顔や歯は、見た目に大きな影響を与える
2018年に全国の20~50歳代の男女1232人を対象に実施されたアンケート調査によると、約71%の人が第一印象を「顔」で判断していると回答しています。次いで「服装」が約16%となり、「体型」「髪型」「装飾品」と続きました。
中でも顔の見た目に特に大きく影響するのが「目と口」だという統計結果が出ていますので、特に口周りについて、容貌に関わるポイントを見ていきましょう。
歯の色合いや歯並び
明眸皓歯(めいぼうこうし)という言葉があるように、美しい顔立ちを形容するのは美しく澄み切った目と真っ白な歯です。
白い歯は若さや清潔さ、知性などのプラスイメージの象徴としての役割を担います。(関連記事はこちら<<)
2007年に日本臨床矯正歯科医会が実施したインターネット調査(全国の10~50歳代の男女1000人)によると、「歯並びで第一印象が左右されると思いますか?」という問いに対し、およそ7割の人が「思う」傾向にあると回答しました(図1)。
スマイルライン
微笑んだ時に、歯の縁を線で結んでできるラインのこと。口の両端がキュッと上がったU字型のラインは、美しい笑顔を表します。
Eライン(エステティックライン)
顔を横から見て、鼻と顎の先を結ぶ線のことです。口唇の先がこのライン上、またはやや内側に位置するのが理想的だと言われます。
歯並びや噛み合わせを改善する歯科矯正の治療を受けることで、理想的なEラインを手に入れることが可能です(図2)。
バッカルコリドー
スマイルをした時に、口角部分に現れる黒い影のことです(図3)。この影が少ないほうがより美しく魅力的な笑顔と感じられます。
特に上顎の歯並びのアーチの幅が狭いとバッカルコリドーが広くなりやすく、歯列矯正でアーチを広げる等の治療を行うことがあります。
ガミースマイル
笑った時に歯ぐき(歯肉:英語でガム)が2~3mm以上見える場合で、笑顔にコンプレックスを感じて悩む人も少なくありません(図4)。
遺伝的要素や指しゃぶりなどの癖などが関与し、口内の乾燥で虫歯リスクが上がったり歯列・噛み合わせが乱れたりする原因にもなります。全体の約10%の人に認められますが、女性のほうが2倍生じやすいという統計結果が報告されています。
原因で最も多いのが「受動的萌出不全」で、歯ぐきが歯に覆いかぶさって歯の長さが短く見えます。他の原因に、上口唇の厚みの薄さや過剰な動きによるものなどもあります。
治療法として、子どもならばおよそ6歳以降に悪習癖の改善や歯列矯正で対応しますが、大人では麻酔してメスやレーザーで歯肉を切除する審美歯科手術等があり、即日で改善することも可能です。病気でないため治療費は保険適用外の自費診療となり、症状や程度に応じて数万円~数十万円がかかります。
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表情や態度の大切さ
では、見た目さえ良ければ、相手に好印象を与えることができるのでしょうか?
