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おりがみは遊びながら算数の基礎を育む知育教材
幼稚園で分数の感覚が身に付く
――おりがみと算数にはどんな関係がありますか?
大迫先生: おりがみは遊びながら数学的な感覚や思考力を育てる知育教材です。幼稚園の子どもたちに分数を教えるのは難しいですが、「半分に折って、さらにもう一度半分に折る」動作を通じて、自然に、小学2年生で習う「2分の1」や「4分の1」の感覚が身に付きます。

――大迫先生は、教室や書籍の監修などでおりがみを学びに取り入れていらっしゃいますね。
大迫先生:日本では、伝統的な遊びの印象が色濃いおりがみですが、韓国や中国では知育教材としてしっかり活用されているんですよ。平面の紙が立体になり、さらには動いたり飛んだりするなんて、子どもはワクワクすると思いませんか。「どうやってこの形を作るのかな?」と考える時間は想像力を育ててくれます。

図形認識力がつき、三角形や四角形の特徴が分かる
―― おりがみが算数力アップにどのように役立つのか教えてください。
大迫先生:まず図形形認識力がつきます。おりがみを折ると、三角形や四角形などの形が目の前でできあがるので、特徴やバランスがわかるようになるんです。この感覚を、4年生で本格的に図形を学ぶ前に身につけておくと、算数に対する自信にもつながります。
―― 先生の教室ではどのように実践されているのでしょうか。
大迫先生:例えば、おりがみを対角線で折って三角形を作り、もう一枚は縦に半分に折って長方形を作ります。ここで「この三角形と四角形、どちらの面積が大きいと思う?」と質問すると、ほとんどの子が「三角形のほうが大きい!」と答えるんです。
でも、正解は両方とも1枚の半分の大きさですよね。すると子どもたちは「えっ、同じだったの!?」と目を丸くして驚きます。

論理的思考力を鍛える 「手順通りに」
―― 順番に折っていくのは子どもにとって難しいのではないでしょうか。
大迫先生:だからこそ、論理的思考力が養われるのです。完成させるには、どの順番で折ればいいかを自分で考えたり、工夫したりしなければなりません。お手本を読み解き、図の通りに作る中で「これをこう折ったらどうなるかな?」と試行錯誤もするでしょう。このプロセスはまさにプログラミング的な思考で、問題解決能力も高めます。
――それにしても、みんな、おりがみを折る時は真剣なまなざしですね。
大迫先生:指先は第二の脳。指先をたくさん動かすので脳が刺激され、集中力が高まり、認知機能が向上します。小さい頃からおりがみに親しむと、効果はより大きくなります。おりがみは、形を考えたり、手順を追ったりする過程がパズルと似ており、同じような効果があるといえますね。成人した2人の息子たちは、小さいころからパズルが好きで、よく遊んでいました。2人とも理系に進んだのはその影響もあるかも知れません(笑)
安くて気軽に楽しめるのがおりがみの魅力
―― おりがみには他に、どんな魅力がありますか?
大迫先生:手軽さと親しみやすさでしょうか。カバンにおりがみの本や数枚の紙を入れておくだけで、どこでも遊べます。仕事や育児でなかなか時間が取れないお母さんたちが、わざわざおりがみの時間を作るのは大変。レストランでの待ち時間や休日のちょっとした空き時間に「やっこさんを折ってお料理を待ってようね」で十分です。高価なタブレットのように壊れる心配がなく、折り方を間違えても新しい紙に変えれば何度でもできるのも嬉しいですよね。

――おりがみはお受験でも活躍すると伺いました。
大迫先生:小学校受験では、待合室に置かれたおりがみを自由に使って遊ぶ様子を先生が見ていることがあります。おりがみは普段から触れていないと難しいですが、慣れていれば、その場面で子どもの集中力や想像力を自然にアピールできるでしょう。待ち時間が長くてもおりがみをして周囲に迷惑をかけずに過ごせるメリットもあります。
まずはおりがみを破ることから。飛行機や手裏剣も人気
―― 小さな子どもでもおりがみで遊べますか?
大迫先生:2歳くらいの子には、折るのではなく、まずおりがみをビリビリ破るところから始めるのがおすすめです。破る動きは簡単で、手先を使う良い練習になります。破った紙はペタペタ貼り絵に。楽しみながら指先や集中力を鍛えられます。
――幼少期(3-5歳)はいかがでしょうか。

