モデルの鈴木えみさん「娘に読み聞かせた性教育の絵本をInstagramに投稿したら、思った以上の反響が」性教育イベントに力を入れる理由と、目指すゴール

HugKum読者世代が子どもの頃は、性の話題が世間や家庭内でもタブーで、話題にしにくい時代。けれども、毎日の子育ての中で、実はいろいろな形で密接に関わる性について、「子どもにどう伝えたらいいのか」と悩む親御さんも少なくないはず。
あらゆる情報が手に入る今、正しい性教育に触れる機会を増やしみんなで知ろう、と「いのちの授業『Family Heart Talks』」の活動を始めた人気モデルの鈴木えみさんにお話を伺いました。ご自身も小学生の娘をもつママで、当事者として問題意識をお持ちです。

子どもへの性教育、誰にも相談しにくい悩みだから、自分たちでその機会を作ってみた

――先日、8月末のイベントで、えみさんと産婦人科の坂本愛子先生の対談を拝聴しましたが、親の回・子の回と2部制で託児付き、小学生や未就学児の小さなお子さん連れのパパさん、ママさん、多くのご家族連れで盛況でしたね。会場も柔らかな雰囲気で、皆さんが真剣に耳を傾けているのが印象的でした。

鈴木えみさん:ありがとうごさいます。そう言っていただけて嬉しい。これまで私は、特定の性教育イベントに参加したことはないんですが、なんとなく堅かったり敷居が高かったりするイメージを持っていました。性教育に関心があっても、意識が高い方しか行かなかったら、それこそ、日本の性教育ってまだまだ問題だなと感じています。なるべくハードルを下げて、 「包括的な性教育ってどういうことなんだろう?」って考えるきっかけを持ってほしいという思いから、このイベントを企画しています。

――このように、性教育に関する活動をするようになったきっかけとは?

鈴木さん:小5の娘がいるのですが、私自身の子どもの頃の経験なども影響して、割と幼い頃から性教育を始めたいと思って、早くから続けてきました。4歳ごろから性教育の簡単な絵本から読み聞かせを始め、それらの絵本をSNSにアップしたところ、すごい反響があったんです。その時のコメントを読んで、同世代の親たちは、やっぱりみんな同じように困ってるんだなと実感しました。性教育してる?とか、ふだん幼稚園など親同士でも話さないし、各家庭の方針もあるから、相談したくても聞けない雰囲気があって。

子どもが小学生になり、ある程度学校の授業で扱ってもらえると期待していた部分があったのですが、娘の学校のそれは、私にとって物足りないレベルだと感じました。学校の先生にもどんな内容かを問い合わせた結果、家庭でしっかり伝えていかなきゃ、と実感。

我が家は一人っ子なので、性教育だけでなく子どもの教育のあれこれに、特に私が集中しちゃうところがあるんです。幼児教育や性教育に関して、すごく興味を持ち始めたことを色々と調べていると何気なく話した時に、「じゃ、私たちでやろうよ」って声をかけてくれた友人がいて、すごいスピード感で今のチーム「Family Heart Talks」が集まり、始動しました。現役ママさんたちがメインメンバーです。

――8月のイベントは満員御礼で、親御さんたちの注目度の高さに驚きました。

鈴木さん:プロジェクトチームを結成してからあっという間に、先日の8月のトークイベントで4回目。次回は熊本での開催が決まっていたり、企業のクローズドイベントで社員向けに、保育園に出張講座に行ったりと、どんどんお話をいただくようになり、やっぱり皆さんの関心があると改めて手ごたえを感じています。

私のような立場で、性教育を表に出て語る人って、今まであまりいなかったのかもしれません。私自身、性教育は早いに越したことはないと思って、イベントのメインターゲットは3歳~8歳くらいでもわかるように設定しています。

パパの参加率や質問挙手率も高い! 家族で性教育をアップデートして

――今までのイベントを経て、参加したご家族の反響はどうですか?

