目次
大人気!『小学館の図鑑NEO メダカ・金魚・熱帯魚』は初めての子ども向け観賞魚図鑑
−今回、『小学館の図鑑NEO メダカ・金魚・熱帯魚』を発売された経緯を教えていただけますか。
『小学館の図鑑NEO』シリーズは、「3歳から高学年まで」をキャッチフレーズに、学術的な内容も噛み砕いて伝えながら、子どもたちにサイエンスへの興味を持ってもらえるよう工夫されています。一冊でその分野についての体系的な知識が身につくことが特徴です。
NEOシリーズには『新版 魚』という図鑑もあるのですが、こちらは海や川など野生で見られる魚を中心に、深海魚から淡水魚まで幅広く網羅した内容。子どもたちにとって身近な存在である観賞魚は十分に紹介されているとはいえませんでした。さらに今は図鑑ブームで、各社からさまざまなテーマのものが発売されていますが、子ども向けの観賞魚図鑑はなかったのです。
実は近年、メダカはさまざまな色、形のものが作られるようになり、飼育や繁殖もしやすいことから、観賞魚の中でも一番の人気ジャンルになっています。そしてメダカは、小学校の理科で必ず習うことからもわかる通り、科学を学ぶのにぴったりの魚でもあります。そこでメダカをトップバッターとして、児童向け図鑑としては初めて「家で飼える魚」をテーマとした図鑑の発行を企画しました。タイトル通り、メダカと金魚、熱帯魚という3章に分けて、魚の種類はもちろん、飼い方も詳しく紹介しています。
「黒い誌面」にした理由
−制作にあたって特に力を入れた点はありますか?
観賞魚の図鑑なので美しい写真、それも「その魚の本来の色」にこだわりました。
今回の図鑑では、メダカと熱帯魚の章では「黒い誌面」を採用しています。その理由は、まわりが明るい場所にいると、色が薄くなってしまう魚が多くいることです。
図鑑用に生きた魚を撮影するときは、誌面の色にあわせた環境を作ります。最初は、白い誌面に写真を配置するために、白い底や背景で撮影してみたのですが、魚の色はとても薄くなってしまいました。特にメダカは白い環境の中ではまったく魅力が出ませんでした。
そこで水底や背景を黒にして撮影してみたところ、魚の色がくっきりと出てきたのです。特に観賞魚では魚の美しさが大きなポイントなので、誌面の色を黒にすることに決めました。
金魚はまわりが白い環境にいてもあまり色が変わらないため、金魚の章では白い誌面を採用しました。
眺めて楽しく、体験してもっと楽しい、観賞魚の世界への入口に
−手に取るお子さんたちには、どのように活用してほしいと考えていますか。
枕元に置いて毎日繰り返し眺めてもらえたら嬉しいですね(笑)。私自身、子どものころは時間さえあればずっと図鑑を眺めていましたし、そうした時間が魚をはじめ、さまざまな生き物や科学への興味の扉を開いてくれたと感じています。
また、かなり詳しく飼い方を解説しているので、ぜひご家庭で魚の飼育にもチャレンジしてほしいと思います。メダカや金魚では外で飼うとき、室内で飼うときの違いもわかります。熱帯魚はいろいろな魚がいて、最適な飼い方は種類によって異なりますが、ベタやディスカスなどの少し特殊な飼い方までわかるようになっています。
−DVDもついているのですね。
75分、4つのチャプターに分かれた映像で、メダカ、金魚、熱帯魚それぞれの世界をたっぷり楽しめます。メダカ、金魚のチャプターでは代表的な種類や飼い方などがわかるほか、熱帯魚のチャプターでは近年人気が高まっている「ベタ」という魚を特集して、本場・タイを取材しました。
タイには、ベタのオス同士を闘わせる「闘魚」という文化があり、バンコクのチャトチャック市場で、実際の様子を取材したり、ベタを育てるファームを訪れたりしました。
また、淡水魚の水族館としては世界最大級の「世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ」で、飼育員さんのお仕事に密着した内容も収録されています。巨大魚のメコンオオナマズや、ピラルク、ピラニア・ナッテリーの給餌など、なかなか見られない映像が満載です。
DVDのほかにも、誌面のコラムなどと連動したミニ動画が21本用意されており、誌面の二次元コードをスマホやタブレットから読みとると視聴できます。
−子どもたちの興味を生き物に向かわせたいと考える保護者に、何かアドバイスがあればお願いします。
私自身の魚への興味のきっかけは、2〜3歳のころ祖父に横浜駅のデパートの屋上にあった金魚釣りに連れて行ってもらったことでした。やはり生き物と実際に触れあってみることは、生き物好きになるきっかけとして大切だと思います。
