そもそも金利って何?
「金利のある世界」という言葉を理解するには、まず「金利とは何か」を知っておくことが重要です。経済関連の言葉を理解するうえで必要となる、金利に関する基本的な知識を解説します。
お金を借りたときに発生する対価の割合のこと
金利とは、お金を貸し借りするとき、お金を借りた人がお金を貸した人に支払う対価の割合のことです。
金利が1%の場合、100万円を借りたときは100万円×1%=1万円の対価が発生します。このケースでは、お金を借りた人はお金を貸した人に対して、お金を返すときには、101万円を支払うことになります。
金利が高いと、お金を返すときによりたくさんの対価が求められるため、お金が必要な企業や個人は、お金を借りることをためらうようになるでしょう。反対に金利が低いときには、少ない対価でお金を借りられるようになるため、企業や個人はお金を借りやすくなるといえます。
「金融引き締め」と「金融緩和」
「金利のある世界」を理解する上で欠かせない知識といえるのが、「金融引き締め」と「金融緩和」です。
金融引き締めとは、社会に出回るお金の量を減らすことで景気を落ち着かせる政策を指します。金利を上げることで、企業や個人がお金を借りにくくなり、社会全体の投資や消費を抑えます。
一方、金融緩和とは、社会に出回るお金の量を増やすことで景気を盛り上げる政策のことです。金利を下げ、企業や個人がお金を借りやすい状況を作ることで、投資や消費を後押しします。
金融引き締めと金融緩和を実施するときには、さまざまな手法が実行されます。中でも欠かせない手法の1つが、金利の引き上げと引き下げです。
「金利のある世界」とは

「金利のある世界」とは何を指すのか、言葉の意味を解説します。「金利のある世界」という言葉は、現代の日本の経済状況を理解するうえで、ぜひ知っておきたい用語です。言葉の意味を知って、日本の今を知るきっかけを作りましょう。
金利がゼロやマイナスではない状態の社会のこと
「金利のある世界」とは、金利がゼロに設定された「ゼロ金利」や、金利がマイナスに設定された「マイナス金利」から抜け出し、借りたお金に対価が付くようになった世界のことです。
日本では、1999年から断続的に「ゼロ金利政策」が実行されていました。ゼロ金利政策は、バブル崩壊(盛り上がりすぎた経済が一気に落ち込む現象)をきっかけに始まった取り組みです。
2016年からは「デフレ(モノやサービスの値段が下がっていく現象)」から抜け出すことを目的に、マイナス金利政策が実行されていました。金利をマイナスに設定することで、金融機関による投資を強力に後押ししたのです。
2024年3月、日本銀行(日本の中央銀行:お金を発行したり金融政策を実行したりする機関)は金利の引き上げを行いました。その後も、追加で何度か引き上げが実施され、日本は再び「金利のある世界」に復帰したといえます。
出典
:日銀が金融政策の維持を発表 「ゼロ金利」「マイナス金利」は私たちにとって得?それとも損?:三井住友銀行
:植田日銀総裁が考える「中立金利」とは。いったい金利はどこまで上がるの ? | マネー | おすすめコラム | 大和ネクスト銀行
金利が上がった理由
金利が引き上げられたのは、「賃金と物価の好循環(働く人の給料とモノやサービスの値段が互いに影響し合いながら上昇していくこと)」が認められたためとされています。
現代の日本社会では、働く人の給料の底上げが順調に進んでいるといえるでしょう。働く人の給料は、今後も着実に上昇していくと見込まれています。
また、日本国内におけるモノやサービスの値段は、安定的に上がるようになってきたといえます。日本銀行は、物価について「前年と比べて2%上昇」という目標を長きにわたり実現できるとの見通しが立ったとし、金利の引き上げに踏み切りました。
「金利のある世界」のメリット

「金利のある世界」に突入すると、金利上昇の影響が多方面に広まっていき、さまざまなところでメリットが生まれるといわれています。「金利のある世界」で起こる身近なメリットを解説します。「金利のある世界」に対する理解を深めましょう。
預貯金に付く利息が多くなる
「金利のある世界」では預貯金に付く利息(貸し借りしたお金や預貯金に対して発生する対価)が増えると考えられます。日本銀行が金利を上げると、金融機関の預金金利も上昇する可能性があるからです。
マイナス金利が解除される直前の普通預金金利は0.001%でした。100万円を預けた場合、1年後にもらえる利息はたったの10円だったのです。
主要な銀行である三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行では、2025年1月から普通預金金利を0.2%まで引き上げています。金利が0.2%の世界では、100万円を預けた場合、1年後にもらえる利息は2,000円となります。
出典:3メガバンク、普通預金金利0.2%に 日銀利上げ受け ― 日本経済新聞
個人向け国債に付く利息が多くなる
個人向け国債とは、国が一般市民からお金を借りる仕組みのことです。一般市民が「国債」と呼ばれる債券(お金を借りるときに発行される証明書)を購入して国に投資し、国は投資をしてくれたお礼として、国債を買ってくれた人に利息を支払います。個人向け国債の利率(利息の割合)は、金利が上昇すると上がっていくため、「金利のある世界」が到来すると、個人向け国債に付く利息が多くなると予測されます。
変動10年の個人向け国債の利率(税引前)の変化は以下の通りです。
・第179回(2025年2月募集):0.83%(利子計算期間:2025年3月16日~2025年9月15日)
・第167回(2024年2月募集):0.49%(利子計算期間:2024年3月16日~2024年9月15日)
金利の引き上げ前後で、利率が変化していることがわかります。
▼「国債」についてはこちら

「金利のある世界」のデメリット

「金利のある世界」の実現でもたらされるのは、メリットだけではありません。「金利のある世界」ではデメリットも起こり得るため、注意が必要です。「金利のある世界」で予測される身近なデメリットを解説します。
さまざまなローンの返済額が増える
「金利のある世界」が到来すると、住宅ローン・教育ローン・自動車ローンなどの返済額が増える可能性が指摘されています。
特に大きな影響があるとされているのが、金融機関から借りるお金の額が大きい住宅ローンです。利息の額は、借りたお金の額を基に計算されるため、額が大きいローンを組むほど、利率上昇の影響を受けやすいといえます。
住宅ローンの変動金利(金利の変動に応じて返済額が変わる金利のタイプ)は、日本銀行が設定する金利を基に決められる「短期プライムレート」に連動しています。そのため、金利が上がると、住宅ローンの変動金利も上昇するといえます。
株価が下がる可能性がある
「金利のある世界」が実現すると株価が下がる可能性があります。
金利が上がると、金融機関からお金を借りるときのコストが上昇します。資金集めにかかるコストが上がれば、企業は簡単にお金を借りにくくなり、資金を投じて事業を拡大し、収益を上げることが難しくなるでしょう。高い収益が見込めない企業には資金が集まりにくくなり、結果として株価が下がると予測されます。
しかし、株価は金利だけで決まるものではありません。経済成長を背景に金利が上がっている場合、たとえ金利の上昇が足を引っ張ったとしても、経済成長の波に乗れた企業の株価は、上がっていく可能性があります。
「金利のある世界」は生活にも関わる大きな変化
金利は一般市民の生活にも密着した存在です。特に経済に詳しくない人でも、日常のさまざまな場面で金利の影響を感じることがあるでしょう。そのため「金利のある世界」の到来は、生活にもさまざまな影響を及ぼします。言葉の意味やメリット・デメリットを知って、「金利のある世界」の影響を理解できるようになりましょう。
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構成・文/HugKum編集部