大阪ヘルスケアパビリオンはどんなところ?
このパビリオンは地元大阪がREBORN(リボーン)をテーマとして、未来の実現を目指すヘルスケアや都市生活の体験、iPS細胞をテーマにした再生医療の可能性などについて、さまざまな情報を発信する場として設けられました。
地下鉄からの入場口である東ゲートの程近くにあり、世界最大の木造建築物としてギネス認定された「大屋根リング」の外側に位置します。白いテントを張ったような外観ですね(図1)。

筆者は入場の事前予約をしていなかったのですが、さほど待ち時間もなくパビリオン内部へ入ることができました(図2)。


木製のらせん状の階段は遺伝子DNAを模したデザインとのことですが、安全面のためか立入禁止と表示してありました。
このパビリオンの目玉は、やはりiPS細胞関連コーナーでしょうか。筆者はiPS細胞から作られたピクッピクッと動く心筋シートを見てきましたが、3つ展示してあるので、混雑することなく写真や動画を撮ることができました(図3)。

そして、iPS細胞関連コーナーのすぐ隣に、今回ご紹介する「リボーンチャレンジ」エリアがあります。
「リボーンチャレンジ」はどのような催し?
この催しは、400を超える大阪の中小企業・スタートアップが、企画されたテーマに沿って新技術やプロダクト(市場で提供される商品やサービス)を週替わりに展示し、その革新的な技術力を世界に向けて発信する目的で始められました。万博期間中の26週間にわたり実施され、毎週異なるテーマで、企業なども毎週入れ替わります。
万博ホームページによると、このパビリオンの「REBORN」という言葉・テーマには“「人」は生まれ変われる”“新たな一歩を踏み出す”というメッセージが込められており、近未来のビジョンを描く「リボーンチャレンジ」を通して来場者が新たな自分を発見し、未来への行動を起こすきっかけとなる展示を目指しているとのことです。
このエリアは事前予約がいらないため、気軽に立ち寄ることができるだけでなく、もちろん子どももOK。実際に体験できる展示物もたくさんあり、筆者も歯科関連のプロダクトを中心に見学・体験をしてきたのでご報告します。
実際に体験! リボーンチャレンジ展示
筆者が訪れた「こどもの日」は4.29~5.5の期間限定の企画が催され、「ウェルネスを実現するテクノロジーと空間~カラダ(フィジカル)の健康と美容を実現するオフィス~」をテーマに展示がされていました。
筆者が体験した一つ目のプロダクトを次に示します。
おくちの健康から全身を守るウェルネスプラットフォーム
株式会社ミルプラトー(株式会社メディボ・株式会社IDDK)(「リボーンチャレンジ」広報誌から引用)
AIで舌の衛生状態や口臭、滑舌を解析するアプリ「MIERU」と、それを用いて歯科と連携する未来の診療が紹介されていました。

展示されていたブースの案内掲示です(図4)。実際のブースはすぐ近くで、「MIERU」と関連して歯科のレントゲン画像(サンプル画像)に写し出された歯や顎骨の画像を基に、歯周病をAI機能により検知するシステムが展示されていました(図5の左のパソコン)。

歯周病は歯周病菌の毒素などで引き起こされた炎症により、歯を支える周りの骨(歯槽骨、しそうこつ)が溶けてやせていく病気ですが、このAIは歯槽骨の喪失度を算定し、喪失の程度に応じて歯周病と診断する機能を搭載しています。
図5の右のパソコンは、口の中の細菌を生きたままの状態で見ることができる最新機器で、サンプル液として池の水が使われていました。
現在でも位相差顕微鏡のように、口の中の細菌を生きたまま観察することができる機器はありますが、この展示機器はレンズを使わない特殊な機器のため、より簡便に見ることができ、パソコン上で画像データを直接編集できるメリットもあります。
続いて筆者の体験展示、二つ目です。
お口の状態を「年齢」と「スコア」で見える化!
有限会社J-Support(広報誌から引用)
「美歯年齢」は口元の美しさを、「健口年齢」は口腔の健康状態を「年齢」で数値化するシステムで、美容的側面と医療的側面から口の状態を見ることができます。