鈴木さん:毎回、私が母親目線のナビゲーター役、専門的な話ができる先生・監修者をお招きしてるので、満足度が高いアンケート回答や参加者のリアルな声をいただいています。やらなきゃいけないと、すごくざっくり考えてスタートしてみたら、「そんなことも大事だよね」とか「自分の子が被害者になる可能性」、「知識がないと加害者にもなりうる」など、家庭内で性教育の知識や性の認識が芽生えたり、イベントが終わってからも家庭で話すきっかけへと伝わっている気がします。

お父さんの参加率や質疑応答の挙手率も高いですね。お父さんと娘で出かけた時ならではの悩みなど、そういう着眼点もイベント参加者みんなで聞けて、悩んでいるのは自分だけじゃないんだ、と一体感も生まれますし、来場者同士のコミュニケーションにもつながっています。

――えみさん自身は、子どもの頃、家庭や学校でどのように性教育について教わっていましたか?

鈴木さん:どういうレベルだったかは記憶になく、おしべ・めしべ、みたいな程度…。避妊具のつけ方を学校で習った気もするけど、男子たちが終始ふざけてた記憶ばかり。子どものころから、思春期にホルモンバランスが変化して、成長期を経て体が大人に変化します、月経が始まる、精通がある、というところは学ぶ。その次にもう、急に妊娠の話にいっちゃうんですよ。妊娠、避妊は取り上げるけれど、その間、どうしたら妊娠するのかっていう具体的なところは教えない学校が多い気がします。
みんなの体が成長して、いろんなことに興味が湧いて、自分の体も変化する。避妊や妊娠、出産に関する知識がないままでは、危険なことを犯すこと、被害者・加害者になりうること、知識があれば回避できることもあるんです。でも、なかなか学校でそこまで性教育を網羅するのは実際難しいとも思うので、家庭内でやるしかないですね。

自分の体を大切にすることも、相手を大切にすることも、性交渉にまつわることだけじゃなくて。 私たちのメインターゲット層の3歳から8歳の子たちには、プライベートゾーンについてをまず、教えることも重要です。自分の普通は相手の普通じゃないから、同意を得ることも教えています。同じことをされてもいい日とオッケーな日とダメな日、嫌な日があるよねとか、 見せても、触らせても、触ってもダメなんだよっていうことだったり。法律も変わってきてるので、本当にダメなことは何か、家庭で主体性を持って教えて、情報をアップデートしておくことも必要ですね。

――先日も小学校で起きたという、悲しいニュースがありましたね。

鈴木さん:大人同士の間で同じことが起きたら、って考えるとすごくいけないことだ、性犯罪だと認識しやすいのに、子ども同士で起きた件、学校内でおきた件だと、感じ方や捉え方が重大ではなくなってしまうこともありうるので、 私はふだん、子どもが何か相談してきた時に、それがもし大人同士で起こったことだったら、と置き換えて考えようにしています。断然、理解しやすくなりますよ。

何十年後かには、「性教育」なんて特別扱いの教育でなく、当たり前のことになっていて欲しい

――いのちの授業「Family Heart Talks」では、今後どのように活動されるのでしょうか?

鈴木さん:今までのように、性教育や性の現場でお仕事をされている専門家をたてて、対談、トークショーなどのイベントは続けていこうと思っています。基本的には専門家の医師や助産師さんの登壇が多いから、 先生の数だけ考えがあって、また違う側面を知ることができるので興味深いです。

他には、SNSを使って、性教育に関心を持った方にさらにもっと知ってもらえるような知識、Q&A形式などでの発信を企画しています。イベントは盛況で、この活動を立ち上げてから度々開催してきましたが、参加人数にに限りはあるし、どうしたって 私に興味ある人や性教育に興味ある人が多くなりがちなので、そうではないところまで興味関心を持ってくれる人を広げるにはどうしたらいいんだろう、っていうのが私たちの今後の課題ですね。

あとは、何か教材やグッズを作って展開したいですね。性教育関連アイテムが定期購入で届いたら、教え方がわからない保護者や教育機関の大人も、導入しやすいのかな、と色々計画しています。

小学校などに派遣して、子どもたちに性教育を教える中高生のお兄さん、お姉さんチームなども、作れたら楽しいですね。年齢が近い方が子どもたちに話が届くので、加速度的に『いのちの授業「Family Heart Talks」』を拡大させたいです。

――今後、活動の広がりやムーヴメント、最終ゴールはどんなことでしょうか?