大迫先生:簡単な形から折り始めましょう。単純な三角形でせみやひよこ、四角形でくるまやプリンなどたくさんのものが作れます。慣れてきたら、三角の仲間を集めてはこもつくれます。
―― 小学校低学年(6~8歳)が好きなおりがみはどのようなものがありますか?

大迫先生: ふきごまやパッチンカメラのような、動くものが好きなようです。特に飛行機は「もっと遠くまで飛ばしたい!」と工夫を重ねながら一生懸命作っています。手裏剣も人気ですね。少し難しい形ですが、三角形を繋げたり折り込んだりする工程で三角形や四角形、長方形など、さまざまな形が学べます。
親子のコミュニケーションに。子どもの得意を見つけてあげて
最後の一手は子どもに。達成感がやる気を育てる
――おりがみを通じて、親子の時間が増えそうですね。
大迫先生:親子のコミュニケーションになりますね。ぜひ、お子さんが何が好きで得意なのかを見つけてあげてください。
親はつい、苦手を直したくなるものですが、人形を作るのが好きな子や、箱を作るのが上手な子、家を作ってお絵描きを楽しむ子など、それぞれに個性があります。得意をきっかけに、少しずつ算数などの学びを取り入れると、楽しみながら力を伸ばしていけます。
――1人でやらせたほうがよいでしょうか。
大迫先生:最初のうちは難しい部分をお母さんが手伝いながら進めていくのもいいですよね。
「自分で考える子」にするなら、答えを教えない
――途中で、できなくなってしまったらどうすればよいでしょうか。
大迫先生:「4まで1人でできたね。5からは一緒にやってみようか」と少しずつ子どもが一人できる範囲を広げていくとよいでしょう。ただし、最後の一手は子どもにやらせてあげてください。たとえ親が途中を手伝っても、子どもにとっては「私が作った」自信作。この成功体験が、「次は最後までやってみよう」「今度はここもできるかもしれない」と、少しずつ挑戦を広げていくきっかけになります。
――やり方を教えるのはよくないのでしょうか。
大迫先生:「こうやって折るのよ」と教えるのは簡単ですが、子どもはそれをそのまま真似するだけで、手は動いていても、頭はあまり使っていません。
考える子にしたいと思うなら「どうやるんだろうね?ちょっと考えてやってごらん」と声をかけてみるのが大切です。子どもが、あーでもない、こうでもないと試行錯誤して、ぐしゃぐしゃになりながらでも自分で考える。このプロセスが、子どもの思考力や問題解決力を育てる鍵になります。
――おりがみ以外の遊びで算数力を育てる方法はありますか?
大迫先生: おりがみと同様に、平面パーツを組み合わせて立体を作れるLaQ(ラキュー)も子どもたちに人気です。図形の構造だけでなく、植木算のような算数の応用的な要素も入っているんですよ。もう成人した私の息子たちもLaQが大好きで、よく遊んでいました。

4年生で急に始まる図形の授業。3年生までの慣れが大切
――図形の勉強が始まる前にどのような準備ができますか?
大迫先生:おりがみの中で、三角形を動かしたらどうなるかな? 箱の形を見て辺の数を数えてみよう! と「イメージする力」を育ててください。
―― そういった準備をしておくとどんなふうに役立ちますか?
大迫先生:4年生で図形の授業が始まったときにスムーズに理解できるんです。日本の算数の授業は1~3年生の間、主に足し算や引き算、大きな数など「数」の勉強が中心で、図形に触れる機会がほとんどありません。そのため、4年生で突然図形の学習が始まったときに苦手意識を持ってしまうのです。それまでの時期は、図形の勉強に向けた「橋渡し」期間。ぜひ小さなうちに、楽しみながら図形に親しんでください。
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