【30億件の学習データから検証】なぜ同じ授業を受けても差がつくのか。勉強ができる子の学び方に共通する「乗り越え力」を分析

『小学生30億件の学習データからわかった 算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』の著者で、タブレット教材 RISU Japan 代表・今木智隆さんの執筆によるシリーズ記事。今回はズバリ「できる子の学習法則」についてです。

同じ学校の授業を受けているのに、勉強ができる子とそうでない子がいるのはなぜでしょうか?  RISUの30億件に及ぶ学習データの分析から、「できる子の学習方法」には共通するポイントがあることが明らかになりました。それは、個人の能力、つまり才能や記憶力の差だけでなく、「できない」ことに直面したときの対処法が大きく異なるという点です。

今回は、成績が伸びる子の勉強に対する姿勢を通して、学力を伸ばすために重要なポイントをご紹介します。

成績を分けるポイントは「苦手」への向き合い方

RISUの学習データを見てみると、勉強ができる子は、苦手にぶつかったときに諦めるのではなく、くり返し再挑戦しています。一方で、勉強が不得意な子は、苦手分野を避けるなど、そのままにしている傾向がありました。

つまり、両者の違いは苦手な分野に対するアプローチにあるといえます。

できる子は「苦手を放置しない」

勉強ができる子とできない子の大きな違いは、苦手を放置しないことです。苦手なことに直面すると、多くの人は避けたくなるものですが、勉強ができる子はできないままにせず、自分の弱点にしっかり向き合います。

例えば、算数で「分数」が苦手な子がいるとしましょう。最初に習う分数の概念が分からないまま次に進んでしまうと、分数の計算や文章問題にも対応できなくなり、分数の単元自体が嫌いになってしまいます。最初は「ちょっと分からない」程度だったことが、次第に「苦手」に変わり、最終的には「嫌い」となって放置されてしまうのです。

勉強ができる子は、分からない部分をそのままにせず、理解できるまで学習を繰り返す傾向があります。どうして問題が解けなかったのか、原因を追求し復習を重ねることで、確実に理解を深めていきます。

できる子もできない子も「つまずく単元は皆同じ」

成績が伸びている子はどの単元も初めからできていると思われがちですが、実はそうではありません。RISUの30億件に及ぶ学習データから、ある単元に費やす学習時間の平均を調査したところ、できる子とできない子で学習時間に大きな差はありませんでした。

つまり、勉強ができる子だからといって、初めから学習内容をスムーズに理解し、特別な速さで習得しているわけではなく、皆が同じスタートラインから始めているのです。

全国トップレベルの成績をおさめる子も、そうでない子も、難しい単元に入ると最初は同じようにつまずく傾向があります。例えば、小学校算数の「位」や「図形」などの単元は、多くの生徒が苦戦するポイントです。しかし、成績を伸ばせる子は、つまずきに早めに気づき、苦手を克服しようと向き合っているのです。

「できない」を「できる」に変えるポイント3選

「できない」を「できる」に変えるには、ただ問題を解くだけではなく、その背景にある学習プロセスに目を向ける必要があります。つまずきに対する適切なフォローや、勉強への向き合い方を変えることが学力向上への第一歩です。

ここでは、学習への取り組み方のポイントを3つお伝えしていきます。

小さなつまづきを残さない「粘り強い学習」

「分からなかったことが、気づいたら分かるようになっていた」ということは、勉強においてはないと言ってよいでしょう。例えばピアノの練習でも、弾けなかった曲をいきなり完璧に弾けることはなく、何度も繰り返し練習することで少しずつ上達します。勉強も同様で、問題の解答を見てただ書き写すだけではなく、なぜその答えになるのか、どうしてこの式を使うのかなど、納得できるまでとことん向き合うことが大切です。

特に重要なのは、分からない部分をなくすという強い意思です。理解できていない箇所をクリアにしていないと、その小さなつまずきが後の学習に大きな影響を与えることになります。100点を取るまで諦めない、という強い気持ちで粘り強く取り組むことで、弱点を克服する力が身についていくのです。

