支払いのお金を表す「代金」「代価」「料金」。この3つどう使い分けてますか?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴44年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

「代金」「代価」「料金」の意味の違いって?

「代金」「代価」「料金」

これらの3語は、物を買ったり、利用したり、あるいは手数をかけたりしたときなどに支払うお金のことをいいます。でも、それぞれの語を実際に使うとき、なんとなく使い分けはしているけれど、明確な意味の違いはよくわからないというかたも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、この3語の意味の違いについてお話しします。

 結論から先に言いますと、「代金」「代価」は、品物、物件を得る代わりに支払うお金をいいます。「料金」は、品物、設備などを使用、利用する代わりに支払うお金をいいます。

では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

 品物を買うときは「代金」「代価」。利用するものへの支払いは「料金」

ガス代、電気代の支払いは「料金」

たとえば「本の○○を払う」という場合、「本」は品物ですから「代金」「代価」は使えますが、「料金」には使えません。

これに対して、「電気の○○を支払う」という場合は、「料金」は使えますが「代金」「代価」は使えません。それは、「料金」はそれを使用、利用することに対して支払うものだからです。

また、「代金」「代価」は同じような意味で使われますが、まったく同じ意味というわけではありません。

「代」「料」は、何かを代償とするための金品という意味

「入場券は○○と引き換えでお渡しします」という場合は、「代金」は使えても「代価」は使えません。「代価」は金銭の値という意味で、金銭そのものではないため、「引き換え」とは結びつきにくいのです。この場合、「料金」はどうかというと、「入場券」は品物ですのでやはり使えません。

「代価」は、犠牲や損害の意味で使うことも

また、「土地の○○」のような品物などの値段を表す場合は「代価」が適当なのです。これは、「価」に「値段」という意味があるからです。さらに「代価」には、「勝利の代価は高くついた」のように、ある事柄をおこなうために生じる犠牲や損害の意味でも使われます。「代金」「料金」にはその意味はありません。

「代」「料」は、何かの代償とするための金品という意味で、平安時代から単独でも使われていました。ただ「代金」の形では、使用例が確認できるのは江戸時代以降です。

「代価」「料金」は、明治時代になってから使われるようになった語のようです。特に明治時代になって「料金」が使われるようになったのは、品物、設備などを使用、利用するときに支払うお金は、それまでは言い値や交渉で決めていましたが、明治になって郵便料金、鉄道の切符のように、あらかじめその値段が決められるようになったためだと思われます。

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神永曉(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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