「みんなの知らない地球の素顔も届けたい!」【小学館の図鑑NEO[新版] 地球】担当編集者に制作秘話を直撃!図鑑に込めた想いとは?

大人気シリーズ『小学館の図鑑NEO』の最新刊のテーマは「地球」。2007年の初版以来、17年ぶりにアップデートして『小学館の図鑑NEO【新版】地球』として発売されました!最新の科学データや迫力ある写真や映像の数々に、大人も子どもも地球の魅力を新たに発見できる一冊です。今回は担当編集者の桂浩司さんに、図鑑作りへの想いやこだわりの仕掛けなどについてたっぷりお話を伺いました。

地球を「更新」する挑戦――新版の3つのミッション

①よりわかりやすく正確に伝えるため「地球」をアップデート

――初版は2007年。17年ぶりの新版は、どのような点をアップデートしたのでしょうか?

桂 図鑑NEOでは、新版にするにあたり、図鑑本体の見直し、特典DVDの追加、デジタルを中心にした+αのコンテンツづくりに取り組んでいます。まずは、図鑑本体をアップデートさせることです。写真や図版を一新し、より分かりやすく正確に伝えることを心掛けました。新規と既存データを組み合わせ、必要に応じて新しい視点を加えつつ、旧版の良さも活かしています。

地震波の伝わり方を矢印でわかりやすく図解。最新の調査機器も掲載した。

自然災害の状況も17年前とは変わっているので、現代の課題に即したテーマを優先しています。「わたしたちがくらす地球」の章では、旧版は「地球の資源」から始まっていましたが、新版では「地球温暖化」をトップに繰り上げました。データも更新し、地球の調査方法も最新の機器や手法を紹介しています。

――普遍とも思える「地球」をアップデートするのは難しそうです……。何をどう変えるか、どのように判断したのですか?

桂 僕がこれまでに担当した『小学館の図鑑NEO〔新版〕乗りもの』のように、車両が変わったり新しい新幹線が登場したりするとアップデートする点がはっきりしているケースもありますが、地球は何をどうすれば変化を感じてもらえるか。今までにない難しさでした。

どこを変えるか、その判断は監修の先生やデザイナーさんらの協力を仰ぎながら、編集チーム全体で進めました。専門家の視点で新事実や最新技術を正確に反映し、デザイナーの視点で図版の分かりやすさも確認する、といった具合です。

自分自身、分かっているようで実は分かっていない現象もたくさんあり、丁寧な解説を意識しました。たとえばニュースなどで耳にするエルニーニョ現象や線状降水帯が日本にどう影響するのか、矢印を細かく調整するなど「ああ、そうか!」と分かるように工夫しています。

一方で、あえて変えない選択も必要でしたね。

②没入感を味わえるDVDを特典付録に

特典付録のDVDは、表紙の裏に。海好きな桂さんがセレクトしたダイナミックな波の写真。

――特典付録のDVDには、約70分の映像が収録されていて驚きました!

桂 従来の「地球」の図鑑は、イラストの説明がとても分かりやすいのですが、没入感に課題を感じていました。地球規模の自然現象はスケールが大きく、仕組を理解しても、自分の体験やその中で生活していることとが結びつきづらいので、いつまでも人ごとのように感じてしまうのではないかと思っていました。

そこで、DVDでは、雲ができる実験森を歩いて水の循環を学ぶ体験など、リアルに実感できる映像を収録しました。他にも、地球誕生のひみつ大気や海の特徴などを、ドラえもんとのび太と一緒に楽しく学べます。地球が私たちにとってどれほど身近で大切かを実感できるのではないでしょうか。

③「知らない地球の素顔」が映像で楽しめる!カバー裏の二次元コード

二次元コードにスマホをかざすと、世界各地で撮影した貴重な動画の数々を見ることができる。

――カバー裏の特集には二次元コードが掲載されています。

桂 カバー裏の二次元コードにアクセスすると「みんなの知らない地球の素顔」と題した映像が見られる仕掛けです。世界的に評価の高い、各分野のスペシャリストたちによる貴重な映像ばかりです。

――そうそうたる専門家のみなさんが協力してくださっていますね!