基礎固めがポイント「算数の積み上げ学習」

算数は積み上げ型の教科のため、前の学習が次のステップに直結しています。そのため、算数の基礎がしっかりしていないと、その後の単元が理解できなくなる恐れがあります。小学校の算数は特に重要で、基礎を固めておかないと、後々の抽象的な概念や複雑な問題に対応できなくなるのです。

なかなか理解できない単元や、何度も間違える問題に直面したときは、つまずきの原因となっている基礎的な内容まで戻り、学習し直すことがポイントとなります。場合によっては何学年も前の内容に戻って復習する必要があるかもしれません。しかし、思い切って立ち返り苦手を潰すことで、おのずと突破口が見えてきます。

学力向上のカギは「小さな成功体験」の積み重ね

「自分ならできる」という自信を育むためには、小さなことからでもかまわないので、まずは挑戦してみる姿勢がとても大切です。

課題に対して挑戦し、自分で解決できたという経験は、脳内で達成感を引き起こす物質が分泌され、その成功体験が脳に強く記憶されます。さらに、自分の意識としてもこのような経験が自信を育むことで、次の挑戦に対するモチベーションを高められるでしょう。ポジティブな経験を積み重ねることで、勉強が楽しくなり、できないことにも自信を持って立ち向かえるようになります。

この繰り返しが学力向上の鍵となります。

成績を伸ばす「乗り越え力」を高める方法

成績が伸びる子には「乗り越え力」があると、RISUでは考えています。乗り越え力とは、つまずいたとき放置せず、確実に理解して前へ進む力のこと。ここでは、乗り越え力を高めるためにできることを2つ紹介します。

テスト結果を活用して弱点を分析

テストが戻ってきた後、結果に一喜一憂するのではなく、ぜひ復習に活用してください。テストは、理解しているところ・苦手なところを把握するのにとてもよいツールです。テスト結果がよくないと、ガッカリする気持ちは分かりますが、間違えたところをしっかり確認して、その日のうちに解き直しをしましょう。

苦手克服を目的に、長期休みに「総復習」としてさまざまな単元の復習する場合もあるかと思います。しかし、広範囲にわたる復習は時間がかかるだけでなく、中途半端にしかこなせず結局苦手が残る可能性があります。

そのため、苦手部分の洗い出しはその都度行うほうが効率的です。ぜひ、テストが戻ってきたらすぐに間違えた部分を見て「何が分かっていないのか」を把握するようしましょう。

ポジティブな声がけで親がサポート

乗り越え力を高めるには、保護者の方のサポートも重要です。子どもによっては、何が苦手なのか自分自身では分からなかったり、すぐに諦めたりしがちです。子どものつまずきが見えたら、「もう1回やってみよう」「この問題を解き直してみよう」といったポジティブな声掛けをしましょう。

もし、子どもがなかなか問題を理解できなくても、叱らないよう気をつけてください。ついイライラしてしまいますが、そこはぐっと堪え、励ましの声掛けに徹することがポイントです。

また、子どもが「答えを教えて!」と言ってきた場合も要注意。答えを言ってしまえば親もラクですが、子どもが自分で問題を解いてこそ意味があります。ヒントを与える程度にし、基本的には見守る姿勢が大切です。子どもが自分で課題をクリアできたら、「よく頑張ったね」と努力の過程を褒めるのも忘れないようにしましょう。

【まとめ】「できる子」のカギは乗り越える力

勉強ができる子とできない子の大きな差は、苦手なことに対しても諦めずに挑戦する姿勢や、乗り越え力の高さにあることがRISUの膨大な学習データから読み取ることができました。

最初はどの子もスタートラインは同じです。しかし、学習への取り組み方や勉強に対する考え方の違いで、成績に大きな差が生まれることがあるのです。効果的に学力を高めていくためには、つまずいてもその都度苦手を克服し、粘り強く取り組むことを意識しましょう。

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記事執筆

今木智隆|RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。ユーザー行動調査・デジタルマーケティングのbeBitにて国内コンサルティング統括責任者を経験後、2014年、RISU Japan株式会社を設立。小学生の算数のタブレット学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムを考案。国内はもちろん、シリコンバレーのスクール等からも算数やAI指導のオファーが殺到している。HugKumでの過去の記事はこちら≪

〈タブレット教材「RISU算数」とは〉

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文響社より2023年7月6日刊行

構成/HugKum編集部 

 

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