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ジェンダーギャップ指数って何?
ジェンダー問題を語るうえでは、ジェンダーギャップ指数についてしっかり知っておく必要があります。ジェンダーギャップ指数の基礎知識と日本の順位を解説します。世界と比べたときに日本がどう映るのか知っておきましょう。
男女の格差を数値化した指標
ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラムが2006年から毎年発行する報告書「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート」で発表される数値のことです。
全4分野14項目における男女の格差を数値化したもので、世界では「GGI(Gender Gap Index)」もしくは「GGGI(The Global Gender Gap Index)」と呼ばれるのが一般的です。
ジェンダーギャップ指数では、数値が「1」に近いほど、その分野での男女の平等が進んでいることを示し、反対に数値が「0」に近いほど、その分野で男女の格差があることを示します。
ジェンダーギャップ指数の分野
ジェンダーギャップ指数は経済・政治・教育・健康の4分野、全14項目で成り立っています。各分野を構成する項目は以下の通りです。
【経済の分野】
・労働参加率の男女平等
・同種業務の給与における男女平等
・勤労所得の男女平等
・幹部や管理職における男女平等
・専門職や技術職における男女平等
【政治の分野】
・国会議員の男女比
・閣僚の男女比
・過去50年間における女性国家代表の在位期間(在任期間の男女比)
【教育の分野】
・識字率
・初等教育の就学率
・中等教育(中学校・高校)の就学率
・高等教育(大学・大学院)の就学率
【健康の分野】
・出生児の男女割合
・健康寿命の男女比
日本の順位
2024年6月12日に発表された最新の数値では、日本は146カ国中118位(スコア:0.663)を記録しています。分野別のスコアと順位は以下の通りです。
・経済:0.568(120位)
・政治:0.118(113位)
・教育:0.993(72位)
・健康:0.973(58位)
北欧諸国が上位を占める中、日本はG7(主要7カ国)の中で最下位に沈んでいます。同じアジアの国々の中でも、韓国(0.696:94位)と中国(0.684:106位)にも遅れを取っているのが現状です。
日本のスコアは、指数の公表が始まった2006年から「0.65」前後を行ったり来たりしています。順位に着目すると、80位(2006年)から120位(2021年)までほぼ右肩下がりになっているので、ジェンダーギャップ解消においては世界に遅れを取っていることが分かるでしょう。
出典:世界経済フォーラム発表「ジェンダー・ギャップ指数2024」|鳥取市
:11-3図 日本のジェンダー・ギャップ指数の推移 | 内閣府男女共同参画局
ジェンダーギャップ指数から見える日本の課題

ジェンダーギャップ指数は、各国が抱えるジェンダー問題を浮き彫りにします。日本に関しても例外ではありません。指数の低さから垣間見える、日本社会全体の問題点を解説します。
女性の国会議員が少ない
政治分野におけるスコアの低さ(0.118)からも分かるように、日本の政治における男女不平等は深刻といえるでしょう。大きな課題となっているのが、政治に参加する女性の少なさです。
2024年6月に公表された「男女共同参画白書 令和6年版」によると、衆議院議員に占める女性の割合は9.7%(2021年10月現在)、参議院議員に占める女性の割合は27.4%(2022年7月現在)と報告されています。衆議院・参議院どちらも女性の割合は上昇傾向にあるものの、まだまだ少ないのが現状です。
OECD加盟国かつクオータ制(議員や管理職における女性の割合を一定以上にするように求める制度)を採用していない国々における女性国会議員割合の平均値が29.1%であることを考えると、日本がいかに少ないかが分かるでしょう。
出典:男女共同参画白書 令和6年版 令和5年度男女共同参画社会の形成の状況
:主要国の選挙におけるクオータ制|国立国会図書館
女性の管理職が少ない
経済分野におけるスコアを下げる要因の一つとなっているのが、女性管理職の少なさです。
2021年6月に公表された「男女共同参画白書 令和3年版」によると、民間企業の係長級の役職者における女性の割合は21.3%、課長級の役職者においては11.5%、部長級の役職者においては8.5%(全て2020年現在)と報告されています。
係長級・課長級・部長級全てにおいて、女性が占める割合は上昇傾向にあります。しかし、ジェンダーギャップ指数の「幹部や管理職における男女平等」におけるスコアが「0.171(130位)」にとどまっていることを考えれば、まだまだ伸びしろが大きいといえるでしょう。
出典:I-2-12図 階級別役職者に占める女性の割合の推移 | 内閣府男女共同参画局
:世界における日本の男女共同参画 ~ジェンダー・ギャップ(男女平等)指数2024~ | 長岡京市公式ホームページ
女性の進学にかかるバイアス
女性が真の意味で自由に進路を選べない現状も、日本のジェンダー問題を考える上で一つの課題といえます。
女性が自由に将来を選択できない一因となっているのが、進路を選ぶ女性本人・周囲の人々・社会全体が持っているバイアス(先入観や偏見)の存在です。具体的には、下記のようなバイアスが世にはびこっているといえるでしょう。
・女性は理系科目が不得意
・女性は国語や英語が好き
・女性は計算をしたり論理的に考えたりするのが苦手
これらのバイアスは、女性の個性を完全に無視した根拠のない思い込みといえます。
バイアスがかかった状態では、女性が本当に目指したい進路を選びにくくなる可能性が高まります。女性自身が「数学や物理は男性のやること」と思ったり、「文系学部への進学」を望む両親の期待に応えようとしてしまったりするためです。
1位のアイスランドってどんな国?