身近に自然がないという環境にお住まいでも、都会なりの自然は必ずあるはずです。例えば、都心のど真ん中にある公園でも、セミが羽化していたり、きれいに見えない川でも意外とたくさんの魚が泳いでいたりします。普段見過ごしているような場所でも、改めて視線を向けることで新たな発見があるかもしれません。
また手前味噌ですが、やはり図鑑はいいきっかけになると思います。私自身、父の本棚にささっていたさまざまな図鑑を勝手に取り出して眺めていました。魚にとどまらず機械、昆虫、恐竜、地理・・と興味の範囲が広がったと思います。
研究者の方々も、聞いてみるとたいてい子どものころに図鑑を読み込んでいるようです。いろいろな図鑑が本棚にあるだけでも、好きな分野が見つかるきっかけになるのではないでしょうか。
元「魚大好き少年」編集者・草柳さんの自由研究の思い出
−魚好きな少年時代を過ごされたそうですが、自由研究の思い出はありますか。
自宅の近所の川に沿って自転車で源流をめざし、川の様子の変化やどんな魚がいるのかを調べたことがあります。下流では横浜駅近くを流れ、横浜港に注ぐ帷子川ですが、中流、上流と遡ると、川に住む魚の種類も変わってきます。
結局は源流まで辿り着くことなく断念してしまいました。それでも、エリアごとに異なる種類の魚が見つかることに、子どもながらに高ぶりを感じたのを覚えています。
−今回発売された『小学館の図鑑NEO メダカ・金魚・熱帯魚』を活用した自由研究のおすすめテーマがあれば教えてください。
今回の図鑑では、単なる魚カタログにならないよう、できるだけ科学の知識と繋げることを大切に制作しています。
自宅で試してもらえるちょっとした実験も紹介していて、スマホなどで二次元コードを読み込むと、その様子を収めた動画を視聴することが可能です。
特にメダカは、研究の現場でも用いられる生き物で、実験にとても向いています。手に入れやすく、飼育が容易なうえ、繁殖もさせやすいことから重宝されているのです。ヒトと同じ「脊椎動物」であることもポイントです。
ご家庭での実験としては、メダカの色を調べる実験や、メダカの泳ぎの習性を調べる実験などはいかがでしょうか。いずれも自宅で簡単にできるうえ、条件を変えてみることで、さまざまな発見につながる実験です。
やってみよう!自由研究① メダカの色の変化を調べてみよう
メダカは同じ種類であっても、いる環境によって色に違いが出ます。少しの時間でも変化が見られるので、簡単に試してみることができます。
【用意するもの】
・メダカ2匹
(野生のメダカに近いタイプだと実験しやすいです。「クロメダカ」などの名前で売られています)
・底が白い器
・底が黒い器
・メダカ飼育に適した水
【方法】
- まずは白い器に2匹のメダカを入れ、同じ色であることを確かめる。10分くらい時間をおいてから、黒い器のメダカを白い器に戻し、2匹のメダカの体色を観察する。
【こんなこともやってみよう】
・黒い器に入れる時間を変えてみる。
・赤や青、黄色、緑色など、他の色の容器で試してみる。
・改良品種のメダカでも実験してみる。
やってみよう!自由研究② メダカの泳ぎ方を調べてみよう
メダカの行動を調べる実験です。流れを作ったり、周りの景色を変化させることで、メダカの動きはどのように変化するでしょうか。
【用意するもの】
・メダカ
・透明な丸い水槽(流れを作る実験だけなら、大きな洗面器やたらいなどでもOK)
・黒と白の画用紙
・ホチキス
・メダカ飼育に適した水
・スプーンなど
【方法】
<実験(1)>
- 容器に水を張り、メダカを入れる。
- まずは流れのない状態で、メダカの様子を観察する。
- スプーンなどで水流をつくり、メダカがどのように行動するかを観察する。
- <実験(2)>
- 黒い画用紙を細長く切って、白い画用紙に貼り付け
- 水槽のまわりをしま模様の紙で囲み、ゆっくりと紙を回転させる。
- しま模様の回転により、メダカがどのように行動するか観察する。
【こんなこともやってみよう】
・作る流れの速さを変えてみる。
・しま模様の太さを変えてみる。
・しま模様の紙を回転させる速さを変えてみる。
・実験(1)と(2)を組み合わせて流れを作りつつ、しま模様を回転させてみる
これらの実験は1日あればできますが、もう少し時間をかけられるのなら、異なる餌を数週間与えて体色の変化を観察したり、違う品種のオスとメスを1匹ずつ組み合わせて、どんな子が生まれてくるか調べるのも良いかもしれません。
こちらの記事もおすすめ
取材・文/岡田幸子 撮影/黒石あみ