乳歯の虫歯は生え変わるから大丈夫…じゃない!歯科医師が語る虫歯放置のリスク

虫歯を持つ子どもの比率が、年々下がってきていると言われています。それでも幼稚園、小学校に通う子どもの中で、最も多い病気はまだ虫歯。ひどいケースでは、口腔(こうくう)崩壊などの言葉も聞きますよね。

当然ですが、子どもの虫歯は放置していると永久歯に悪い影響が出ます。そこで今回は富山県の小矢部市にある人気クリニック『渡辺歯科医院』で院長を務める渡辺智良先生に、子どもの虫歯を放置するリスクを教えてもらいました。

乳歯の虫歯が原因で、もろい永久歯が生えてくる

文部科学省の『学校保健統計調査』を見ると、幼稚園児で虫歯にかかっている子どもの割合は、過去10年でどんどん下がってきていると分かります。しかし現状でも約35%の幼稚園児が、小学生になると約45%が虫歯を抱えていると分かります(平成30年度)。

もちろん、最近は親の意識も高まっていますので、子どもに虫歯があれば早々に治療を開始するかと思います。しかし、中には「すぐに抜けて生え変わるから」と油断している人も居るかもしれません。

渡辺先生によれば、ひどい虫歯を放置して歯の根っこの部分にうみがたまると、その下に控えている永久歯にうみが触れて、歯の表面を覆うエナメル質が十分に形成されなくなってしまう恐れがあるのだとか。この歯を「ターナーの歯」と呼ぶそうで、生えてくるそばから永久歯が茶色かったり、表面が濁っていたり、もろかったりするそう。

<小臼歯や前歯に好発>(日本臨床口腔病理学会のホームページより引用)

という情報もあります。小臼歯とは犬歯の隣にある奥歯ですね。奥歯や前歯に深い虫歯があり、ずっと放置している場合は、今すぐ近くの歯科医院に出かけた方がいいかもしれません。

歯並びが悪くなる

乳歯には食べ物をかんで、体に補給できる状態にするという大切な役割があります。その他にも、

<乳歯は永久歯のためのスペースを確保したり、生えてくる方向を導く、ナビゲーター役もしている>(小学館『キッズ・メディカ安心百科 子ども医学館』より引用)

といった大切な働きもあるのだとか。

渡辺先生によれば、虫歯をC4(歯のほとんどが失われて、根だけが残った状態)といった最も悪い状態のまま放置していると、失われた歯の空間に向かって周りの歯が寄ってくるため、永久歯の生えてくるスペースが無くなって、歯並びが悪くなってしまうと言います。

その意味では抜歯も一緒。早々に抜歯しなければいけないほど虫歯を放置してしまうと、空いたスペースに両側の歯が寄ってきて、永久歯が生えるスペースがなくなってしまうのだとか。

また、乳歯の虫歯を治療せず、歯の根元にうみがたまった状態を放置していると、永久歯がその根っこを回避して、歯茎の側面から生えてくるような事態にもなりかねないと言います。乳歯のケアには十分に注意したいですね。

永久歯も虫歯になりやすい

そもそも虫歯は、虫歯菌が口の中の糖質を栄養にして、歯を溶かす酸を作り出して起こります。乳歯の虫歯が多い口の中は、言い換えれば口の中に虫歯菌が多い状態でもあります。その環境を放置すると、

<生えはじめはエナメル質が未成熟で弱い>(小学館『キッズ・メディカ安心百科 子ども医学館』より引用)

という永久歯が、いきなり「厳しい」環境にさらされてしまいます。その結果、せっかく生えてきた奇麗な永久歯も、早々に虫歯菌におかされてしまうリスクが高まるのですね。

渡辺先生によれば、身近な歯科医院で定期的に歯の健康状態をチェックしてもらい、場合によってはフッ素塗布や、歯の溝をプラスチック樹脂の1種で埋めるシーラントを行って、自宅では歯磨き指導に基づいた歯磨きを継続するという地道な対策が、結局は最も有効だと言います。

「子どもの虫歯は親の責任」とまで言い切ってしまうと、少し親にとっては酷な響きがあるかもしれません。しかし、親の影響が「とても」大きいという点は誰も否定できないはず。子どもの虫歯の放置がもたらすリスクについて正しい知識を持ちながら、十分なケアをしてあげたいですね。

文/坂本正敬 写真/石川厚志

 

【取材協力】

※ 渡辺智良・・・渡辺歯科医院の院長。歯周病専門医。渡辺歯科医院では、一般歯科、歯周病専門治療、インプラント、予防歯科、小児歯科、義歯(入れ歯)を担当する。一方で、近隣のこども園や学校での歯科検診も行う。

【参考】

学校保健統計調査 – 文部科学省

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