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知的障害がある人の才能を広く展開する活動7年の歩みを振り返る
ヘラルボニーは、2018年に双子の兄弟である松田文登さん・松田崇弥さんが創業。彼らには4つ上のお兄さんがいるのですが、彼は自閉症です。生まれたときから一緒にいるお兄さんに対し、周囲から向けられる目線は冷たい。大好きな家族を取り巻くこの状況を変えるべく、兄弟でヘラルボニーを設立し、知的障害のある人の隠れた才能を発掘。その才能をアート作品として広め、そこからファッション、インテリア、企業とのコラボレーションなど多方面に展開しています。この挑戦は、先入観や常識にとらわれず、一人ひとりの特性「異彩」を解き放ち、未来の文化をつくることを目指しています。

会社を立ち上げたときに同じ岩手県出身の作家・宮沢賢治の研究者である伯父・
異彩を放つ作家たちの作品を「福祉」の枠を超えた「アート」
として世に問い、その美しさや力強さを社会に届けることで、 新たな価値観を生み出し、純粋な創造の力として世に提示する。
ヘラルボニーの活動も、虔十の森が村の未来を耕すように誰もが自分の存在価値を肯定できる社会を築くための種を蒔いています。今回の展示では、ヘラルボニーのアーティストの作品とともに、この約7年の歩みを振り返っています。

作られた枠組みをやわらかく 少しずつ溶かしていくヘラルボニー流解決術
社会にやさしい理解を求めるとき、声高に叫ぶのは直球の手段。でも、ヘラルボニーが行ってきたのは「差別の撤廃」や「公平さ」を求めるのではなく、ヘラルボニーのアーティストたちが生み出した作品に触れてもらい、その理解の枠組みの硬い端っこを溶かしていくように広げてきたと感じます。
隣接する2つの会場のうち、「+2」と描かれた入り口からスタート。アートを身近な服やバッグにすることで、純粋なデザインとして広まり、それがヘラルボニーのアーティストにとっての生活の糧にもなる。こちらの会場では、その過程を折々に行ってきた広告など11の例を提示しながら振り返っています。
MUKUからヘラルボニーへ 始まりはアートネクタイから
ヘラルボニーの前身の「MUKU」としてクラウドファンディングで初のプロダクト「アートネクタイ」を作ったのがすべての始まりでした。「無垢」な表現の生きるアーティストたちの独自の筆致や質感をテキスタイルに織り込むアイデアはたくさんの共感を呼ぶことに。そこから「福祉」ではなく、本物のブランドを目指し、「岩手から世界を変える」という想いを掲げてヘラルボニーが2018年に誕生しました。
#障害者という言葉
2020年2月、初めての意見広告を東京・霞ヶ関の弁護士会館前に掲示。これは「障害者」であることを理由に、責任が転嫁されたともみえかねない言説が国会答弁においてなされたことをきっかけに起こしたアクションだそうです。
誰かを責めるわけではなく、偏見が根強く残り続ける社会やその仕組みそのものに問題があることについて、国民対話のきっかけを作れないか。そんな思いから起こした行動でした。
100年後にあなたは何を残したい? 言の葉のシンボルツリーをみんなで作ろう
第二会場となる「+1」では、「+2」から引き続きこれまでの活動を振り返るとともに、虔十の信念をヘラルボニー独自の視点で再解釈。100年後の『

会場奥には参加型の展示があり、公園の景色を一緒につくっていく体験ができます。公園内には、




「これって意味があるのかな」「やっても無駄じゃないかな」なんて思うことは日々起きます。でも、どんな小さなことでも、気づいたときに行動してみる。それがきっと自分自身や家族、そして知らない誰かも巻き込む良い波紋につながるかもしれない。
そんな小さな勇気の魔法をくれる展示。ぜひ訪れてみてください。
「みんなでつくる未来の公園 ヘラルボニーと宮沢賢治」
会期:2025年2月21日(金)~ 2025年3月20日(木)
会場:BAG-Brillia Art Gallery- 東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル1階
開館時間:11:00-19:00(定休日:月曜)
料金:無料
公式サイトは>>こちら
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取材・文/北本祐子