わいます。まさに五感を使って、日常的に野菜と親しんでいるのです。
そういったカリキュラムを日頃から体験しているからでしょう。園児たちは皆、給食の時間にとても落ち着いていて、食べることにとても意欲的でした。
園では、今後「夏まつり」の際に、“目方でポン!”と称して、1日に必要な野菜がどの程度の量なのかを、親子で実際に確認してもらうイベントも予定しているとのこと。野菜と自然に親しむ仕組み作りができた保育園の取り組みは、ご家庭でも参考にできるところが多いですね。
取材・構成/山津京子