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音読の宿題が楽しくなる方法はお経読み!?
Q:音読がスラスラできないので嫌がります。解決策はありますか?
A:音読がすごく苦手な子の場合、学習障害の可能性も考慮しましょう。そこを理解しておかないと、「努力不足」「頭が悪いんだ」と勘違いしてしまいます。勉強ができて、情報処理能力もIQも高いのに、音読が苦手…という子も本当にいます。その場合は、先生に相談しておく必要がありますよね。
学習障害ではなく、普通に苦手なレベルの場合には「文節の追い読み」から始めてみましょう。
例えば、親が「これは」と読んだら、子どもが後を追って「これは」と読みます。慣れてくれば、「これは、わたしが小さいときに」まで一気に読み、子どもが後を追うようにします。一文が読めるようになったら二文、三文と長くしていき、部分ごとに完成させていきます。
文字が小さいと読めないという子もいるので、その場合は、拡大コピーやタブレットでデジタル教科書を拡大してあげてください。

はっきり読み、アナウンサー読み、お経読み、ミュージカル読み、ラップ読みなどの読み方のバリエーションで楽しむ方法もありますよ。
他には、国語の教科書だけでなく、社会や理科の教科書を音読するのもおすすめです。特に社会は暗記科目と呼ばれるような教科なので、教科書を読むことが点数UPにつながります。小学校や中学校のテストは教科書から出されます。国語以外の教科書も読んでみましょう。
書くことが苦手なお子さんは運筆から!
Q:漢字の書き取りを嫌がります。何かいい方法はありますか?
A:極端に嫌がる場合には、音読同様、学習障害の可能性があるので担任の先生に相談してください。そこまでではなくても、手先を動かすのが苦手なお子さんは、自由帳にうずまきや花まる、縦線・横線を書いてみるなど、運筆の練習から始めて鉛筆で文字を書くための筋肉を鍛えていきます。
男の子は特に漢字の書き取りを嫌がる子が多いですが、「この字上手だね」「この右払いかっこいいね」など、いいところを見つけて褒めて励ましてあげてください。
日記の宿題は親子の会話をそのまま書く
Q:毎回日記の宿題に時間がかかりすぎて、親子で疲弊しています。
A:日記を書く場合には、会話をするように書いていくと書きやすいです。
おすすめなのが「筆談日記」。これは親子で筆談したものがそのまま日記になるので、非常に取り組みやすい方法です。たとえば、まず親御さんが「今日学校で面白かったことは何ですか?」と書き、それに答える形でお子さんが「山田君が先生のものまねをしたことです」と書きます。続けて「どんなものまねですか?」と書いてそれに答えて書く、というように続けます。

他には「フォーマット作文」という方法もあります。パソコンで、ある程度フォーマットを作ってしまって書かせる方法です。
《例》
テーマ:今から自分のいいところを宣伝します!
・得意なことは?→書かせる
・自慢できることは?→書かせる
計算ドリルが苦手なら、つまずきの原因を見つけつつゲーム化など
Q:計算ドリルを嫌がります。何かいい方法はありますか?
A:計算の場合は嫌がる理由にもよりますが、そもそも学力が足りなくて手こずっている場合は、その子のつまずきを見つけるところからやる必要があります。少し前の単元に戻って、お子さんが理解しているか確認してください。
できる力はあるけれども面倒な場合は、前編でもお話しした『とりあえず方式』でやってみたり、お父さん・お母さんと計算競争をしたり、ゲーム化してやる方法も試してみてください。
「宿題、何からやる?」は上手な誘導
Q:「今日は何からやる?」「宿題が終わったらまたゲームできるよ」こんな声かけはNGですか?
A:「今日は何からやる?」という聞き方はOKです。親も子も、お互いに“やる”ことを前提としているので前向きな声かけです。好きな教科や得意なことから始めるとやりやすい子もいれば、その日の気分によって何を先にやるかを決めたい子もいます。
「宿題が終わったらゲームできるよ」「またテレビ観られるよ」という声かけで心配されているのは、宿題を雑にやらないかどうかでしょうか。そもそも宿題はやっつけでやる子がほとんどなので、そこは気にしなくても大丈夫です。

“どうせやるゲーム”など普段やっていることをご褒美に!
Q:いいご褒美と悪いご褒美の違いは何ですか?
A:悪いご褒美は、宿題をやったら100円、欲しいモノを買ってあげるなど、新たな報酬を与えるご褒美です。このやり方は
①だんだんエスカレートしてしまう
②ご褒美が目的化してしまう
この2つが懸念されます。そうなると、「勉強とは報酬のためにがまんしてやる嫌なこと」と認識してしまう可能性があります。
いいご褒美として適切なのは、新たな何かを用意するのではなく、ふだん普通におこなっている楽しみを後にもってくることでご褒美化することです。
ゲームもどうせやるし、テレビもどうせ観る、おやつも食べる。これらの、毎日当然あるものを後回しにしてご褒美化しましょう。 宿題やったらおやつを食べる、宿題やったらテレビを観る、宿題やったらゲームをする。おやつを半分食べて、終わったら残り半分を食べるのもありです。また、おやつを1個食べたらやるという方法は、ルーティーンにもなる仕組みです。
宿題はやらなきゃいけないものではない!?
ただし、宿題は無理にやるものでもなかったりします。

宿題は一律に出されるので、お子さんによっては量が多すぎて消化できない場合もあります。5分で終わる子もいれば、2時間3時間かかっても終わらない子もいます。そうなると習慣になるどころか、勉強が嫌いになるだけなんです。親もイライラして親子関係も悪くなるし、自己肯定感も下がって勉強が嫌いになる…。ひとつもいいことがなく、大きな弊害でしかありません。
学習障害の場合も含めて、一律に出される宿題が子どもを非常に苦しめているなら、担任の先生に事情を説明して、特別な配慮をお願いしましょう。その場合は、クレームではなく“お悩み相談”というニュアンスでうまく交渉して、お子さんを救ってあげてください。宿題は子どもを幸せにするという目的のための手段の一つであり、宿題自体が目的ではありません。出されたものは絶対にやらなければいけないと思い込まないようにしましょう。
脳科学に基づいた子どもの“やる気スイッチ”を入れる方法【宿題のお悩み前編】

お話を聞いたのは

教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Instagram、Threads、X、YouTube、メールマガジンなどで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。『子育て365日』(ダイヤモンド社)、『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』(PHP研究所・Kindle版)など、著書も大人気。公式ホームページ「親力」
文・構成/鬼石有紀