鈴木さん:「性教育」っていう言葉がなくなればいいですね。それが当たり前になるくらい、 特別枠でなく、本当は義務教育内で詳しくやってくれたらと思ってるんですけど、まだまだちょっと時間がかかる気がします。例えば50年後の子どもが、昔ってわざわざ「性教育」なんて言葉を使ってたの、ダサい!と笑われるくらい、フツーの常識になっていて欲しいです。

いちばん最初にこのチームが発動した時、 被害者って言ってるけど、被害者をなくすには加害者をなくさないといけなくて、加害者をなくすためには、 本当に広~く知識が行き渡るようにしないと意味がないという意見を述べたチームメンバーがいて、まさにその通りだなと思いました。

何か被害があった後のことばかりみんなは考えるけど、病気などと一緒で、 どうやって防ぐかっていうところのほうがむしろ大事なのではないでしょうか。

――確かに、そうですよね。拝見したイベントの雰囲気が柔らかく入っていけたのも、多分そこなんですよね。加害者・被害者前提では、何か良くないことが起きちゃった後だけれど、その前に悲しいことは起こさない、そのために1人でも多くの人が知っておこう、ということですね。そして、誰もが、加害者・被害者にいつなるかもわからない…。

鈴木さん:そうなんです。知識があれば、加害からも被害からも危険回避できるし。小さなお子さんでも、プライベートゾーンのことを教えておけば、悪気がなくてうっかり被害を与えてしまう側になることもあるけれど、絶対にこれはダメっていうのは教えておくべきでしょう。それは保護者に責任があることだと思います。まず、おうちで、どんなことからでもいいので、性教育の情報を調べたり、お子さんと考える時間を持ってみてはいかがでしょうか。絵本でもイベントでも、何かきっかけを見つけてみてください。

こちらの記事では、鈴木えみさんがご家庭でどんな性教育をされているか、語っていただきました。

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令和の今も私たち親世代の頃のギモンが残り…。身近な場面で感じる性の問題をそのままにしてはダメ ――現状の性教育の、なんだかおかしいな?とか...

お話を伺ったのは

鈴木えみさん

モデル / クリエイター / デザイナー
1985年生まれ。1999年に雑誌「SEVENTEEN」の専属モデルとしてデビュー後、数多くのメディアで活躍し、同世代のアイコンとして人気を博す。デザインプロジェクト「Lautashi Design」のディレクター、クリエイターとしての活動も多岐に渡る。
プライベートでは一児の母。子育ての経験から幼少期における教育の大切さを実感し、「いのちの授業『Family Heart Talks』」を発足させ、性教育の重要性を発信。
公式インスタグラム ⇒ https://www.instagram.com/emisuzuki_official/
いのちの授業「Family Heart Talks」、詳しくは ⇒ https://www.instagram.com/family_heart_talks/

【服クレジット】
ドレス¥90,200(シーエフシーエル/シーエフシーエル オモテサンドウ)、左耳上¥81,400 、下¥275,000(ヒロタカ/ヒロタカ 表参道ヒルズ)、右耳¥20,900(ヒロタカ/ビームス 六本木ヒルズ)

【問い合わせ先】
シーエフシーエル オモテサンドウ 03-6421-0555
ビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623
ヒロタカ 表参道ヒルズ 03-3478-1830

撮影/田中麻以 ヘア&メイク/kyoko スタイリスト/鈴木美智恵 取材・文/羽生田由香

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