ホワイトニングで使う青い光の肌への影響は? 肌色が濃いと歯が白く見える? 《日焼けと口唇の関係》について歯科医が解説

これから夏のシーズンに向けて、紫外線対策が本格化している人は少なくないと思います。しかし、口元が紫外線の影響を受けやすいことは、あまり知られていないのではないでしょうか? 今回は、日焼けと歯科との関わりについて論じます。
 
執筆/島谷浩幸(歯科医・歯学博士・野菜ソムリエ)

日焼けとは?

日焼けは、医学用語で「日光皮膚炎」と呼ばれており、太陽光線が含まれる紫外線を浴びることで起きる皮膚の炎症や色素沈着です。

日焼けは2種類あり、過剰な紫外線を浴びた皮膚が炎症を起こして赤くなる「サンバーン」と、その後にメラニン色素が沈着して肌色が濃くなる「サンタン」です。

サンバーンでは、炎症を起こした肌は赤くなり、触るとほてったように熱を持ちます。ひどくなるとヒリヒリと痛みます。 

気象庁が報告した東京における紫外線量(1997年~2008年)の累年平均値(日最大UVインデックス)は、図1のグラフのように7月をピークに春から増えますが、冬場でも油断はできません。

図1. UVインデックス(解析値)の月別累年平均値

日焼けには健康的なイメージを抱きがちですが、無防備な状態で過剰な紫外線を浴び続けると、次のような長期的リスクを与えます。

・光老化(光加齢):皮膚が厚くなる、シミ・シワができる、肌がたるむなどの劣化・老化が加速する。

・皮膚がん:紫外線の一種UVBはエネルギーが強いため、皮膚の細胞のDNAを傷付けて「がん化」させるリスクがある。

10代の若い時期に日焼けで水ぶくれができたり、紫外線に当たる時間が長かったりすると将来的に皮膚がんになりやすいという研究報告もあります。肌が未成熟な子どもの日焼けには、特に気を付けましょう。

歯や口周りは日焼けするの?

石灰質の歯は日焼けしませんが、周りの口唇や歯ぐき(歯肉)は紫外線の影響を受けますので、要注意です。

口唇の日焼け

口唇は顔や腕などの部位と比べて皮膚が薄いだけでなく、最表層にある角質層が非常に薄くて皮脂を分泌する皮脂腺が存在しないため、水分が失われやすい組織です。そのため、潤いを保ちにくく、皮膚全体の中でも特に乾燥しやすい部位だと言えるでしょう。

乾燥すると皮膚のバリア効果が弱まるため、紫外線のダメージを受けやすくなります。また、口唇は紫外線から細胞を守るメラニン色素が少ないため、顔のシミや黒ずみのように斑点状に色素沈着することがあります。

口唇が日焼けすると、「乾燥してカサカサする」「荒れて皮がむける」「ヒリヒリと赤く腫れる」などの症状が出ます。ひどくなると、水ぶくれができて破れ、痛みも伴います。

ところで、人間の皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3層から成り、表皮が一定周期で生まれ変わる仕組みを「ターンオーバー」と呼びますが、口唇以外の皮膚では4週間程度なのに対して口唇は3~5日程度と非常に短く、ダメージ修復が早いのが特徴です。

そのため、日焼けしても適切なケアを早めに行えば、早期回復が期待できます。

歯ぐき(歯肉)の日焼け

歯ぐきにもメラノサイトと呼ばれるメラニン色素を産生する細胞が存在するため、日光の紫外線により肌と同様のメカニズムで日焼けし、黒ずんでくることがあります。

しかし、顔の表面にある口唇と異なり、口の中にある歯ぐきは直射日光を浴びにくいため、口唇ほどの影響は受けません。

ただし、歯ぐきの色は他の外的刺激(タバコ、口呼吸など)でも影響を受け、メラニン色素が沈着しやすいことが知られています。

肌が黒いと、歯は白く見えるのは本当?

目に見える物の「色」は周りの環境や状況で見え方が変わる、つまり目の錯覚を起こすという事実があります。

このように本来あるべき姿とは異なる見え方をすることを「錯視」といい、色だけでなく長さや曲がり具合なども錯視の影響を受けることが知られています。

では、歯の色の見え方に特に関連する錯視を2つ挙げてみましょう。

・明度対比:周囲に存在する色の明度(明るさ)によって、同じ色でも異なって見える現象。

例えば、白色に囲まれた灰色より、黒色に囲まれた灰色のほうが明るく見えます(図2)。

図2. 明度対比の例。同じ色でも周りの色で見え方が変わる。中の円は同じ色。

小麦色の肌に白い歯は夏の象徴の一つでもありますが、歯の場合、やはり肌色の影響を受けることは確かで、肌色の濃い人がより白い歯に見えるのは本当なのです。

・面積効果:同じ色で同じ明るさの色であっても、面積の大きさで色の見え方が変わる現象。

例えば、明るい色は面積が大きいとより明るく、鮮やかに見えます。それに対し、暗い色は面積が大きいと、より暗く濃いように見えます(図3)。歯で言うと、同じ白い歯でも大きい歯のほうが、より明るく見えます。