人は初対面の時、相手のちょっとした仕草や表情といったわずかな情報から瞬時に印象を形成します。その印象を手掛かりとして、相手の性格や振る舞いを予測し、付き合い方や距離感を決めています。印象は他人との関係を築くための重要な要素です。
1968年にアメリカ・カリフォルニア大学の心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した理論に「メラビアンの法則」があります。
これは人の印象を形成する要素の割合を示したもので、見た目や仕草、表情、視線といった「視覚情報」が約55%を占め、声の質や大きさ、話す速さ、口調などの「聴覚情報」が約38%、言葉そのものの意味や会話の内容など「言語情報」が約7%というように、視覚情報の割合が最も高いことを明らかにしました(図5)。
つまり、言葉でどれほど「楽しい」と話していても、表情や態度がつまらなそうであれば「つまらなそう」という見た目の印象のほうが明確に伝わってしまうことを示唆しています。とは言え、言葉の情報を疎かにしてもいいということは意味しませんので、誤解しないようにして下さい。
ところで、冒頭のアンケート調査では、好感度と口元の関係も明らかにしています。
その結果によると、「好感が持てるのはどのような口元ですか?」の問いに対して「キレイな歯並び」が42.7%となり、次いで「口角がいつも上がっている」「白い歯」が続きました(図6)。
また逆に、「どのような口元が印象を下げてしまうか?」の問いに対して「歯に着色・汚れがある」が39.9%となり、次いで「口角がいつも下がっている」「歯並びが悪い」などが続きました(図7)。
つまり、メラビアンの法則で示したように見た目の歯の色合いや歯並びだけでなく、口角の上下による「表情」が好感度に大きく影響していることを明白に表しているのです。
好感度を上げるためのポイント
これらの理論や調査結果の傾向を踏まえ、初対面で人に会う際に好感を抱いてもらえるように心掛けたい項目を挙げてみましょう。
歯をキレイに保つ
白い歯もそうですが、歯磨きで清潔な歯を維持することが大切です。また、歯並びや噛み合わせに問題があれば、歯科矯正で改善するのも一つの選択肢として検討しましょう。
明るい表情、素敵な笑顔を心掛ける
左右の口角をキュッと上げた笑顔は、好印象を与えます。
また、「笑顔は歯を見せたほうが素敵」だと約8割の人が感じ、「異性に魅力を感じるのは顔よりも笑顔」だと約7割の人が認識しているという統計結果もあります。
ですから、笑顔を作る時は歯を見せて、両方の口角を上げるように心掛けましょう。
視線や姿勢や正す
しっかり相手の目を見て会話したり、よい姿勢で対応したりすれば、相手に安心感や信頼感を与えることができます。
声の大きさやトーンなども要注意
大きな声や低めのトーン、荒い口調などは相手に不快感や不信感を与えることがあるので気を付けましょう。相手の話を相槌を打ちながらしっかり聞いてから、受け答えすることが大切です。
ゼスチャーもうまく交えて
コミュニケーションで大事なのは口から発する言葉の内容だけでなく、“伝えようという気持ち”をはっきりと表現することです。
分かりやすい身振りや手振りを存分に活用して相手の理解をサポートしましょう。
笑顔を形作るのは口だけじゃない
「ニッコリと口角を上げて歯を見せた笑みは、相手との人間関係を円滑にする効果がある」というのは、これまで論じてきたことから導かれる内容だと思いますが、もし目が笑っていなかったらどうでしょうか?
片方の口角だけ上げて目が笑わず、どこか冷たさを感じる笑みは「ニヒル(虚無的)な笑い」と呼ばれたりしますし、相手を見下すように軽蔑の気持ちを込めた笑いは「嘲笑」と呼ばれ、相手をあざ笑う表情とされます。
その他にも冷笑や苦笑、作り笑いなど、心から楽しくて笑っているわけではない笑顔があり、皮肉や意地悪といった負の感情から生まれる表情を含んでいます。
ですから、相手との距離感を縮めたい笑顔を作る時は口の形だけでなく、目を中心とした顔全体の明るい表情で表現しましょう。
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以上より、メラビアンの法則を意識しつつも、全体としてバランスよく調和したイメージや振る舞いを伝えることが好印象を与える大切なポイントです。素敵な表情で、より良い人間関係を築きたいですね。
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記事執筆
島谷浩幸
参考資料:
・be-king:人の印象に関する意識調査.2019.
・日本臨床矯正歯科医会:歯並びと矯正歯科治療に関する意識調査.2007.
・Tjan AH et al: Some esthetic factors in a smile. J Prosthet Dent 51(1): 24-28, 1984.
・Mehrabian A : Communication without Words. Psychology Today 2(9): 53-55, 1968.
・日本臨床矯正歯科医会:全国1000人意識調査.2010.