ジェンダーギャップ指数で15年間1位を守り続けているのが、「世界一男女平等な国」といわれるアイスランドです。ジェンダーギャップ指数118位の日本からは想像できない、アイスランドの実像を解説します。
充実した育児休暇制度がある
アイスランドでは、父親が取る育児休暇制度が整備されています。日本にも男性の育休制度(産後パパ育休(出生時育児休業)制度)はありますが、圧倒的に異なるのがその取得率です。
日本における男性の育児休暇取得率は、従業員1,000人超企業において46.2%(2023年6月1日現在)にとどまります。一般的に中小企業より福利厚生が充実している大企業でこの値であることを考えると、中小企業や零細企業にも視野を広げて取得率を計算すれば、さらに低い数値になると予想できるでしょう。
一方アイスランドでは、男性の8割以上が育児休暇を取得しています。男性の育児休暇の取得は「特別なこと」ではなく「ごく一般的なこと」となっているのです。
母親と父親で共通した育休が取れるのも、アイスランドの育休制度の特徴です。共有の育休が6週間取得できます。アイスランドでは、夫婦で協力して育児に取り組む体制が整っているといえるでしょう。
出典:イクメンプロジェクトのご案内 |厚生労働省
:Nordic Labour Journal
:男女共同参画に関する国際的な取り組み:久喜市ホームページ
男女の賃金格差を違法とする法律がある
2018年に世界で初めて「男女間における賃金の格差を違法とする法律(男女同一賃金証明法)」が制定されたのもアイスランドです。
この法律では、従業員25人以上の企業に対して、男女で等しい賃金を支払っていることを示す「証明書」の提出を義務付けています。違反すると、最大500ドル程度(1日当たり)の罰金が科せられる仕組みです。
男性より女性の給料が低い日本に住んでいると、アイスランドのこの法律は画期的なものに思われるでしょう。しかし本来、同じ仕事をしているのであれば、男女間で賃金の格差が生まれるのは不合理です。国を挙げて男女間の賃金格差を是正しようとしているのが、アイスランドといえるでしょう。
議員における男女の比率がほぼ同じ
2021年に行われた議会選では、63議席中30議席を女性議員が獲得しました。割合にして女性議員の比率は47.6%です。アイスランドにおける女性議員の割合を押し上げている要因の一つが、クオータ制の実施です。
政治の分野におけるクオータ制とは、女性の政治参加を促すために、女性に対して一定の議席数や候補者数を割り当てる制度を指します。アイスランドの政界では、政党ごとにクオータ制を実施しています。実践されているルールは以下の通りです。
・進歩党および社会民主同盟:候補者を男女ともに40%以上にすること
・左派緑運動党:候補者を男女同数にすること
政治における女性参画の象徴とされるのが、ハトラ・トーマスドッティル大統領の存在です。2024年12月には女性のクリストルン・フロスタドッティル氏が首相に就任し、大統領と首相双方が女性となりました。
出典:Iceland misses out on Europe’s first female-majority parliament after recount
子どものうちから男女平等を実践する教育
アイスランドでは、子どもの頃から「女性らしさ」「男性らしさ」を超えた個性を尊重する教育を実施しています。
アイスランドで行われるジェンダー平等教育の代表例が「ヤットリ・モデル」です。ヤットリ・モデルとは、クラスを性別で分け、男の子のクラス・女の子のクラスそれぞれに「埋め合わせ教育」を提供する仕組みです。
女の子のクラスには、一般的に男性らしいと思われる「自信を持って意見を発信すること」などを教えます。一方男の子のクラスには、一般的に女性らしいと考えられる「思いやりを持って友達に接すること」などを学ばせます。
男女共学の環境下で自然に根付いてしまう「女性としての役割」「男性としての役割」から離れて、子どもそれぞれが持つ可能性を伸ばそうとする教育方法がヤットリ・モデルです。
ジェンダーギャップ指数改善に向けた政府の取り組み

政府はジェンダーギャップの解消に向け、さまざまな取組を実施しています。「G7中最下位」という不名誉を解消するために、政府が実施しているアプローチを解説します。
ポジティブ・アクションの推進
ポジティブ・アクションとは、社会的・構造的な差別により不自由を強いられている人に対して、平等を実現するための機会を提供する措置のことです。「積極的改善措置」や「アファーマティブ・アクション」とも呼ばれます。男女平等を推し進める国々で実施されているクオータ制もポジティブ・アクションの一つです。
2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」では、2020年代の早いうちに国会議員や管理職などに占める女性の割合を30%程度まで押し上げることを目標として掲げています。
この目標を達成して男女平等を実現するために、内閣府男女共同参画局では企業・大学・研究機関などに対してポジティブ・アクションを推し進めています。
出典:男女共同参画局|内閣府
女性活躍推進法の制定と改正
女性活躍推進法とは、2016年に施行された「女性が働く環境を改善すること」を目的とした法律です。正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。ジェンダーギャップ指数の低迷を受け、2020年と2022年に改正されました。
女性活躍推進法の目的は、女性が働きやすい環境を整備することで、働きたいと思っていても、育児や介護などさまざまな事情で働くことができない女性をサポートすることです。
女性活躍推進法では企業に対して、女性の活躍を後押しする行動計画を定めることや、数値目標を設定して公表することなどを義務付けています。
出典:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律|e-Gov 法令検索
ジェンダーギャップ指数からは「日本の今」が見える
ジェンダーギャップ指数は、男女平等における日本の現状を確かめられる数値です。各分野の項目を一つ一つ精査していけば、日本がどのような課題を抱えているかをうかがい知ることができます。ジェンダーギャップ指数を通して「日本の今」を把握しましょう。
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構成・文/HugKum編集部