図3. 面積効果の例。明るい色は、大きいほどより明るく見える。
暗い色は、大きいほどより暗く見える。

ですから、笑顔を見せるときは、しっかり歯を見せて笑うほうが歯の白さが強調されて爽やかな印象を与えます。色の錯視を上手に活用して、素敵な笑顔にしたいですね。

ホワイトニングの青いライトで日焼けはしないの?

紫外線は波長域が10~400nm(ナノメートル)の電磁波で、可視光線(目に見える光)の紫色の外側という意味で紫外線と呼ばれるため、通常は紫外線を見ることはできません。

歯を白くするオフィスホワイトニングやセルフホワイトニングで用いる光は一般的に380~500 nm前後の比較的短い波長の青い光ですが、ほとんど紫外線を含みません。ですから、このブルーライトによる日焼けや肌のダメージの心配は少ないとされます。

ただし、光線過敏症(日光アレルギー)の人は強い光を浴びると皮膚に炎症が起き、かゆみや赤み、発疹等が生じる可能性があるため、オフィスホワイトニングやセルフホワイトニングのような光を使う施術ではなく、光を使わないホームホワイトニングを選びましょう。

日焼け対策における歯科からの提案

口元に紫外線を当てないように心掛ける

日焼けを防ぐためには、口唇にもしっかりと日焼け止めを塗るほかに、日傘、帽子などで紫外線を十分に遮るようにしましょう。

口元は、マスクをすることで紫外線をある程度遮断することができますが、素材や構造によっては紫外線を通しやすいものもあるので注意しましょう。

口周りを刺激しない

日焼けした口唇に症状がある時は、特に刺激しないようにしましょう。口唇を不用意に触ったりせず、熱い・辛い・炭酸系などの刺激性のある飲食物は控えてください。

歯磨剤も量を減らすなどの対応が必要です。洗顔の際は手で口唇をこすらないように、たっぷりの泡で優しく洗いましょう。

紫外線に当たったら、まず冷やす

日焼けしたら冷たいタオルなどで、ほてった口唇を冷やしてクールダウン(熱を取り除くこと)させましょう。口唇のほてりが取れて、ひんやり感じるくらいまで十分冷やすことが大切です。

冷やした後は、保湿する

クールダウンできたら、ローションやクリームなどでしっかり保湿します。日焼けした肌は刺激に対して敏感なので、低刺激性のものを選びましょう。子どもの場合は、肌質に合わせた、使いやすい商品を選ぶことも大切です。

抗炎症作用のあるリップクリームを使うと、炎症を抑える効果が期待できます。

ビタミンCを摂取する

日焼けからの回復には、体内からのケアも重要です。特に注目したいのが、ビタミンC。肌を形作るコラーゲン生成を促進し、抗酸化作用により活性酸素の酸化ストレスから細胞を守ります。

医療機関を受診する

紫外線で免疫力が低下すると、ウイルス性の口唇ヘルペスが再発することがあります。痛みなどの症状が強かったり長引いたりする場合は速やかに医療機関を受診し、抗ウイルス薬の処方など適切な治療を受けてください。

*  *  *

以上より、強い日差しに対する口元の日焼け対策を意識しながら、暑い夏の季節を満喫しましょう。

こちらの記事もおすすめ

「白い歯は保険診療でどこまでできる?」「AIで歯の治療ができるってホント?」歯科の最新技術について歯科医が解説
より自然な口元が保険診療でも可能に 保険診療と言えば、「奥歯は銀歯」というイメージを持つ人も少なくないのではないでしょうか? 実際、...

記事執筆

島谷浩幸

歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。X(旧Twitter)も更新中。HugKumでの過去の執筆記事はこちら≪

参考:気象庁:日最大UVインデックス(解析値)の月別累年平均値グラフ.2008.
・Marks R et al: The role of child-hood exposure to sunlight in the development of solar keratoses and non-melanocytic skin cancer. Med J Aust152, 62-66, 1990.
・栗木一郎:色の錯視とは何か.光学39(2),89-95,2010.
・みらい検討委員会:皮膚の光老化とその予防に関するコンセンサスステートメント.日本香粧品学会誌41(3),240-243,2017.

編集部おすすめ

関連記事