ぶっちゃけ歯科矯正ってなぜ高額? ワイヤー以外の方法だと? 料金システムの実際を歯科医ライターが解説

美しい歯並びは一生もの。わかってはいても、金銭的に負担の大きい歯科矯正を始めるとなると、いろいろ迷いも生じるものです。そこで、歯学博士で現役の歯科医でもある島谷浩幸さんに、歯科矯正の種類、料金システム、世間の相場などをまとめてもらいました。

歯科矯正は基本的に自費診療

「歯科矯正は高い」「治療費が高額だから、なかなか決心がつかない」。

筆者も歯科医師としての臨床の現場で、子どもの保護者からよく耳にする言葉です。その第一の原因は、歯科矯正治療のほとんどが公的医療保険の対象外となるため自費診療(自由診療)となることです。

自費診療では、治療費の全額を患者の自己負担で医療機関に支払いします。歯科矯正は基本的に「病気を治す治療」ではなく、見た目を治す、整えるといった審美治療と考えられることから保険適用外なのです。

そのため治療内容や費用、保証、これらの提示方法などは医療機関によって異なります。高額になりがちな自費診療だからこそ、トラブルにならないために費用面についてしっかり話を聞いて同意してから治療を受けるようにしましょう。

公的医療保険の対象となる矯正治療は、国の定めた下記の条件のものに限ります。

・「別に厚生労働大臣が定める疾患(唇顎口蓋裂・ダウン症候群などの生まれつきの先天性疾患等)」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療

・前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療

・顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療

また、上記の保険適用される矯正歯科治療を行える医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。この医療機関は地方厚生局のホームページで情報公開されていますので、受診前にあらかじめチェックするようにしましょう。

なお、見た目の審美目的とする矯正治療は医療費控除の対象とはなりませんが、機能面の問題の改善などの治療目的ならば、医療費控除が認められます。承認されると一定額の控除が受けられ、医療費控除の還付金を受け取ることができます。

このような費用面や何年にも及ぶ治療期間の長さは、歯科矯正をするかどうか悩む項目です。

しかし、不正な歯並びや噛み合わせは見た目の問題だけでなく、食事を噛む咀嚼や嚥下(飲み込み)の障害は子どもの成長・発育に影響を及ぼします。さらに発声の不具合はコミュニケーションに支障をきたすことがあります。程度の差こそあれ、歯科矯正はそれらの問題を解決する効果的な治療法であると言えるでしょう。

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治療の流れと各費用の目安

矯正歯科で行う治療は歯並びや噛み合わせの問題の程度により実に多彩で一概には言えませんので、ここでは一般的な治療の流れに沿って解説します(金額は筆者調べ)。

初診・カウンセリング料

無料~1万円ほど。初めての受診時にかかる費用で、歯科医師に悩みや疑問を相談し、カウンセリングを受けます。十分な説明を受けて、実際に矯正治療を受けるかどうかを決定します。

検査・資料採取・診断・治療計画作成料

3~20万円ほど。顔の写真やレントゲン写真の撮影、顎模型の作成などを行い、診断します。これらの様々な資料・データをもとにして患者にあった矯正治療の計画が作成されます。

検査結果による治療方針が決まれば、大体の見積もり金額が計算されます。納得して同意すれば、契約書にサインするなどの手続きを経て、矯正治療がスタートします。

虫歯や歯ぐきの治療、抜歯などの治療費

金額は口の状況により各々異なります。

検査の際に見つかった虫歯などは矯正治療の妨げになることがあるので、事前に、あるいは矯正治療と並行して治療を行います。虫歯治療や乳歯の生え換わりに関係する抜歯は公的医療保険が適用されますが、矯正治療のための便宜抜歯(歯並びのスペース確保のために行う)は自費診療になります。

