解決の兆しが見えないウクライナ戦争
ウクライナ戦争が始まってから、2025年2月で3年となりますが、戦況は一進一退の状況。解決への兆しは見えないでいます。
トランプ大統領は当初、ウクライナ戦争を24時間以内に終わらせると豪語していましたが、最近は6ヶ月必要とトーンを低下させており、戦争終結の難しさを認識し始めているようです。今後、戦争終結に向けてロシアとウクライナの双方に条件を提示していくと予想されますが、そのプロセスが停滞していく可能性も十分にあるでしょう。
動員されている北朝鮮兵
一方、今日のウクライナ戦争で顕著になっているのが、参戦する北朝鮮兵の存在です。最新の情報によりますと、ロシア軍の救援部隊としてウクライナに派遣された北朝鮮兵は、既に300人あまりが死亡し、2,700人近くが負傷したとされます。
また、戦場に送り込まれた北朝鮮兵たちは、ウクライナ国境にあるクルスク州にも派遣され、死亡した兵士の所持品から、捕虜になるまでに自決や自爆が命じられているとされます。
軍事的な近代化、ハイテク化が進む中、北朝鮮兵は現代戦に対する理解や能力が欠如していることは明らかであり、人権面からも北朝鮮に対する批判的な声が強まっています。
では、なぜ遠いウクライナに地にまで北朝鮮兵が派遣されているのでしょうか。
3年間で多くの兵士を失ったロシア
その背景にはロシアと北朝鮮それぞれが抱える国内事情があります。
まず、ウクライナ侵攻を続けるロシアは、この3年間で多くの兵士を失い、新たな動員が不可欠となっています。今日のプーチン大統領にとって、戦場に入って侵攻に協力してくれる人であれば誰でも歓迎という状況であり、とにかく軍事的劣勢に立つことだけは避けなければならないと感じています。よって、北朝鮮が兵士を動員するということは単純にプーチン大統領にとってはメリットが大きいのです。
兵士と引き換えに、食糧支援や宇宙開発支援を期待
一方、兵士をウクライナへ送る北朝鮮にも当然ながら狙いがあります。北朝鮮は長期にわたって食糧難が深刻化。また、軍事利用のための宇宙開発にも強い意欲を示しています。北朝鮮にとって唯一の依存先と言えるのは中国でしたが、中国は金正恩氏が期待するような軍事支援には積極的ではありません。
そのような状況で頼みの綱になっているのがロシアで、自らの兵士を動員する見返りに食糧支援や宇宙開発支援を得られるという、双方にとってメリットがある関係が成立しているのです。
今日、ロシアと北朝鮮は軍事的結束を強めており、今後は北朝鮮がウクライナへ兵士を派遣したように、ロシアが北朝鮮に対する軍事支援をいっそう強化することが懸念されます。ロシアと北朝鮮の結束は、日本の安全保障にとっても大きな問題となっています。
この記事のポイント
①ウクライナに送り込まれた北朝鮮兵は、既に300人あまりが死亡し、2,700人近くが負傷したとされている
②この3年間で多くの兵士を失い、新たな動員が不可欠なロシアは、北朝鮮の兵士を頼りにしている
③食糧難が深刻化し、宇宙開発にも強い意欲を示している北朝鮮は、兵士と引き換えにロシアの支援を望んでいる
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
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