桂 皆さんが知らない景色を届けたいと、探検家や写真家にご協力いただきました。

空撮写真家の山本直洋さんは、書店で偶然見つけた写真集を見て一気にファンになりました。アルパインクライマーで山岳カメラマンの平出和也さん中島健郎さんのおふたりは、私自身がそれぞれの人間性にも魅了されていて、中島さんのトークイベントに参加して声をかけたことがきっかけで今企画が実現しました。人気テレビ番組『クレイジージャーニー』でもおなじみ、洞窟探検家の吉田勝次さんには国内外の洞窟の美しい映像を、渓谷探検家の田中彰さんには、人類が初めて足を踏み入れた、ヒマラヤのセティ・ゴルジュの映像を、それぞれ提供いただきました。

以前に私が写真集や旅行記の編集を担当した写真家の竹沢うるまさんとは、10日間、初冬のアイスランドで地球の営みの一端を撮影。帰国後、火山活動により住民に避難勧告が出され、その後噴火したというニュースに驚いていたところ、なんと同じく写真家の上田優紀さんがその場に偶然居合わせたことで、迫力ある「割れ目噴火」の撮影ができたとのことでした。アイスランド到着後、翌朝のことで、すぐにヘリコプターをチャーターしての撮影だったそうです。

――奇跡の瞬間が見られるのですね。ワクワクします!

桂 動画はどれも約2分で、気軽に見られる長さです。映像には、オリジナルのBGMがついています。この音楽も本当にいいんです。家で流すたびに感動するくらい(笑)。この曲は縁あって紹介いただいた音楽家に作曲いただきました。パリオリンピックのアーティスティックスイミング日本代表に楽曲を提供した方とあとで聞いて驚いたほどです。ぜひ映像とともに聴いてもらいたいです。

自然好きの編集者だからこそ「地球上の危険も子どもに隠さず見せる図鑑に」

旅好きだった学生時代の話も。今もサーフィンが趣味の桂さん。

――ところで、新版『地球』の担当編集を任された時、どんな気持ちでしたか?

桂 私の興味に近いテーマだと感じました。都会の便利な生活にすっかり慣れてしまっていますが、実は自然の中で過ごすのが好きなんです。父親が旅好きだった影響もあり、子どもの頃から自然と親しんできました。学生時代には実家のある千葉から鹿児島まで自転車で旅したり、ニュージーランドやアジアをバックパックで巡ったり、アメリカ大陸を路線バスで横断したりと、自然を見たい欲求が強かったですね。学生のころにはじめたサーフィンは今も続けていて、兄や息子と楽しんでいます。

――他社にも「地球」の図鑑はありますが、小学館の図鑑NEOならではの特徴を教えてください。

桂 子どもに合わせて降りていってないところ。むしろ子どもたちを引き上げたいと思って作ったところでしょうか。危険と思われるものも排除しないで見せる。大人でも行けない場所の映像を取り入れる。地球には大人用も子ども用もないように、「子どもには難しい」ということを基準にした判断をしないようにしました。

広くて大きい地球の中で、「自分たちがどこにいるのか」を感じてもらうのが大きなテーマですから。もちろん、いたずらに不安をあおる意図はありませんので、安心して読んでほしいと思います。

図鑑と体験が行き来するように使ってほしい

「広がるNEO」マークの二次元コードにスマホをかざすと、他の図鑑の関連ページが読める。

――いろいろな工夫が詰まっていて、刊行までにはずいぶん時間がかかったのではないでしょうか?

桂 旧版がよくできていたので、実際には2年半くらいでしょうか。発売1年前のアイスランドでは、写真家の竹沢うるまさんと撮影をしに行っていました。道なき道を車で進んで撮影をしたのですが、氷点下でのキャンプなど、なかなかハードな撮影で、最後は二人とも無言で作業だけを進めることも(笑)。帰国3週間後に火山が噴火したんですよ。危うく帰ってこられなくなるところでした。

――撮影も含めて、力作の新版「地球」ですが、どのように読んでもらいたいですか?

