「理想の赤ちゃん」をデザインできるって本当? 池上彰さんに聞く〝科学の常識〟の今

「文系にも理系にも通用する科学の知識を解説しよう」との思いから、クイズ形式の著書『文系の池上彰が教える 10歳からの科学の常識100』を執筆されたフリージャーナリストの池上彰さん。日夜研究が続けられ、日々進歩している現代の科学をわかりやすく解説されています。
今回は「化学」のジャンルからクイズを出題! 人間の遺伝子に関するものです。池上さんの解説を読んで、ぜひお子さんとともにデザイナーベイビーについて考えてみてください。
[上画像:ゲノム編集 CRISPR/Cas9のイメージ Illustration by NHGRI, wikimedia commons(PD)]

科学の常識クイズ③:頭がよくて運動もできる子どもをつくることができるって本当?

中国で誕生した「デザイナーベイビー」

科学技術は日進月歩。時代が進むごとに、加速度を増していきます。このクイズの答えは「本当」です。

遺伝子の特定の部分を書き換える技術を「ゲノム編集」といい、遺伝子組換えを行う技術の一つです。これには、一部分の遺伝子を取り換える方法と、書き換えたい部分をこわしてしまう方法とがあります。ゲノム編集法が開発されたことで、遺伝子組換え技術が大きく進歩しました。

2018年、中国の研究者が、ある受精卵のゲノムを編集し、双子の赤ちゃんが誕生したことを明らかにしました。この赤ちゃんの親がエイズウイルスを保有していたため、赤ちゃんが感染しにくいように遺伝子を書き換えたというのです。

世界初の「デザイナーベイビー(遺伝子を編集されて生まれてくる赤ちゃん)」として大きな話題になり、批判が集中しました。これは不法な医療行為だとされ、遺伝子操作を行った研究者は有罪となり実刑判決を受けています。

ねらった部分の遺伝子をこわしたりおきかえたりして編集するのがゲノム編集

ゲノム編集について日本の対応とは?

ゲノム編集の技術は、遺伝子に関する病気を防ぎ、高い知能、高い運動能力、抜群の容姿をもつ子どもを原理的には誕生させることができます。

しかし、今の技術では誤った遺伝子改変によって健康被害を生むリスクがありますし、また改変した遺伝子が子孫にどのような影響を与えるかはわかっていません。そして、人間が人間をデザインすることへの倫理的な問題があります。

現在の日本では、倫理指針として禁止されていますが、法律では規制されていません。厚生労働省と文部科学省が法規制に向けて検討をはじめています。

※この記事は『文系の池上彰が教える  10歳からの科学の常識100』(小学館)の一部から引用・再構成しています。

『文系の池上彰が教える  10歳からの科学の常識100』

著/池上彰 小学館 1980円(税込み)

国際情勢や社会問題を追いかけるフリージャーナリストの池上彰さん。しかしそれらを考え、伝えるには科学の知識が欠かせないといいます。本書では今も科学を勉強し続けている池上さんが、現代の科学の常識100項目をピックアップ。科学的考え方、気象、地学、物理、化学、生物、環境問題の7ジャンルに分けてクイズ形式で紹介します。
「わかる、おもしろい、もっと知りたくなる!」が詰まった一冊。科学を身近に感じられ、正しい知識と考え方が身に付きます。

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構成/国松薫、HugKum編集部 イラスト/和田ラヂヲ(書籍抜粋)

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