図6はブース近くの案内掲示です。図7は筆者自身が体験したもので、左の写真のように丸く光る蛍光灯のような専用機器などで口元を撮影するとAIが画像データを分析し、画像センシング技術で歯を個別に認識することで口元の年齢や歯の色、歯並びを測定します。

筆者の結果は図7の右の写真のように美歯年齢が49歳となり、実年齢よりも少しですが若く判定されました。日頃の歯磨きの成果でしょうか。ちなみに、歯の白さと歯並びはともにB判定。A~Eの5段階で評価されますので、まずまずの結果かな、と思います。
ところで現在、ホワイトニングなどの臨床現場で歯の色(白さ)を判定する際、シェードガイドという色見本と照らし合わせながら“目”で見て判断する手法が主流です。しかし、この方法では主観が入ったり周りの光の影響を受けたりするため、安定した判定には限界があります。
この展示のような最新機器を使えば、より客観的な判定ができるようになるため、患者のニーズに合わせたより適切な施術ができる可能性を秘めていると言えるでしょう。
今後の歯科に関する展示・体験など
これまで紹介したプロダクトは筆者が訪れた日が最終日でしたので、現在は体験することができません。しかし、今後も週替わりのテーマに沿った歯科関連の展示がいくつか催されますので、紹介しましょう。
開催期間やその週のテーマ、プロダクトのタイトル、そして出展企業などについて広報誌から引用しました。
開催期間:6.3~6.9
テーマ:みんなで描こう、誰もが暮らしやすい社会~未来の生き方・働き方~
未来の健康診断を変える! 唾液で歯周病リスクを診断検査:株式会社Fiber Medicine
歯科医院へ行かずとも健康診断時に唾液を提出するだけで検査ができる「歯周病リスク診断検査」を活用した未来の健康診断を紹介します。そのほか、歯周病の恐ろしさや口腔衛生の大切さについて楽しく学べる展示などを通して、歯周病の早期発見、QOL(生活の質)向上、医療費抑制などに貢献する新たなヘルスケアを提案します。
開催期間:6.17~6.23
テーマ:みんなで考える未来の街プロジェクト
メタバースやAI相談で実現する未来の歯科診療:株式会社Dental Prediction
3Dデータ解析技術を用いて歯の3Dデータから患者オーダーメイドの3Dプリンティング模型を作成し、歯科治療のシミュレーションや歯科教育、症例の共有・蓄積などに活用できるサービス「DenPre 3D Lab」を開発。万博では「DenPre 3D Lab」以外にも、AIを用いた医師と患者のコミュニケーションを支援する歯科相談システム「歯科の健康相談mamoru」の展示を通して、未来の歯科診療を紹介します。
開催期間:8.19~8.25
テーマ:バイオプラスチックでREBORN
「捨てる」から「育てる」ハブラシへ:エビス株式会社
「捨てる」から「育てる」ものへと、発想を変えた夢のハブラシで将来のプラスチック製品との共存のありかたを提案します。
以上のように、関西万博は、意外と歯科関連の催しがあるものだと思いませんか?
筆者が訪れた日は好天に恵まれ、各国のパビリオンや夜の光の噴水ショー、ドローンショーも堪能することができました。皆さんも万博に行く機会がありましたら、ぜひ歯科展示にも注目して近未来体験をしてくださいね。
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記事執筆

歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。X(旧Twitter)も更新中。HugKumでの過去の執筆記事はこちら≪
参考資料:
・2025年大阪・関西万博公式ホームページ.2025.
・中小・スタートアップ出展企画推進委員会: 「リボーンチャレンジ」広報誌『Reborn Challenge Journal』Vol.01,02.2024,2025.ほか.