桂 たとえば、温泉に行ったときに「火山が多い日本には温泉も数多くある」と図鑑に書かれていたのを思い出してもらって。「これって火山が関係してるのかな?」と想像したり考えたりできるように、図鑑と体験が行き来してくれたら、この本の本当の役割を果たせると思っています。

――地球は生物や海の生き物や宇宙などともつながる事象が多いので、分野を超えて関連を調べるのにも役立ちそうですね。

桂 本文中の二次元コード「広がるNEO」からは、関連するNEOシリーズの一部が読めるようになっています。そこから本棚の他の巻にも手が伸びるかも知れません。「地球」をハブにNEOシリーズ全体を楽しんでもらえたら嬉しいですね。1ページ目から読む必要はありません。好きなところから読んでください。

自然災害の仕組みを知れば、いたずらに怖がらずに済む

火山のしくみも、イラストと写真の両方を用いて解説しているからイメージしやすい。

――昨今、大雨や高温、地震などの自然災害などが多くなりました。地球について知れば、子どもたちが生きていく上でどんな面でプラスになると思いますか?

桂 テレビやYouTubeで流れる災害の映像は強烈で、「地震が来たらもう終わりだ」と怯えてしまう子もいるのではないでしょうか。でも、その恐怖で終わらせてほしくない。地震や火山噴火、隕石衝突などは、地球の46億年の歴史では避けられない自然の活動です。仕組みを知り、先人たちの知恵を活かし、どう対処するかを考えてほしいと思っています。

――今の地球が抱える問題についても考えるきっかけになりますね。

桂 「人新世」と言われる時代に突入し、私たちが環境に与えるインパクトは無視できません。だからこそ、「調べる」「考える」ことを大切にしてほしいし、一方では俯瞰的に見られるようになるはずです。その冷静な視点が興味に繋がり、さらに広がっていくそんな循環をこの本が生み出せたら、これほどの喜びはありません。

親子で驚き、笑い、自由に図鑑を楽しもう

「図鑑を見るとき、大人は子どもと横並びの意識でフラットな気持ちで見ると楽しい」という桂さん。

――最後に、図鑑を親子で楽しむポイントを教えてください。

桂 図鑑は親が教える「対面」の関係ではなく、「横並び」の関係で一緒に楽しめるものだと思っています。自分の持っている知識に惑わされず、フラットな気持ちで読んでほしいですね。知っているようで知らなかったと気づくこともあると思います。親子で一緒に驚きながら読めば、互いに新しい発見が生まれ、それまでとは異なるテーマへの興味・関心に自然とつながっていくんじゃないかと思います。

――読者にメッセージをお願いします。

桂 「そういえば、小さい頃にこの図鑑を読んでいましたよ」という探検家や専門家の方々に出会うたびに、この本がその人の興味や知識の根っこになっているんだな、と感じます。この図鑑が、子どもたちにとって好奇心を育む養分になり、いつかその根っこから大きな花が咲くきっかけになれば嬉しいです。ぜひ、自由に楽しんでください!

理科にも強くなる『小学館の図鑑NEO[新版]地球』発売中!

今、人類にとって、急激な変化をもたらしている地球。何がどういうしくみで起きているのか、この図鑑を読むと深く理解することができます。小学校だけでなく、中学、高校で学習する理科や地学の学びの根本的な理解にも役立つ解説も多く掲載されています。17年ぶりにアップデートされた最新版は、より自然を身近に感じられる特典映像のDVDや二次元コードで視聴できる地球の素顔など、図鑑NEOだけのコンテンツが盛りだくさん!ぜひ一家に一冊持っておきたい図鑑です。

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お話を伺ったのは

桂 浩司|図鑑NEO編集部

1997年小学館入社。女性セブン、ラピタ、ダイム、プラチナサライ、edu、読売KODOMO新聞、図鑑を経て、現在はサライ編集室に在席。普段は「自然」を中心に据えて、旅、音楽、スポーツに多くの時間を使う。そこから派生するカルチャー・文化、手仕事、食が大好き。公私とも、てんでバラバラに見える、本質的なこと、美しいことに対する興味という根っこは一貫しているつもり。2児の父。

取材・文/黒澤真紀 撮影/五十嵐美弥(小学館)

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