なお、歯科矯正専門の歯科医院の場合、虫歯治療や抜歯を行わないところも少なくありません。その場合は、近くの一般歯科医院で治療をするように指示されます。

矯正装置の作成・装着料

10~150万円ほど。矯正治療の内容により金額の幅があるため、主な治療金額を記します。

ワイヤー矯正

歯の表面にブラケット型の装置を付け、ワイヤーで力を加えて徐々に歯を動かします。

表側だと見た目に目立ちますが(50~100万円)、歯の裏側に装置を付ける裏側矯正(60~150万円。一般的に表側より高額)も増えつつあります。また、表側でもホワイトワイヤーといって目立たない矯正装置もありますが、裏側同様、やや高額になります。

マウスピース矯正

20~80万円ほど。薄く透明なマウスピース型の矯正装置を装着し、歯を徐々に動かす治療法です。

自分で着脱できて食事や歯磨きをしやすいメリットがある反面、大きな歯の移動には限界があり、症例が限られるデメリットもあります。

床矯正

5~50万円ほど。義歯のようなピンク色の樹脂製の床(しょう)装置を使います。上顎の骨を広げたりするのに使用します。(下画像)

また、上記の全顎にわたる治療のほか、一部の歯だけ動かす部分矯正(MTM)もあり、費用も安く抑えることができる場合があるので、歯科医院で相談してみましょう。

毎回の調整料金

5000円~2万円ほど。矯正装置を装着した後は、月に1回ほど、歯科医院で装置の調整を行います。ワイヤーやマウスピースを交換するなどの調整を行い、徐々に歯を動かしていきます。

保定観察料

無料~1万円ほど。矯正治療が終了すれば、歯の後戻りを防止するために「リテーナー」と呼ばれる保定装置を装着します。一般的に最低12年は装着します。数か月や1年に1度、歯科医院で経過観察を行います。

オプション費用

5000円~10万円ほど。歯の定期清掃や矯正目的の抜歯、矯正装置が破損した際の修理、矯正治療に関連するケアグッズの購入などがあります。矯正治療を始める前に、これらの諸費用を具体的に確認することも大切です。

*  *  *

ところで、歯科矯正は高額なため、契約時に支払い方法をきちんと確認することが大切です。主な支払方法に1.契約時の総額一括支払い、2.処置別支払い、3.医療機関独自の分割払い、4.デンタルローンの利用があります。

注意点として、処置別支払いでは一度の支払いは低額で済みますが、治療期間が当初の予定より長引いた場合、より多くの治療費を支払わなければならないケースがあります。一度の支払いは高額ですが、治療期間に関係なく費用が一定な一括払いと比較し、よく検討した上で決めるようにしてください。

おおよその費用などの目安についてご説明してきましたが、実際に矯正歯科治療を経験した家族に対するアンケート調査を紹介しましょう。

矯正歯科治療の実際

2017年、歯医者の検索サイト「EPARK歯科」を運営する(株)エンパワーヘルスケアは、EPARK歯科の利用者で3歳以上の子どもを持つ親に対し、矯正歯科治療の費用などについてアンケート調査を実施しました。

図1.実際にかかった矯正治療の費用

その結果、実際に受けた矯正治療の費用を、過去に子どもへの小児矯正を実施した60名の親に対して調べたところ、50万円未満が約6割となり(図1)、さらに開始年齢が早いほど費用が安く抑えられる傾向となりました。

また、実際に受けた矯正治療の種類は、マウスピース矯正や裏側矯正などの目立たない矯正が約4割を占めました(図2)。

図2.実際に受けた矯正治療の種類

歯科矯正は子どもの成長に合わせた適切なタイミングが重要です。そのタイミングを逃さないためにも、少しでも子どもの歯並びや噛み合わせが気になったら自己判断で放置したりせず、まずは速やかに矯正歯科を受診するようにしましょう。

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記事執筆

島谷浩幸

歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。Twitterも更新中。

参考資料:

・日本矯正歯科学会ホームページ:矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは(https://www.jos.gr.jp

・エンパワーヘルスケア株式会社:EPARK歯科の利用した、3歳以上の子を持つ20歳以上の男女によるアンケート調査(2017年3月16日~3月31日実施)

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